秋たけじょう(129)
夏は終わったが秋が来ない。いや来てるのかもしれないけれど、あまり秋を感じない。とはいえ感じる感じないの感覚は主観の問題なので、現実に気温は下がっているのだから秋なのだろう。ちゃんとお月見もハロウィンも終わったしそこそこ秋刀魚も獲れている。栗のお菓子もさつまいものお菓子も売っているし、きのこもたくさん出回っているのだからまごうことなき秋である。それなのにどうして秋特有の心地よさみたいなものが感じられないのだろうか。その答えは皆も当然わかっているだろう。夏が、長過ぎたのだ。
秋は実りの時期。木の実や果物などの森の恵み、お米やお芋などの大地の恵、その他海やら何やらの恵みをいただき、寒く厳しい冬への準備をする。ゆっくり時間をかけて蓄え、冬に備えるのである。鮭は川を登り、熊がそれを食べる。熊はお腹いっぱいになって冬眠に入る。ところが今年はどうしたものか。その備えの時期が短いのだ。その結果鮭は川を登らず、熊もお腹をすかせてしまう。何らかの宗教に入信した熊なら、多少の絶食も断食の修行と思い精進するかもしれないが、現実の熊にはなかなか熱心な信者はいない。餌を求めて人里に降りてくるのだ。結果獣害の原因となり、駆除の対象となる。
人間の場合は他の動物より適応力がある。マリーアントワネットが言っていた。
「鮭がなければブリを食べればいいじゃない」
実際にはマリーアントワネットではなく、ルイ15世の娘アデレイド王女のセリフらしいが、それもなんだか定かではないらしい。確かにブリしゃぶは美味しいが、のべつ食べられるわけではない。やはり朝から食べるとしたら鮭がよろしい。脱線し過ぎたので話を戻そう。
近頃やっと涼しくなったかと思えばまた急に暑い。これを書いてる今日、日中の気温は24度まで上がっていた。これでは身体がおかしくなってしまう。本来冬に流行するインフルエンザが、現在猛威をふるっているのは、自律神経やら何やらが季節感の無さにやられてしまったのが原因かもしれない。筆者の頭も相当やられている。それが証拠によくわからない文章を書いている。読者諸君の皆さま、どうか気をしっかりもって欲しい。季節感があろうがなかろうが、現在は秋なのだ。読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋。短くてすぐ過ぎてしまうかもしれないが、秋らしさを精いっぱい満喫しようではないか。