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Amazonプライムビデオお薦め 38 『春だドリフだ全員集合!!』

今回お勧めする映画はこちら。みんな大好きドリフターズの映画『春だドリフだ全員集合!!」です。

なんというかドリフによる春のテレビ番組の特番のようないいかげんなタイトルですが、(おそらく、それだけ忙しかったのでしょう。この映画は71年の作品ですが調べてみたところ69年には「8時だよ 全員集合!」がはじまっています)しかし、単なるバラエティ企画ではなく、そこは松竹、映画としてしっかりとした仕上がりになっています。

一般的にいかりやさん(以下「長さん」)はテレビ番組の「8時だよ」終了後に俳優に転向し、名優になったと言われていますが、しかし、これをみるとそんなことはなく「8時だよ」が始まる前に、すでに名優であったことが分かります。同じ松竹で晩年『幸せ家族計画』という作品に出ていますが、そこで見せている演技のほぼすべてはもう、この段階で完成しています。本作で長さんが演じるのは真打になれない落語家です(師匠はなんと圓生師匠!。ちなみに小さん師匠もこの映画に出ています)。しっかりと落語を演じているところから(ちなみに最後の方ではカトちゃんも一席演じています)実は、長さんの演技、長さんのコントは落語を研究して身に着けたものなのでは、などとも考えてしまいます。上の写真にもあるように女装もよくする長さんですが(そのギャップが面白いからでしょう。志村さんは後年(長さん存命中から)柄本明さんに芸者役をさせてコンビを組んでいましたが、そこに長さんを見ていたのかもしれません)女役を演じつつも、そこには噺家本人がいる、という点では、コントで様々なキャラを演じながらも、そこには隠し切れない長さんがいるというドリフのコントは落語に通じるものがあります。もちろん長さんだけでなく、カトちゃん、ブーさん、仲本さん、そして荒井注さんと、5人が5人、それぞれのキャラにあった役をしっかりと演じています。見ている人はそれがドリフなのか映画の中のキャラなのか、おそらくその両方を同時に見ていたでしょう。仲本さんはミュージシャン(ギター、ボーカル)としても超一流なのですが、敢えて、下手に歌を歌ったりして、隠れた芸達者ぶり(能力があるのに、決して自分が前面に出ようとするタイプではないところが仲本さんの魅力です)を見せています。

先に「さすが松竹」と書きましたが、松竹のすごいところはしっかりした役者をしっかりとしたセット(スタジオ)を使い、しっかりとした脚本で、しっかりした絵(シャシン)を取って衣類という点につきます。70年代の東宝や東映の映画を見ていると、外で撮影しているものや、カメラの手振れが気になるのですが(しかし、それはそれでワイルドで、味があります)松竹は、なんというか安定しています。今ではその伝統を受け継いでいるのは山田洋二監督ぐらいなのでしょうが、なんとこの映画、実は寅さんシリーズ一作目の同時上映作品だったりします。ちなみに寅さん映画とドリフ映画の組み合わせはその後も75年までに9作品もあります。子供はドリフ、親は寅さんという相乗効果を狙ったのかもしれませんが、最高の組み合わせと言えるでしょう。当時の人たちがうらやましいです。

テレビの世界でしかドリフを知らない人(私もですが)には、おすすめの映画です。是非、見てみてください!

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