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超魔界村(16)

  ファミコン(ファミリーコンピューター)で社会現象を巻き起こした任天堂が、スーファミ(スーパーファミコン)を発売したのは、1990年の11月21日だ。本体の値段が2万5千円ほどで、ソフトも合わせると3万円を優に超えるものだから、簡単に親にねだるのは難しい商品だった。友人の家に通い、触らせてもらったスーファミは、とにかくキラキラに輝いていた。マリオが恐竜に乗り、未来の車が宙を飛び回る、ゲーム画面の一つ一つに感動した。スーファミが家にある、それ自体がステータスであった。
 そんなスーファミが我が家にご降臨なされたのは発売日から3年後である。誕生日プレゼントにと親におねだりをし、額が削れるほど土下座をし、靴底を舐めた結果である。おもちゃ屋なんて普段行かないだろう父親が、店員さんに聞きながら買ってくれたのだ。綺麗な包装紙をビリビリに破くと、スーパーファミコンの文字、嬉しくて飛び跳ねたものだ。これからは友人の家に行かなくても、ヒゲのおじさんを恐竜に乗せ、姫を救うためにきのこを食べさせる生活が始まると思うと、ニヤニヤが止まらなかった。そんな中、ソフトの入った包みを開けるとそこには『超魔界村』と書いてあった。

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この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com