疲労と炭水化物の意外に知られていない関係を解説
「炭水化物抜きダイエットは体に良い!」
「炭水化物は太るもの」
最近こんな言葉を聞きませんか?
炭水化物は体に良くないというイメージがついている方も多いのではないでしょうか。
実は、炭水化物は体にとって必要な栄養素なんです。
この記事では、疲労と炭水化物の意外に知られていない関係について、薬剤師が詳しく解説。
炭水化物のことを正しく知って、より健やかな日々を過ごしましょう。
疲労回復に効果的?炭水化物について解説
炭水化物ってどんなものなのでしょうか。
すぐに答えられる方は少ないかもしれません。
炭水化物とは、脂質・たんぱく質と並んで三大栄養素の1つです。
炭素と水素の化合物で、消化されてエネルギー源となります。
炭水化物は、さらに以下の2つに分けることができます。
糖質
食物繊維
それぞれについて詳しくみていきましょう。
①糖質
糖質は、食物から体に取り入れられエネルギー源となります。
糖質は以下の3つに分類されます。
単糖類
少糖類
多糖類
それぞれ詳しくまとめたものを載せます。
②食物繊維
食物繊維は食べ物に含まれ、人の消化酵素では消化することができません。
最近では整腸作用などが注目され、「第6の栄養素」と呼ばれることもあります。
食物繊維も、大きく2つに分けることができます。
不溶性食物繊維
水溶性食物繊維
それぞれ代表的なものを示します。
食物繊維は便通を整える作用だけではなく、脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して外に出す作用があります。
生活習慣病を防ぐことができるため、食物繊維もしっかり摂っていきたいですね。
炭水化物と疲労の関係性
炭水化物と疲労の関係性について解説していきます。
キーワードとなるのは炭水化物の中でも「糖質」です。
体のエネルギーのもとになる糖質
糖質が持つ重要な役割は、体のエネルギーのもとになること。
1gあたり4kcalのエネルギーを作ります。
糖は筋グリコーゲンという形で筋肉の収縮のためのエネルギーのもとになります。
運動時間が長くなればなるほど、血糖を体内に取り込む働きが強くなるため、運動直後に糖質を摂ることは筋グリコーゲンの速やかな回復につながります。
運動後の体の疲労状態を回復するために、糖質が必要であることが言えます。
脳の主なエネルギー源はブドウ糖
脳の主なエネルギー源はブドウ糖です。
脳は体重の2%程度の重さですが、人の基礎代謝量の約20%を消費すると考えられています。[1]
ブドウ糖の摂取が、脳のはたらきに大きく影響を与えることは間違いありません。
「勉強の時には甘いもの」という言葉には、根拠がありました。
脳の疲労回復にも、糖質が欠かせません。
脳以外にも、
神経組織
赤血球
腎尿細管
精巣
酸素不足の骨格筋 など
通常ブドウ糖のみがエネルギー源となります。
糖質は人の疲労回復にとって無くてはならないものですね。
炭水化物は多くても少なくても問題
炭水化物は、多くても少なくても問題となります。
具体的にどのような問題となるのでしょうか。
多いと肥満や生活習慣病の原因に
炭水化物を摂りすぎると、エネルギーとして消費されなかった糖質は中性脂肪として体にたまり、肥満や生活習慣病の原因になります。
炭水化物を摂るときには、「質」のことも考えると良いとされています。
穀類には以下の2種類があります。
精製度の高い穀類(白米、食パンなど)
精製度の低い穀類(玄米や雑穀米、全粒粉パンやライ麦パンなど)
精製度の高い穀類はビタミンやミネラル、食物繊維が少ないため、精製度の低い穀類も合わせて利用すると良いとされていますよ。
少ないとエネルギー不足や意識障害にも
炭水化物が不足すると、エネルギー不足による疲労感や集中力の減少が見られます。
ブドウ糖が必要な脳や神経で不足が起こると、意識障害を起こすこともあります。
炭水化物を食べないダイエットなどもよく聞きますが、リスクについても理解しておかなければなりません。
炭水化物は多くても少なくても問題となります。
バランスよく炭水化物を摂っていきましょう。
炭水化物の適切な量ってどのくらい?
では、炭水化物はどのくらい摂れば良いのかみていきましょう。
摂取エネルギーの50~65%を目安に
厚生労働省「エネルギー産生栄養バランス」という指標があります。
エネルギーをつくる3つの栄養素について以下のように設定されています。
炭水化物の割合は、100%からたんぱく質と脂質を引いたものから設定されています。
アメリカ人男女(45~64歳)約15000人を25年間追跡して、炭水化物を摂った量と総死亡率との関連を検討した報告があります。
報告によると炭水化物を摂った量の50~55%がエネルギーであった集団で最も低い総死亡率と、最も長い平均期待余命が観察されました。[1]
同時に、総死亡率の上昇と平均期待余命の短縮は炭水化物を摂った量の55~65%がエネルギーだった集団はわずかでした。
これらのデータも、目標量の範囲を50~65%にすることを後押しています。
炭水化物は、摂取エネルギーの50~65%を目安に摂っていきましょう。
炭水化物を含む主な食品
炭水化物を含む主な食品としては、以下のものがあります。
疲労回復にオススメのフルーツはこちらの記事で紹介しています
また、疲労回復にオススメの野菜はこちらの記事を読んでみてください。
食事バランスガイドを活用しよう
農林水産省の食事バランスガイドは、今までの栄養表示成分とは異なり、料理の組み合わせから栄養バランスを見直すことができるものです。
毎日完璧なコマの形ではなくても良く、3、4日や1週間といった目安ごとで食生活のバランスをみるのに役立ちます。
炭水化物の供給源であるパンやごはん、パスタなどを主材料とした料理は、「主食」の分類として表されます。
1つ分は、コンビニで販売されているおにぎり1個分で、1日5~7つ分摂ると良いとされていますよ。簡単に食事バランスを確認していきましょう。
正しく炭水化物を知って、疲労知らずの体になろう
この記事では、疲労と炭水化物の意外な関係性について紹介しました。
炭水化物は以下の2つからできています。
糖質
食物繊維
炭水化物は体にとっても、脳にとってもエネルギーとして重要で、疲労と深い関係があります。
多すぎても少なすぎても問題となります。
摂取エネルギーの50~65%を目安に。
食事バランスガイドなども活用して、炭水化物をうまく摂りながら疲労回復していきましょう。
【参照】
[1]厚生労働省食事摂取基準