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持て余した権限を地方へ渡そう、そうしよう

Twitterで、このつぶやきが注目を集めているようです。

事実、今回のコロナ対策で、都道府県などの地方自治体の首長が評価を集めているように見えます。

その理由はいくつか考えられるでしょう。

▶ 地方自治体の方が、地域の実情に詳しい。
▶ 地方自治体の方が、構造的に決断が早い
▶ 地方自治体の方が、合意を取るのが早い

これらを解説したいと思います。

▶ 地方自治体の方が、地域の実情に詳しい。

 これは説明するまでも無いかもしれません。
 地方自治体の職員、議員、そして彼らを選挙を通じて選ぶ住民は、その地域に暮らしているため、生活を通じて無意識にでもその地域の実情を知っていきます。

 一般の人々も、知らず識らずのうちに、その地域に専門化していくため、地方自治体はその地域に特化し、精通した組織となっていきます。

 一方で、国を取り巻く関係者は、当然ながら全国各地に散らばっています。
 ある地方の状況について、別の地方の議員や住民が理解できているでしょうか?
 それらを考えても、地方自治体の方が、その地域の実情に詳しく、地域にあった政策を効果的に出来るようになります。

▶ 地方自治体の方が、構造的に決断が早い

 地方自治体と国で決定的に制度が違う点があります。

 それは、地方自治体は知事を直接選挙で選ぶ、いわば大統領制を取っているのに対し、国は国民が選挙で選んだ議員たちが首相を選ぶ議院内閣制を取っています。

 大統領制では、トップリーダーは住民から政権を直接任されているという強みから、一般的に議会に縛られにくく、強いリーダーシップを発揮しやすいと言われます。

 一方で、議院内閣制では、トップリーダーは議会から政権を任されているため、議会の理解を得る必要が大きいと言われます。
 そのため、リーダーシップを取ろうと思っても、議会に反対されれば、最悪の場合、クビ(内閣不信任)になってしまうため、議会の顔色を伺わないといけないと言われます。

 このため、構造的に、地方自治体の方がリーダーシップが強く、決断が早くなると考えられます。

▶ 地方自治体の方が、合意を取るのが早い

 当然のことですが、何かを決める際、関係者が多いほど、多くの納得を得なければ何かを決定することができません。
 もしも議題に詳しくない人もその意思決定に参加しており、その人の了解も取らなければならないとしたら、詳しくない人に対してより多くの説明をしなければ、了解を取る前提となる決断がその人はできないため、さらに時間がかかるでしょう。

 国ではこれが起きています。
 つまり、ある地方の問題を解決するために、別の地方の議員たちの了解まで取らないといけない、という状況です。

 いくら素晴らしい経歴を持つ議員でも、全国各地の状況に精通しているわけではありません。
 今回のコロナ対策で言えば、大都市圏と山間部などでは大きく状況が異なっています。緊急の対処が必要な地方と、まだ状況が穏やかな地方では、危機感も異なるでしょう。その中で「緊急事態宣言が必要だ」と発言しても、その危機感を別地方の議員たちにまで理解してもらうには、多くの説明等の努力が必要でしょう。
 国のコロナ対策が後手に回っているという指摘は、ここから来るところもあるかもしれません。

 加えて、国は「なぜわざわざ国がやるのか?」という自問に向き合いながら政策を検討します。

 ある地方だけを対象とする政策をすると、「それならその地方の自治体に権限を渡して、その自治体がやればよいのでは?」という声が上がり、国自身の権限を渡さないといけなくなります。国は、自らの能力の源泉である権限を渡すことに大きな抵抗を示します。

 そのため、「全国的に必要だ」と言える政策しか、国は行わなくなっていきます。ある地方が必要としていても、「全国的に必要に」なるまで、政策を行えないジレンマがあります。

地方が国に手足を縛られている

 それなら、地方自治体がより行政機能を発揮すればいいじゃないか、という話になるかもしれませんが、現状、それを発揮することは難しくなっています。

 なぜか、それは地方が持つべきとも言われている能力(権限)を、国が持っているからです。

 それを端的に表しているのが「6:4問題」です。
 地方と国で、どちらが多くのお金を必要としているか(歳出)を見ると、地方 対 国で見ると6対4の比率で地方の方がより多くのお金を必要としています。

 しかし、地方と国で、どちらが多くお金を得ているか、つまりお金を使えるか(歳入)を見ると、地方 対 国で見ると4対6の割合で国の方がより多くお金を得ている、つまりお金を使えるという状況になっています。

 地方の方がお金を必要としているのに、地方の方がお金が少ない。
 この状況は、国が地方へ財源を渡せば済む話ですが、なかなかそれは進みません。一説には、国が地方へ財源を渡してしまうと、国はお金を人質に地方に言うことを聞かせられないから、とも言われています。

国は地方に権限を渡そう

 上記は国が権限を持ちすぎている一例です。

 コロナ対策を見ると、国よりも地方自治体が活躍するフェーズがあることが見て取れます。
 これを機会に、地方自治体へより多くの権限を譲り渡し、地方自治体の活躍を国が縛らないよう、制度を変えていっても良いかもしれません。

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