当たり棒のまぼろし

ガリガリ君の当たりを引いたことがない。
今まで何本食べてきたかわからないが、一度もない。
誰かが当たりを引いているところに居合わせたこともないので、ガリガリ君の当たりがどんなものか見たこともない。
もしかしたら当たりを見落としているのかもしれないと、食べ終わった棒からベタベタのパッケージから、くまなく見回したことも一度や二度ではない。

今まで何本のガリガリ君を食べたかわからない。
だいたい年三本ペースだったとしたら、三十三歳の俺が今食べたのはちょうど百本目だったかもしれない。
アイス総選挙は6位ガリガリ君ソーダ味に憤慨して寝た。
たいした思い出もないな、と考えながら会社から駅へと向かう。
ケミカルな水色のしずくは手の甲をつたってアスファルトへ落ちる。
百本目(仮)の棒にも「当たり」の文字はなかった。

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