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メンバーの個人活動紹介 Vol.7 ~「みらいの森」プロボノ支援体験記〜

こんにちは。ソーシャルPM研究会代表の大久保です。8月が過ぎても暑い日が続きますね。今回は2023年3〜5月の3ヶ月、私が参加したプロボノについての体験をお伝えしたいと思います。プロボノについて、どのようにしたら参加できるか?どんなことが体験できるのか?など少しでもみなさんのご参考になれば幸いです。

プロボノってなに?

「プロボノ」とは、「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とする言葉で、【社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや経験を活かして取り組む社会貢献活動】を意味します。(出典:認定NPO法人サービスグラントHPより)

プロボノへ参加したきっかけ

2022年3月末にIT系の会社を退職して個人事業主として仕事を続けていましたが、組織のしがらみから解放されて働く「自由さ」を手に入れました。その反面、どこかの組織を通して、引き続き自分の経験やスキルを活かして社会貢献していきたいとの思いもありました。将来を担う子供達に対する具体的アクションをしたいと以前から考えていましたが「二枚目の名刺」のマッチング会で今回の団体とご縁があり、ぜひ支援してみたいと思ったことがきっかけです。 また、ソーシャルPM手法が本当に役立つのか、我々ソーシャルPM研究会が気づいていない問題があるのではないのか、確認してみたいという目的意識もありました。

プロボノマッチングサービスについて

今回私はマッチングサービス「二枚目の名刺」を活用しました。みなさんは「二枚目の名刺」はご存知ですか?プロボノ界隈では「サービスグラント」と「二枚目の名刺」はよく知られている存在です。どちらも、プロボノをやりたい人々とNPOとのマッチングをコーディネートしてくれる団体ですが、少しアプローチに違いがあるように感じています。私の主観でまとめてみましたので下表をご参照ください。

表1:代表的なプロボノ マッチングサービスの特徴比較
(*1:アカウント・ディレクターの略。プロジェクト統括者。
サービスグラントでの役割はここをご参照ください。)

  今回はPMとしてプロボノ経験をしたいわけではなく、NPO側のお悩みとその構造を理解したいという欲求からの参画なので、「二枚目の名刺」を選択しました。上の表はマッチングサービスの優劣評価のためではありませんので誤解なきようお願いします。みなさんもご自身の目的に合ったマッチングサービスを選択してくださいね。

 2023年2月1日に開催されたマッチング会では3つの団体の紹介がありました。二枚目の名刺の紹介ページから各団体とプロジェクト概要をピックアップしましたので参考になさってください。(これらの記事は3月24日の中間報告会時点での内容です。)
 1)    4Hearts
 2)    エコロギー
 3)    みらいの森

支援団体「みらいの森」について

今回私が支援したNPOは「アウトドアを通じて児童養護施設の子供達に『生きる力』を身につけてもらう」活動をしている「みらいの森」です。
少し背景から説明すると、児童養護施設は日本全国に約600施設あり、親元で暮らせない子供達 約25000人がそこで生活をしています。日本の場合、入所さえできれば衣食住のニーズは充足されますが、入所理由は「放棄」「虐待」が多いため、心のサポートも必要となっています。さらに(施設は18歳未満までが対象であるため)施設を卒業した途端に、金銭的、社会的、精神的、全ての面での自立が急遽求められるようになります。「家賃の支払い」「ゴミ捨ての仕方」「孤独感」などで躓き、助けを求めることができない子供達が多い中、外部からの偏見や差別もまだまだある状態です。
みらいの森は、そんな子供達に対して、施設にいる間に参加可能なアウトドアプログラム(キャンプなどのイベント)を通じて、生きる力を身につけてもらえるよう支援を行っています。なお団体詳細についてはここからご確認ください。私がみらいの森に対して感じた印象は、主に以下の3つです。
 1)代表の「こずえさん」がスゴイ。
 2)海外企業からのサポートがアツい。
 3)年間の活動量が半端ない。

1)代表の「こずえさん」がスゴイ。

みらいの森の代表を務める岡こずえさんは、アウトドア教育を学びにスウェーデンに留学したのちに団体を立ち上げました。とにかくアクティブで、団体の活動業務のほとんどをお一人でこなしています。

2)海外企業からのサポートがアツい。

元々こずえさんが留学していたことや、発足当初のプログラムがイングリッシュアドベンチャーとのタイアップから始まったことから、海外企業からのサポートが「厚い」上に「熱い」です。パーティ会場を提供してもらったり、運営ボランティアを拠出してもらったり、お菓子などの現物提供などもあります。1)で述べた「こずえさんのスゴさ」はここにも影響しており、全ての情報発信を英語と日本語の両方で実施しています(つまり普通の人の2倍働いているということです)。海外企業は寄付やオークション出品もかなり太っ腹。日本とはチャリティやボランティアに関する考え方が異なるため、その恩恵を大きく受けていると感じました。

3)年間の活動量が半端ない。

現在は東京近郊の7施設の子供達を対象にアウトドアプログラムを実施していますが、ほぼ毎週末(!)イベントを実施しています。活動量は私の想像を遥かに超えていました。夏のサマーキャンプは子供達を宮城県のキャンプ場に招待して行うのですが、多くの子供達が参加できるように、1回あたり4泊5日の企画を4回連続で実施します。1週間前からの設営準備、ボランティア向けオリエンテーションなども必要となるため、みらいの森の運営側は1ヶ月間ずっとキャンプ生活です。

 表2:みらいの森 現状のプログラム規模のまとめ

当初の依頼内容

マッチング会で代表のこずえさんからお話があったのは、「イベント企画の人手不足解消」「ファンドレイジング」「団体のPR」の主に3つでした。 具体的なお話を伺っていくと、主旨は以下の内容でした。

  • みらいの森は今年で10周年を迎える。そのため関係者インタビューやパーティの企画・実施をしたいが人材不足で困っている。

  • 当面1年間の活動資金はあるが、企業からの寄付がほとんど。将来的には自身のキャンプサイトを保有したいという夢もあり、安定的な資金調達を行いたい。

  • もっとみらいの森のことをPRしていきたい。ブログやポータルページなどで発信はしているものの、サポーター(寄付者)やボランティア(アウトドアプログラムの支援者)を増やしたい。

プロボノメンバー

IT系3名、メーカー系3名の6名のメンバーが参画しました。男女比も3:3ととても良いバランスでした。年齢層で言うと…私一人が平均年齢を上げてしまいましたorz。他のメンバは20〜30代と若くてやる気に満ち溢れたメンバーで大変やりやすかったです。

3ヶ月間の過ごし方

最初の2ヶ月間は毎週2時間全員一緒にミーティングを行い、課題整理をしました。残りの1ヶ月は少しギアアップをし、成果物ごとにチーム分けをして(兼任者もいましたが)、成果物を完成させるための作業や合意形成に時間を使いました。私は「ロジックモデル作成」のリーダーを担当しました。それ以外には「インタビュー企画」「ウィンターパーティ検討書作成」「キャンプサイト検討」の合計4チーム体制での活動となりました(「インタビュー企画」は、インタビューを受ける卒業生の都合により期間内に完了できず、6月に入ってからも継続活動しました)。概略スケジュールは下図をご覧ください。

図1:中間報告までの活動


図2:中間報告以降の活動

成果物とゴールの設定

今回のプロボノは、成果物やゴールの設定はあくまでも仮であったため、こずえさんへのヒアリングや資料収集などからはじめました。前半1.5ヶ月は仮のロジックモデルを作成しながら、みらいの森の課題整理を行うことに注力しました。後半は導出された課題を以下の成果物にまとめることを目標とし、期日である5月の最終報告会までに完成させることができました。

表3:みらいの森プロボノ 成果物一覧表

 活用したPM手法

議論の途中では「ステークホルダー登録簿」「ステークホルダーピラミッド」「バリューグラフ」などを活用する話も出ましたが、結果的に活用したツールやPM手法は以下です。私の感想としては「いつも使っているお馴染みのツール」が並び、もっと色々活用できないのかなぁ…だったのですが、目新しく感じたメンバーもいたようでした。そんなに細かいタスクがあるわけではないので、WBSやガントチャートといった一般的なPMツールは使いませんでした。
 
1)インセプションデッキ
ウィンターパーティ検討書を作成する際に、目的や意義の確認に「エレベータピッチ」、リスクの確認に「夜も眠れぬ問題」など、目次作りや検討書への記載内容を考える際に活用しました。
 
2)ロジックモデル
成果物そのものにもなっていますが、みらいの森の実力(資源)の確認と、ビジョン、ミッションとの整合性の確認、不足している資源やプロセスを発見すること、などに活用できました。また、ロジックモデルは(日本財団が推奨していたり、JICAが活用していたりすることもあり)NPOの間では一般化してきているようです。こずえさんからも「企業に対して寄付や協力依頼をする際に団体説明がしやすいので持っておきたい」といったリクエストがありました。

3)マインドマップ
キャンプサイトの検討を行う際に、アイデア出しやその関連性・類似性を明確化するために使用しました。

学んだこと・次回に活かしたいこと

・一部はIT化されているけど
みらいの森はプロボノだけでなく様々な企業やITツールも活用していました。参加する子供達・寄付者・ボランティアスタッフといった「人」の管理をSales Forceで実施しており、意外とIT活用は進んでいることがわかりました。反面、明確な目的があって構築されたシステムではないため、最適化されていないし、UI/UXが良いわけでもないこともわかりました。例えば「なんとなくこんな項目を管理しよう」から入力項目設定を行っているため、「年齢、地域、過去1年間の寄付額で寄付者を検索したい」と思っても情報収集できていない、といったことが起きています。
 
・資金調達にも銀の銃弾はない
過去に関わったNPOはどこも資金調達に関して、1)個人寄付・企業寄付、2)企業からの協賛金、3)公的な補助金・助成金、4)商品・サービス販売 を頑張っており、どれかができていないと言うよりも、もっと適切な大口かつ継続的なチャネルが欲しいというお悩みでした。みらいの森も同様の悩みを抱えており、PM手法ではサポートが難しく、もっとファンドレイジングやコスト削減などのアプローチを勉強する必要があると感じました。銀の銃弾(特効薬)はなさそうです。

・同じツールの使用頻度が高い
プロボノ経験は過去にもありますが、大体どこにいっても「ロジックモデル」「付箋を使ったブレインストーミング」「組織図/体制図」「課題管理表」を使うことが私の場合は多いです。外部向けの「ソーシャルPM実践ワークショップ」でお伝えしているツール類のうち、リーンキャンバス、WCA、バブルチャートなどは出番が少ないです。現在、研究会内で手法やツールの見直しを図っていますが、PMI標準と言われている「PMなら普通に使っているツール」をNPOの方々も普通に使えるようになっていただくための「工夫」(わかりやすい説明や使い方のコツなど)を考えることも、我々研究会のミッションの1つかなと感じました。
 
・意識が高い若手をシニアとしてサポートできた?
今回一緒に活動したプロボノメンバーは意識が高く、タスクもしっかりこなせる能力の高い人達ばかりでした。また、みらいの森のこずえさんも非常に柔軟性が高く、いろいろなアイデアを受け入れてくださる方なので、とてもやりやすい環境でした。私自身はシニアとして、会議の進め方、資料のまとめ方、それと(意外とそう言う機会が若手に少ないことにびっくりしたのですが)共同でタスクを進める方法(例えばルールを決めたり、標準化したり)などをリードすることができたように感じました。ただ、どこまで自由にやってもらうかの塩梅が難しく、「出しゃばりおじさん」になっていないか、気にしながら参加していました。今後もその辺は留意したく思っています。
 
・リアルイベントは楽しい
みらいの森が企画した「チャリティーラン&ウォーク」で子供達やサポーターと一緒に皇居を歩いたり、インタビューで卒業生に会ってお話を聞いたりと、リアルならでの楽しさを満喫できました。もうそろそろそういった活動も(感染には留意しつつ)普通にできる時期に来ているように思います。

・次回はPM型に参加してみたい
今回は成果物が予定通りの品質・期日で完成しなくてもよいプロボノでしたが、次回は本当のプロジェクト型のプロボノ活動に参加してみて、腕試し、ソーシャルPM手法の有効性確認をしてみたいと思います。
 
ちなみに参加したメンバーのコメントは下記の通りです。みなさん成長を感じているようです。

表4:プロボノメンバーの参加後コメント

皆さんもいかがですか?

「二枚目の名刺」のプロボノは、ゴール、成果物、役割を自分たちで決めていくため、初めてプロボノに参加する方にとっても比較的ハードルは低いと感じました。私の場合も稼働時間も毎週2〜Max5時間×12週の活動時間でしたので高負荷には感じませんでした。皆さんもちょこっと「プロボノ」やってみませんか?

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