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【レビュー】DP3 Merrillを2019年から使って思うこと

はじめに


DP3 Merrillは、2013年2月22日に株式会社シグマから発売されたFoveon X3 ダイレクトイメージセンサー搭載レンズ一体型コンパクトデジタルカメラです。

私は本カメラを2019年に購入しました。本記事では、その機能に触れつつ、外観や撮影した写真を紹介します。

以下、メーカーのリンクです。こちらから読めるカタログは必見です。

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外観・使用感

以下に外観の写真を示します。

コンデジでありながら一眼レフのSD1 Merrillと同じセンサーを搭載しており、Foveonセンサーと35mm判換算75mm相当のマクロレンズが紡ぎ出す圧倒的な高画質が特長となっています。
このレンズは本カメラ専用設計のため、極めて高画質かつ、周辺部まで安定した解像力を誇ります。センサーサイズはAPS-Cなのでレンズの中心のみを使えるのもメリットです。

使い勝手については、その他のFoveon搭載カメラと同様です。ISO感度はほぼ100固定、長い書き込み、遅い連写……すべてを画質に捧げています。それがいいのです。

無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインをしています。
ボタンの数も必要最低限。撮影に必要なものだけが並んでいます。
十字キーからは直接AFポイントを選択できて便利です。
シャッター方式はレンズシャッター。ストロボで日中高速シンクロが可能です。シャッターを切ると「パチッ」というレンズシャッター特有の軽やかな音が小気味よく響きます。

撮影した写真

撮影した写真を以下に示します。画質の参考になれば幸いです。
※感染対策を徹底して撮影しました。

この解像感、目が覚めます。
Foveon搭載カメラはRAWで撮影→SPP(現像ソフト SIGMA Photo Pro)で現像、というのが原則で、これを経ないと最大限のパフォーマンスを発揮できません。
もちろんワークフローとして適しているならばjpeg撮って出しもよいですが、SPPで現像したほうがきれいに仕上がります。

換算75mmのマクロレンズによって、ハーフマクロが可能です。
実際に撮影すると、三脚がないとブレてしまうことが多いです。気合でカバーすることもできますが、あると安心でしょう。

ボケは柔らかい印象があります。しかし、中望遠F1.4レンズとはかなり使い勝手が異なるので使い手を選びます。難しいです。
ポートレートも可能ですが……おすすめはしません。被写体が見せたくないものも写してしまうかも知れないからです。
なんだかけなしてばかりいるようですが、それほど高い解像力をもっています。こと画質に関して、このサイズで比肩するものはなかなかありません。

なお、日差しが強すぎると、上記の写真のような色被りが起こります。夏はちょっとしんどいかも。

しかし、日差しに気を付ければきちんと空の色が出ます。
特に、秋や冬の昼下がりから黄昏の少し前にかけて撮影すると程よい光のバランスになると思います。

SD1 MerrillやDP2 Merrillもそうでしたが、ハイライトは飛びがちです。そして現像時に露出を下げても戻ってきません。
これらの対処法としては、C-PLフィルターを装着するのがおすすめです。コントラストが上がり、ポジフィルムで撮影したかのような写真になります。なお、フィルター経は52mmです。

一方で、しっとりとした描写は本カメラの得意分野です。
本カメラで撮影した写真には、ベイヤー式センサーで撮影した写真とは違うとひと目で分かる空気感があります。

DP3 Merrillで撮るモノクロ

カラーフィルターを持たないことなど、そのセンサーの特徴から、Foveonのモノクロは真のモノクロとも言われます。
他にこんな芸当のできるカメラは少なく、ましてカラー撮影も可能なのはFoveon搭載カメラだけです(2023年9月時点)。
言わば、「カラーも撮れるモノクロカメラ」。以下では本カメラで撮影した写真をモノクロームで現像したものを紹介します。

モノクロは色の要素を削ぎ落とし、写真をシンプルにします。
でも難しいことはわかりません。ハイライトを飛ばしたり、あるいは飛ぶ寸前のところで止めたり。現像時にもう一度撮影するかのような楽しさがあると思います。

また、SIGMA製カメラでは、SPPで「Fill Light」が使用できます。
SPPの説明には
「画像の明るい部分の露出を変えることなく、暗い部分にライトを追加するように明るさを調整することができます」
とあり、±2.0(1目盛り0.1)の幅で調整できます。これを使って遊ぶのもまた楽しいでしょう。
noteのSIGMA広報部でも記事があります。

総括:アーティストのためのカメラ

本記事では、Foveon搭載カメラ DP3 Merrillの外観や、実際に撮影した写真、またはエピソードとともに紹介しました。情報収集の一助になれば幸甚です。

ところで、画家であり写真家でもあったソール・ライター氏は、カメラにポジフィルムを入れ、90〜150mm付近のレンズをよく使用していたと語られています(展示「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」より)。実際に写真を見ると確かに望遠寄りで、だからこそ風景を切り取るに留まらない絵画的なスナップを撮影できたのだと思います。

こうして氏の使用していた道具に着目すると、本カメラとよく似ているように思います。
Foveonセンサーの写りはポジフィルムにも例えられ、レンズは換算75mmです。そして、dp3 Quattro用のコンバージョンレンズFT-1201を(ステップアップリングを介して)使用してすることで60mm(換算90mm)にできます。なんとF値はそのままのF2.8(換算F4)。当時のレンズとも近いのではないでしょうか。しかもこれ、着けると解像力が増すという不思議なレンズなのです……

氏のような洗練されたスナップを撮るには相当の修行が必要ですが、道具はここに揃っています。それに、本カメラはデジタルカメラです。現像代やフィルム代を気にすることなく、存分に写真を撮ることができます。あとは、センスがあれば……

実際に、発売から10年を経ても、2023年のCP+ SIGMAブースでは写真家さんが本カメラで撮影した写真が展示されていました。

アーティストに必要なものはすべて、このカメラに詰まっているのです。


10余年経ってバッテリーもへたってきました。純正はもうほぼ手に入りませんが、互換品がロワジャパンから出ています。

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レンズ以外が共通のDP2 Merrillも紹介しているので、よければ併せてご覧ください。


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