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アマゾンプライムお薦めビデオ② 66 『ジャージー・ボーイズ」

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御大、クリント・イーストウッド監督がトニー賞受賞のミュージカル作品を映画化した『ジャージー・ボーイズ』です。

とにかくこの年にしてこんなポップで現代的な映画を撮ってしまう御大はすごい。もともと音楽好きで監督デビュー作の『恐怖のメロディ』(原題『Play Misty for Me』)ではラジオDJを扱っていたほどですが(ちなみにこの『恐怖のメロディ』ではジャズファンク時代のキャノンボール・アダレイの演奏を見ることができます)、見事に「ミュージカル」を「映画」にしています。

普通ミュージカルの映画化というと、ミュージカル要素はそのまま残すのですが、そこはイーストウッド監督、しっかり「映画」として仕上げています。つまり、演奏はあくまで演奏シーンとして撮影されています(最高にしびれるエンディングを除いてですが)。ただ、一つ、舞台劇的な要素を残しているとすれば、それは役者がスクリーンに向かって語り掛けてくる、という点でしょうか。しかし、これも今では「映画的」な演出であると言えます。いわゆる「第4の壁」は現代映画ではそれを破ることも一つに演出要素であるからです。それをあのイーストウッド御大が軽々とやってしまっているのがまたすごいのですが、、、。

似たような映画として伝説のロックバンド「クイーン」を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』を思い起こす人がいるかもしれません。しかし個人的にはこちらの方が好きですし、お薦めします。こちらの『ジャージー・ボーイズ』も実在したバンド(というよりもコーラスグループと言った方がいいかもしれませんが)「フォー・シーズンズ」を描いたものなのですが、クイーンよりも一世代前ということもあり、ドキュメント感はそんなにありません(一方、『ボヘミアン・ラプソディ』はどうしてもドキュメンタリー=記録として見てしまいます)。ですので、単純に映画、それも音楽映画、繰り返しますが、音楽映画でありミュージカル映画ではないものとして楽しめます。今、「ミュージカル映画ではなく音楽映画」という言い方をしましたが、ミュージカルではある意味音楽が説明となりますが、音楽映画ではそうではありません。音楽はあくまで音楽として登場します。そしてそれができるのが、この映画で使われている曲が、実際にだれでも一度は耳にしたことがあるヒット曲だからでしょうし、「フォー・シーズンズ」が基本的にツアーに出てライブを行うというタイプのバンドだったからでしょう。「フォー・シーズンズ」というグループ名自体は失礼ながら、私は存じ上げていませんでしたが、ここで流れている曲は、みな必ず耳にしたことがある名曲です。そして決してオールデイズではなく、今、現在でも新鮮な曲たちです。

また、この映画自体も、ある意味音楽的な構成、ポピュラーミュージック的な構成となっていることも指摘しておいていいでしょう。いわゆる、Aメロ、Bメロ、Cメロ、サビ、という構成です。Aメロはグループとして売れるまで、Bメロは売れてから、そしてCメロはとある問題で、バンドがごたごた(というか事実上の解散とその後を描き、そしてサビで、リユニオン(再開)ライブが描かれます。AメロBメロ部分は先ほどの第4の壁を破る演出がありますが、いわゆる転調パートであるCメロ部分にはそれはありません。Cメロ部分はオーソドックスな「映画」の手法で描かれます。そしてサビにおいて観客が忘れていたころにまた第4の壁を破る演出が復活し、「そうか、この映画はこういう映画だったんだ」、とその新鮮さと感動を思い起こさせてくれます。そして最後にタイトルバックとして、おまけ的ではありますがこれが最高なミュージカル調のエンディングあって、映画は終わります。

と、とにかくサービス精神たっぷりの極上エンターティメント音楽映画です。音楽好きはもちろん、そうでない人でも映画として十分に楽しめる作品です。こんな作品もさらりと撮ってしまう、イーストウッド監督の凄さ、幅の広さに改めて恐れ入ります。本作ではイーストウッド自身は出てきませんが(一部、映画内のテレビにイーストウッドの西部劇が映るというサービスはありますが)、代わりにと言っては何ですが、クリストファー・ウォーケンがいかにもな町の顔役として存在感を出しています。そこにも注目です。


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