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【後編】オーダーメイドのセパレートダイニングテーブルができるまでの2年がかりの物語

この記事は
【前編】オーダーメイドのセパレートダイニングテーブルができるまでの2年がかりの物語
の後編の記事になります。
前編はこちらから。



モックアップを持参し、OKもらうも・・・・

こちらが1/10スケールのエクステンションテーブルのモックアップ。
天板が伸び縮みする様子を見せると
「これはすごい!よく考えたね!」
なんて言ってもらえました。
金具を一切使わずに天板の伸び縮みがする機構です。
3ヶ月も考えたので、我ながら自信はありました。
ただ、同時に結構不安もありました。
「これ杉で作って本当に大丈夫かなあ。。。」
正直、杉を使って1/1スケールで試作してみないと
強度の心配がかなりありました。
モックアップは合板で作ったので問題なかったのですが、
部分的に強度や耐摩耗性が求められるなパーツは
ナラとかカバとか硬い広葉樹でやろうかと考え、
もう一度設計を見直しました。
そして気づくと更に1ヶ月が経っていたのでした。。。

結局、ボツ

なかなかテーブルの制作が始まらず、
Nご夫婦からも

「いつ頃つくり始まりそうかね?」

なんて聞かれてしまいました。
なので正直に、

「ちょっと強度に不安なところが出てきてしまいまして、
今、もう一度設計を練り直し始めているんです。」

と、正直に申し上げました。
すると、

「天板、伸び縮みしなくてもいいよ?
昔そういうテーブル使ってたんだけど、壊れちゃったんだよ。
あの見せてくれたミニチュアの機構はすごいけど、
私もちょっと壊れないか心配だったから、別の方法考えない?
小ちゃいテーブルと大きいテーブルを作って、寄せて使うとか。」

これを聞いて、僕は正直、ほっとしました。
デザインと設計は1からやり直しですが、
壊れてしまわないか不安なまま進めてしまうことがどうしても嫌だったんです。
せっかく作るのだから、丈夫で長く使ってもらえるものにしたかったです。
ということで、白紙の状態からもう一度デザインし直しました。

白紙からデザインと設計をやり直す

ということでテーブルを2台作ることになりました。
メインのテーブルが長さ120cm。サブのテーブルが60cm。
両方をくっつけて使うと180cmになるという、
なんとも単純なアイデアですが、
よく考えると、こっちのほうが良さそうだったんです。
まず、サブテーブルを移動させることができるんです。
天板が伸び縮みするだけでは、来客時に伸ばして使うしかないですが、
サブテーブルが移動できるということは、
別の部屋に持って行けるんです。
Nご夫婦はお孫さんが長期休暇に遊びに来た時の勉強机にすると仰っていました。
そして、今回準備した杉の板は、
まさに持ち運ぶにはぴったりの軽い木材です。

ということで、今回のテーブルで重要なのは、
ずばり脚の位置だなと考えました。

サブテーブルだけで別の部屋で使う時
メインテーブルだけで使ったとき
2つのテーブルをくっつけた時に
どんなシチュエーションであっても、
どこに人が座ってもテーブルの脚が邪魔にならない。(人の足と干渉しない)

「それぞれ独立して使っても、くっつけて使っても美しいデザイン」
であること。

機能性と美しさ。

こんなことを踏まえていくつかラフスケッチを描いてNご夫婦と相談しました。
その中でも、Nご夫婦は板の耳を残したデザインを希望されました。

テーブルのスケッチ


こうしてようやく、スケッチから図面を起こして、
今度は安心して制作に取り掛かることができるようになりました。

そして、話は変わりますが、そんなこんなしているとき、
奥さんが第一子となる女の子を無事に産んでくれました。
可愛くてずっと見ていたいですね。
一気に「もう、働きたくない願望」が高まりましたが、
「お待たせしているテーブルをなんとか早く完成させねば!申し訳ない!」
と自分を奮い立たせて作業に取り掛かるのでした。

ようやく制作にとりかかったのは12月

図面も起こして、ようやく木を切り始めました。
今回使った板は5mもあるので、
杉とはいえども動かすのはかなり大変でした。
ちなみにこの板ですが、材木屋で購入した後、
どこに置いていたかというと、
前編の記事の写真に写っていましたが、
なんと我が家のお座敷に置いてました笑
さすがに居間とは別の部屋ですけどね。
完全に物置き部屋になっています。
我が家はかなり狭いんですが、
この板は本当になんとかギリギリ収まりました。
もう、はっきりいって、家の中にこんなバカでかい木があると、
木には申し訳ないですが、邪魔でしょうがなかったです。


それにしても、自分一人で全て作業するというのは
なかなか思うようにいかないもんですね。
ちょっと手を貸してくれる人がいればどんなに楽か。
生憎、奥さんは出産を終えたばかりでして、
とてもそんな余裕はありません。


ざっくりと切った後、バイト先の家具屋さんに材木を運びこみました。
機械をお借りして加工するためです。

とりあえず、天板と脚の板はぎ(幅の狭い板を何枚か接着して大きな板にする作業)が完了した段階で
一旦制作はストップさせました。
というのも、1月にイベントの出店を控えていたので、
その準備もしなければなりませんでした。
ちなみに、このイベントが開業後初のイベント出店でした。
なので、商品の在庫もないし、ショップカードや看板なんかもない状態です。
ということで、イベントまではその準備に勤しむことになります。

イベント出店を終え、ようやくテーブル制作再開かと思いきや・・・?

イベント出店後、テーブルの制作に戻ろうと思っていると、
バイト先の親方から電話が

「ごめーん、小尾口くん。悪いんだけど、
ちょっと今週からフルで入ってもらってもいいですか?」

と。
実は親方。自宅の新築工事中なんです。
新築のお家には、もちろん自分で作った家具を置くんです。
家具だけでなく、枠材やらフローリングやらの加工もやるし、
玄関扉をはじめ、建具もいくつか入れるし、キッチンまでやるんです。
しかも、これはあくまで自分のお家のための仕事であって、
当然それ以外の「本業の方の仕事」も何件かあったんですよ。
そして、この時点で新築の方の工期、割と伸びてたんですよ。
さすがにやばいとなって、
私は2月の中旬まで平日フルでお手伝いをすることになりました。

テーブル制作は土日に進めて、平日はバイト。
そのため、テーブルはかなりのスローペースで制作は進みました。
そして、親方の仕事がある程度きりがよくなったところで、
週2くらいのペースに落としてもらいました。
ようやく本腰入れて(?)テーブル作れるようになったわけです。

この頃になると、大きな機械を使う仕事はほとんど終わっていたので、
ノミや鉋などを使った手加工の仕事を
自宅の6畳の作業場でやりました。
制作工程については、気力があればまた別の記事で書こうと思います。
もうすでにこの記事は長くなりすぎているので。。。

そんなこんなで、ようやく完成しました。

納品

待ちに待った納品の日。
テーブルは私の父親が運ぶのを手伝ってくれました。
1人でも持ち上げられる重さですが、
さすがに大きくてどこかにぶつけてしまいそうだったので手伝ってもらいました。
出来上がったテーブルを見て、Nさんは

「あの板がこんな立派なテーブルになっちゃうなんて、
大したもんだね。恐れ入っちゃうよ。」

とおっしゃいました。
私はかなり未熟な作り手ですが、
この言葉を聞けて本当に嬉しかったです。

急いでないから、納期はいつでもいいと言われてはいましたが、
その言葉に甘えに甘えてしまった私です。
ようやくテーブルを納めることができて、ほっとしました。

この後、ごはんをごちそうになりました。
ちらし寿司でした。
自分が作ったテーブルがNご夫婦の家にあり、
そのテーブルで一緒にごはんを食べるというのは、
なんだかとても不思議な気分でした。
なんだか嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいような。

そして、次に作るダイニングチェアの打ち合わせをしてきました。

自分は、本当に未熟ですが、
独立してすぐに、こんなにも好き勝手に作れせていただけて、
本当に自分は恵まれていると感じました。

Nさん、遅くなりましたが、約束のテーブルをつくることができました。
こんな未熟な私ですが、作らせていただき、ありがとうございました。
このテーブルは私にとって一生の思い出になります。

次は椅子。
もっと早く作れるように頑張ります。
そして、精一杯、いいもの作らせていただきたいと思います。

長い文章でしたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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