相手に伝わるアドバイスとは〜風間八宏さんの「目を揃えろ」を学習科学する
見ていてもどかしい。アドバイスをする。
でも、上手く伝わらない。
こんな経験を何度もしたことはありませんか?
もちろん原因はいろいろです。
しかし、風間八宏監督だったらこう言うと思います。
「目を揃っていなから」
つまり、「目が揃って」いないから相手にアドバイスが伝わらないのです。(もちろん、コトバも揃っていないというのもありますが、こちらは割愛)
この「目を揃える」というのは学習科学的にどのようなことを意味するのか考えて見ます。
見えている世界がちがう
当たり前ですが、私たちは皆違う人間です。
それは考え方、感じ方が異なるということです。
しかし、往々にして私たちは「相手も自分と同じように考えている」と勝手に想定して、話をしてしましいます。(その代表が私です・・・)
「目を揃える」
を大きな視点で言えば、ビジョン、目標です。
チーム(クラス)として活動しているとき、どこに向いているのか、見ている先がぶれてしまうと、チームとしての一致が崩れてしまいます。
「目を揃える」
を小さな視点で言えば、学習者(選手)が見えている世界について考えることです。学習者(選手)が意志決定する際のプロセスです。
今回は、この小さな視点の「目を揃える」をもうちょっと深く考えてみましょう。
見えている世界を知るためには
「相手が見ている世界」を知るためには、言葉にしてもらうしかありません。もちろん、レゴなどモノで表現してもらうことも可能でしょう。それでも、最後は言葉を使わなければなりません。
このように思考を言葉にすることを思考発話といいます。
言葉にして始めて、相手の見ている世界が分かるのです。
ここで何が重要なのかというと、
相手の見ている世界
と
自分が見ている世界
のギャップを認識できるということです。
つまり、「あ、こんな風に考えて、こういう選択をしたんだ」という理解が出来、それに基づいて「こういうすれば良いよ」とアドバイスができますね。
思考発話を利用した教え方
今のは教える側が学習者の方へ寄り添った方法ですね。
逆に教える側が「より良い考え方を」伝え、学習者がエキスパートの考え方を学ぶことも出来ます。
これを一般的に思考発話教授法と呼びます。
つまり、教える側( 知っている人<ヴィゴツキー風に言えばMore Knowledgeable Others>)がモデルとなるんですね。
一昔前だと、なかなか「目を揃える」のが難しかったのですが、今だとテクノロジーの力を使えばすぐできます。
例えばスポーツであったら、その選手がプレーした映像を見せ、何を考えていたのか話してもらい、指導者(又は上手い選手)の視点や思考とどのように異なるか示すことが出来ます。
授業であったら、ロイロノートなど生徒の解答を集約したシートを黒板に映すことにより、
なぜ正解に至らなかったのか
その思考プロセスを修正する出来ますね。
大切なのは
「答えが合っているか間違っているか」
よりも
「どのように考えればよいのか」
という思考プロセスを指摘することです。
ここに巷で有名なキャロル・ドゥエッグ先生の『マインドセット』が登場します。
「正解か不正解か」
よりも
「正しい考えを身につけることが出来できるか」
という成長プロセスに焦点が大切なのです。
【国語や英語での読解への応用はこちら】
Effective Practices for Developing Reading Comprehension
目を揃えるとは伴走すること
以上から、風間監督のいう
「目を揃える」
とは学習科学でいうと、小さな視点、「相手が見ている世界」を知るということになります。
教える側(教員・上司・指導者)の自分が考えは相手にも伝わるはずだ
という思い込みをまず捨て、教えられる側(学習者・選手)の視点に寄り添う、それが重要なんですね。
「目を揃える」とは伴走し、共に成長する気持ちなんですね。