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「2m40cm」大きなウォールナットのテーブルが出来上がるまでのお話

こんにちは。
今回の記事はオーダーメイドの家具が出来上がるまでの様子を紹介したいと思います。

家具からお財布、金継ぎなど、
いろんな素材や技術を組み合わせた創作活動をしています。
PLYLIST(プライリスト)の小尾口です。

今回のご依頼は
ダイニングテーブル
です。

打ち合わせ

まずはオーダーをくださったお客様のご自宅にお伺いします。
この時に僕がお客様にお伺いした内容は

どんなテーブルがいいのか
使う人数は(普段使う人は何人か、お客さんが来たときのMAXの人数は、お客さんがくる頻度はどの程度か)
テーブルの色味の希望(濃い色がいいかとか、白っぽい色がいいのかとか)
どのくらいの大きさがいいのか
既存のテーブルの問題点
内装や既存の家具、調度品の色彩のこだわりがあるかどうか
お客さんの趣味など


あと、僕が自宅を伺った際にチェックしたのは
納品時の搬入経路と距離
玄関、ダイニング入り口のサイズの確認
お客さんの大体の身長
既存のテーブルと椅子の高さの関係
既存のテーブルのサイズ
ダイニングの広さ
テーブル周辺の家具の位置関係(カウンターや食器棚等)
予算

この辺のことを確認しました。

お客さんとお話をして

2m40cm×1m20cmくらいの大きさ
高さは70cm
あとはおまかせ

ということで決まりました。
ちなみに既存のテーブルは1m80cmの大きさでしたが、
これだと小さいということでした。
なんでも最大で11人が集まるお家ということで
今あるテーブルよりも大きなテーブルが必要ということでした。

あと、今あるテーブルの問題点として、
脚がぽっきりと折れてしまっていました。
多くのテーブルがそうだと思いますが、
脚と天板は分解できて、ボルトで締めて固定
というオーソドックスなタイプでした。
だんだんと使っているうちにボルトが緩み、
脚がガタガタ、フラフラしがちです。。。
ボルトを固定していた天板裏側の木部がこのフラつきによって破損していました。

ということで、打ち合わせと現状の問題点を踏まえて
僕なりにテーブルをデザイン、設計しました。

テーブルのデザイン、求められる条件

サイズはもう決まっているので、
あとは家の雰囲気に合う色と機能性を満たすデザインが求められます。

①4方向から11人座ってもいいようなテーブル
②家の雰囲気、既存の家具や調度品に合うもの
③十分な強度と耐久性

これが僕が解決すべき課題だと判断しました。

①に関しては、脚と幕板をギリギリまで内側に入れて、
座った時に足とテーブルの脚がなるべく干渉しないように

②に関しては、お家の雰囲気が割とクラシックな感じで、
濃い茶色の家具で統一されていました。
後日、材木屋さんに材料を見にいくと、
とてもいい色のウォールナットが、3mくらいの長さであったので
今回はウォールナットのテーブルにすることにしました。

③に関して、強度と耐久性は
一般的なテーブルよりも脚の構造をかなり強固なものにしました。
脚のフラつきがなくなるように貫と呼ばれるパーツや
支柱になるようなパーツを追加しました。
また、破損していた木部の構造(ボルトでの固結)はなくし、
脚と幕板は、ほぞ組みと呼ばれる、木のパーツにオスとメスの部分を加工し、
それを接着材を併用して組み上げる方法を採用しました。
幕板と天板の固定には、木製の駒止と呼ばれるパーツを作り、
ある程度の木の収縮にも追従できるような、固定方法を採用しました。
今回のテーブルの納品先は海近くの神奈川県。
乾燥している長野県からの環境の変化が大きいため、
木の収縮や反りなどの動きが大きいと予想しました。

ここまでくると、ある程度頭の中でイメージができてきたので、
今回はスケッチはせずにいきなり設計図を描き始めました。
いつもはスケッチしてから製図に入るんですがね。
今回はイメージの解像度が高かったのでできましたような気がします。

製図

図面はこんな感じです。
CADを使って描いています。
3面図と詳細図。
あまりきれいではありませんが。。。
まあ、自分で作るので、自分が分かればいいので。。。

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材料の紹介

さて、ここから材料の加工に入ります。

まずは天板です。
今回の天板は北米産のブラックウォールナット。
僕の大好きな木材です。
なんですが、
今回仕入れたものは赤みが強く、いつもよく見るウォールナットよりも
めちゃめちゃ色っぽい。

このウォールナットに惚れて買いました。笑
そして
このウォールナットに惚れたから今回のテーブルのデザインが浮かんだ
という感じでした。

2枚の板をくっつけて1枚の板にしています。
同じ1本の木からとれた板です。

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今回のテーブル天板の特徴はなんといっても
大きな割れ
です。
あえてど真ん中に割れを持ってきました。
他にも節や割れ、シミなんかもあります。
これがまたいい表情です。

お客さんの「おまかせ」という言葉に甘えて、
遊びのような要素も入れてみました。

加工編ーほぞー

次にテーブルの脚や幕板の加工です。
接合部分は↓の写真のようにほぞで組みます。

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二枚ほぞと言われる形です。
一般的には一枚ほぞが多いですが、
さらに強度を出したかったので、二枚ほぞにしました。
加工の手間は倍以上
精度の高さも一枚ほぞ以上に求められますが、
個人的には一枚ほぞよりも二枚ほぞの方が好きです。
美しいから
というのが一番の理由ですが、
他にも、組んだときに歪みなくバチッと決まる感じとかが好きです。
まあただの自己満と言われてしまえばその通りかもなのですが。。。
でも、見えないところにも美しさを求めたいのです。

あと、せっかく作るなら
ここの数時間の加工をすることで
家具の寿命が数年間〜数十年延びる
と考えると、
手を抜きたくないです。
この辺は正直予算内では収まらない加工でしたが、
無視して僕はやりたいようにやらせてもらいました。
お金よりも家具の寿命を優先した感じです。
僕の勉強代と駆け出しの僕にオーダーをくれたサービスということにしています。

加工編ー旋盤ー

次に、丸く整形する加工です。
旋盤という機械を使って加工します。
まずは↓のように八角形にしてから

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↑こんな感じで刃物で丸くして

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サンドペーパーを使って磨きます。
ご覧の通り、粉塵がすごいです。

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小さいお孫さんもいらっしゃるということで、
脚は丸く
脚元は子供がぶつけても大丈夫なように、なるべく大きな面を取りました。

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仮組みしてみると、隙間なくバッチリはまりました。
実は、丸脚に二枚ほぞで組むというのは
四角い脚に二枚ほぞで組む
というのよりもかなりめんどくさいです。
↑の写真をご覧いただくと、
浅く掘り込んでから、2つのほぞの穴があるのがわかるでしょうか?
これがめんどくさい理由です。
他にもやり方はあるんですが、
今回の丸脚は
ストレートではなく、脚元ほど細く、上にいくほど太くなっていく形状だったので
このような加工方法を取りました。
一般的な二枚ほぞよりもかなり強度の高い接合方法になっています。

加工編ー接着ー

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接着するとこんな感じです。
最後の写真に写っているスポークが今回のテーブルのチャームポイントです。
構造的に強度を保つため
という理由もあるし、
意匠的な意味もあります。

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天板が乗っかる面をきれいに鉋がけします。
賛否両論あるかもしれませんが、
この時にわざと真ん中を膨らませました。(定規当ててる写真)
定規と木の両端の隙間から
わずかに光が漏れているのがわかるでしょうか?

今回のウォールナットの天板はとにかく重いです。
天板の真ん中が徐々に自重で下がってくることを恐れたので、
柱となるスポークを2本立てて、
さらに真ん中をあらかじめ若干膨らませておく(1mmくらい)ことで
数年後に自重で下がってきた時にフラットになるかな?
という意図でこういう細かいところまで気を使って加工を進めました。

加工編ー契りー

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天板の割れには
契り(チギリ)と呼ばれる割れ止めの加工をしました。
蝶々みたいな形状の木を埋め込むことで、
これ以上割れが広がるのを抑えてくれます。

実は、天板のウォールナットと
脚のウォールナットは色味が合いませんでした。
(天板のウォールナットが赤すぎたという感じですが。。。)
なので
色の統一感が少しでも保てるように、
脚に使ったウォールナットの材料の余りを使って
チギリを埋めました。

加工編ー天板仕上げー

そして、いよいよ天板の鉋がけ。

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鉋をピャンピャンに研ぎましたが、
木理が複雑なのと、節があったりでなかなかきれいに仕上がらず苦戦しました。。。。

最後はサンダーで研磨して

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加工編ー塗装ー

そして塗装。
今回使った塗料はガラス塗料と呼ばれるものです。
聞いたことがない方が多いと思います。

特徴は表面にニスのような塗膜を作らず
木の繊維に染み込んでいく塗料であるということ。

また、木の質感を残したまま
撥水性に優れ、汚れのつきにくい状態をキープできる
という塗料です。

ただ、お値段は高いです。

今回、どうしても試してみたくてガラス塗料を使いました。
効果の程はテーブルを数ヶ月から数年使ってみないとわからないので、
現状ではなんとも言えませんが、
お客様からまた報告を受け次第、この記事にも追記していこうかと思います。

ということで、塗装を終えて、完成したテーブルがこちらになります。

完成。

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塗装をすると、
天板の表情がグッと際立ちました。

天板には節や割れがあり、個性が強めなので、
脚元にもさりげなく小節を入れたり、木目が個性的な部分を使いました。
ほどよい光沢と艶、
触ったときのすべすべとした木の質感と
天板の自然な曲線。
とてもラグジュアリーなテーブルになったと思います。


オーダーメイド家具の納期について

オーダーメイド家具は打ち合わせから納品まで、
最低でも3ヶ月以上は余裕をみていただきたいです。
今回のテーブルは打ち合わせが11月で、納品は2月となりました。
今回は納品まで割とスムーズに行った方です。
僕がいくつも仕事を掛け持ちしているのと、
打ち合わせ、デザイン、設計、材料の仕入れ、加工、納品まで
すべて僕一人でやっています。
なので、急ぎのオーダーに関してはお受けできない場合がございます。
ご了承ください。

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