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太陽の冒険者と夜の開拓者〜my funny hitchhiker 「Funny camp」を語る

深いオレンジ色の夕闇が照らす、その小さな小屋に彼は住んでいた。

一見、世俗から離れた世捨て人のようにも見えるが、
どうやらそうではないらしい。

日々の営みから察するに、何かしらの労働は行っているようだが
夜になると必ずギターを片手に、今まで一度も聴いたことのないような
音楽を、毎夜唄う。

そんな彼を僕は「夜の開拓者」と呼んでいた。

ある日、誰かが彼に話しかけてるのを偶然みた。彼なら澱のように底に溜まった僕の漠然とした不安に、何かしらの答えを与えてくれるのではないかと、僕は意を決し、彼の小屋を訪れる。
そして質問を投げかけた。

「人はなぜ生きるのですか?」

彼は深いため息をつきながら、こう答えた。

「良い質問でもあり愚問でもある。人はなぜ生きるのか。
それは、誰もが一度は抱く疑問だろう。
だが、答えなどないのかもしれない。」

彼は、僕を連れて小屋の横に広がる、雑木林の中を歩き始めた。
道中、彼は様々な自然の光景を指し示しながら、語り始めた。

「木々は生長する。花は咲く。そして枯れていく。
動物たちは生まれ、そして死ぬ。世界は、すべてのものがたえず循環している。
そしてそれと同じように、また人間も生と死を繰り返す。」

「だが、人間は、他の動物とは違う。
私たちは、自分たちがなぜ生きているのか、
どこから来てどこへ行くのか、そんなことを深く考えることができる。
それは素晴らしいことだが、同時に、大きな不幸でもある。」

「人は、永遠の命を願う。しかし、誰もが必ず死ぬ。また人は、少なからず愛を求める。
しかし、愛も永遠に続くとは限らない。
そして虚栄であったとしても、成功を望む人もいる。しかし、成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らない。永遠に満たされない欲求。目的を持たぬ渇望。そんなものを抱えながら生きていくこともある。そして、
それは虚無そのものだ。」

「では、生きる意味とは何でしょうか?」

彼は、静かに答えた。

「生きる意味なんて、誰にも分からない。自分で見つけるものだ。
ただ、この瞬間を精一杯生きる。美しい花を眺め、大切な人と過ごす。
そうすることで、人生に意味を見出すことができるかもしれない。
あるいは、見つけられないかもしれない。それは、誰にもわからない。」

彼は、さらに語りかけた。

「人生は、答えのない問題集のようなものだ。
そして、私はクイズマスターではないし、あなた自身もそうだ。正解を探しても意味はない。
ただただ、自分自身と対峙し、
向き合っていくほかない。」

そして彼はこう言った。

「私のことを「夜の開拓者」と言ったが
実は「太陽の冒険者」でもあるんだ。」

「太陽と夜、云うなれば光と闇が私を育てたんだよ。」

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my funny hitchhiker「Funny camp」を君はもう聴いただろうか。

オープニングナンバー「E=MC5」を聴いた瞬間、
「time of season」を彷彿とさせるイントロにゾクゾクした。

2nd Album 「Document」に収録されたverとの乖離に、
一瞬、なんなのかわからないほど驚愕した。

そう、この「E=MC5」が示すように、「Funny camp」は
2nd Album 「Document」収録曲の単なるリアレンジ・アルバムなんかではない。

全く別次元で制作された全曲新曲と言ってもいいほどの、
紛れもないニューアルバムなんだ。

このアルバムを語るためには、2nd Album 「Document」が
どれほどぶっ飛んだロックアルバムだったかをまずは知ってもらいたい。

それを前提として語るが「Funny camp」の素晴らしいところは
実に見事なまでに、2nd Album 「Document」との
二律背反/調和、そして対立と旋律 を表現している事に尽きる。

その本質において対立と調和の両極を内包することが表現。

それは、trebleとbass、hightempoとlowtempo、majorとminor、
そして様々な楽器と声の組み合わせ、
さらには歌詞における喜びと悲しみ、
希望と絶望といった対立する感情が層を作り、
この対立が、「Funny camp」の全楽曲に吟味や慈しさ、
そして奥行きを与え、聴く者の心を揺さぶるのだ。

サウンドメイクの点でも緊張感や不安感を生み出す対比が、
楽曲の表情を豊かにしている。

また、2つの主題(=メロディ+コーラス)が都度、変形していき、
再び元の形を取り戻すような、まるでソナタのように繰り返される。

リズムはまるで時間の流れを刻みこむように、
メロディは抑えきれない感情を振り絞るように表現されている。

そして歌詞は、物語をただ、淡々と語る。

まるで、「Document」と「Funny camp」は
常に変化し続ける「my funny hitchhiker」そのものだ。

たえず新しい表現方法が生まれ、音楽の表現の可能性は
無限に広がっているが、結局はアーティスト自身が
どこを目指しているか なのだ。 

そして、その一つの答えを、
myfunnyhitchhikerは体現している
数少ないバンドなのだ。


個々の収録曲についての解説は、またいつか別の機会があれば
じっくり書きたいと思います。

今は、ただただ、
太陽と夜のように輝く「Document」と「Funny camp」を
全身で感じていたい。

最後に

リリース時に私が書かせていただいた、
my funny hitchhikerの1stAL「Two muffs beat as one」と
AL「Funny party」、2nd Album 「Document」のレビューです。
お時間あればよろしくどうぞ。

my funny hitchhiker HP

my funny hitchhiker 「Funny camp」
2nd Album 「Document」


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