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雨上がりのキスをきみに

梅雨はわたしが生まれた季節で、みんなから最も疎まれている季節。

だけどここにいると梅雨が好きだよと言ってくれる人がたくさんいて、私はなぜだか勝手に認められたような気持ちになりながらベッドの上で雨音を聞いている。

恋人と出会ってから2年と2ヶ月が過ぎて、

最近は喧嘩をすることもあまりなくなって、

それでもすれ違うことはやっぱりあって、

そういう縺れのようなものに時々嫌気が差したりするけれど、でもやっぱり恋人と笑い合える毎日は少し幸せだなと思う。


私は人付き合いが苦手だから教室という狭くて息苦しい空気は少し痛くて、弾ける笑い声に居心地の悪さを覚えることがある。

私の心に愛想笑いは毒なのだと気付いてから、私はあまりうまく笑顔を作れなくなったんだっけ。


毒で麻痺した心を癒したのも君だったな。


ここに君がいたらなと窓の外の空を見上げて、暗く揺らいだ曇り空に自分の中にある感情を重ねる。

体にまとわりつく重たい水気を含む二酸化炭素に押しつぶされそうになりながら、君の顔を思い浮かべたりする。




君は乙女心を全然わかってないし私じゃない誰かの話をいつも嬉しそうにするし、私のダイエットには全然協力してくれないし馬鹿正直でお世辞のひとつも言えないような不器用な人で、

でもだから好きなんだよなと泣きそうになる。

きっと私は君じゃない人とでも幸せになれるんだろうけど、もしかしたら君よりずっと幸せにしてくれる人がいるのかもしれないけど、

でもそんなことはどうでも良くて、

ただ君のそばで笑うことが私の一番の幸せなんだよ。

そう言ったら君はそっかって笑って、
それだけかよと私はグーの手で君の二の腕をぽかっと叩いた。



それだけのことが、こんなにも愛しい。



そっかとだけ返した君の、私の言葉をゆっくり噛み締めるような優しい顔が、わたしはこんなにも愛しいのだ。


ねえ、愛してるよ。
いつも素直に言えなくて、ごめんね。

愛することも愛されることも、諦めずにいてよかった。君と出会えてよかった。

いつかこの恋に呆気なく終わりが来ても、君に恋したこの気持ちはきっと二度と忘れない。


どんなセリフも君の前では言葉でしかなくて、

この気持ちを言葉で完璧に伝えるすべはどこにもなくて、

だからせめて、

抱きしめてキスをさせて。


からだいっぱいに満たされた愛を君にあげる。








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