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テンポ。

音楽を形作る1つの要素にテンポがあります。
テンポが意外に曲の表情を変えてしまうので、重要な要素だと思います。


若い頃、今でいうダイニングバーのようなお店へ週に1度ピアノを弾きに行っていた時期がありました。体調を崩して泣いていることが多かった私を友達が心配して、バイト先のオーナーに頼み込んでくれたんだと思います。ある日「私のバイト先までピアノを弾きに来ない?」と声をかけてくれました。
私を励まそうとしてくれていた彼女の優しさには今でも感謝しています。


そこのオーナーは音楽がお好きな方でした。


ビートルズがお好きということでお店ではいつもビートルズがかかっていました。
私が弾く曲は
「なんでもいいよ。」
とおっしゃって下さり、私は本当に自分の好きな曲をなんでも弾いていました。
若かったのかな?ビートルズを弾いたのは1、2曲でした。
今ならもうちょっとそのへんを考えるかな。。

45分演奏して15分休憩。それを2ステージ。

ご飯を食べに行って2時間をそこで過ごすということはあるだろうから、2ステージの曲は重ならないようにスケッチブックにたくさん曲を貼り付けてたくさんの曲をいつも持って行っていきました。いつも3冊くらい。

でも、

お客様の雰囲気をとらえて曲を変えるとかそんな腕は私にはないので、
自分で考えて持って行った曲を順に弾くだけでしたけれどね。


その頃はドビュッシーが好きだったからクラシックの曲はドビュッシー、ショパンはワルツとか、あとは定番の曲でとにかく耳なじみのありそうな曲にしたけれど、でもいろんな人が食べにいらしているだろうからジブリやディズニーとか、映画音楽とか、そういう曲が多かったです。

っていうのもあるし、譜読みは苦手だったからメロディーとベースの音と和音だけ意識してそれらしく弾いていたというか。
人前で弾いてもおかしくない程度に仕上げてね。
20~30曲を1度に弾くにはそれが一番だったというか。。

あ。
話がそれました。

初めてそこのお店で弾いた時、
オーナーに「いいんだけどね。なんか急いでない?もうちょっとゆっくり弾いてもいいんじゃない?」と言われて、今まで楽譜に書かれたテンポで弾くことしかしてきていなかった自分に初めて気付きました。


あのオーナーの言葉がなかったら、「自分にあったテンポがある」という事を知らなかったかもしれません。


残念ながら、そこのお店は今はもうなくなってしまいましたが、
私にはすっかり「自分のテンポで弾く」という新しいカテゴリーが出来上がりました。


生徒さんが弾く曲でも、その人が弾いてうまく伝わるテンポがあります。コンクールや発表会で弾く曲でも指定されたテンポに105〜120など幅がある場合は、それぞれ試して必ずうまく表情が伝わるテンポで弾かせます。
もちろん、たくさん弾きこんでいないとその表情は出せませんけれど。。
その時は「何を伝えたいのかわからないわよーーー!もっとこっちに伝わるくらい弾いてきてね」って怒られますけどね。
その上で、テンポを意識して曲を仕上げます。

それくらいテンポがその人の演奏の良さを引き出してくれるという事があります。



でも、自分のテンポで弾くだけでは困る事もありました。


合唱の伴奏です。
自分の解釈でとりあえず楽譜を練習して行くけれど、指揮の先生の指先が全てなので、うたが始まると必死に先生の指先に合わせます。

先生は曲の仕上げのテンポが早くて私はゆっくりな事が多かったので、伴奏を始めた頃はテンポの早い曲は特に指揮に合わせられるようなコツをつかむまでしばらくかかりました。
今日はダメだった!!と思ったら、合唱が終わった瞬間家に帰って忘れないように即練習してまた次の日から頑張るとか。初めの頃はそれの繰り返しでした。
残念ながら録音するという知恵は持ち合わせておりませんでした。。

今は、先生のうたう声を聞いて「こういうふうに演奏したいのね」という「先生の曲の感じ」を汲み取れるようになりましたが。。


伴奏を通じて私の持っているテンポより早いテンポで弾くことで、
いろんな曲のニュアンスを知ることができました。


体調を崩した経験から、
私は仕事でも友達付き合いでもなんでも自分のテンポを大事にするようになりました。
波長を合わせてみて合わない時は1度立ち止まって他の方法を考えてみるとか、
疲れている時は「今日の調子はどう?」と自分に確認することも大切だと学びました。
人とひとがつくる社会なので相手に合わせることももちろん大切ですよね。
それと同じくらいひとも、音楽のように自分が1番イキイキとできるテンポがそれぞれにあるのかもしれない。と、そう思います。


あなたの周りには、今、どんな音楽がありますか?


今日もあなたの心に音楽を。

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