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「鴻池朋子 ちゅうがえり」展 @アーティゾン美術館

牛の革をつなげたキャンバスに描かれた巨大な絵、天井から吊るされたたくさんの毛皮たち、首まで雪に埋まりながら叫ぶ映像… 正直言えば、少しキツイとも感じるくらい、とても ”生(なま)” な展示でした。

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東京駅ちかくにあるアーティゾン美術館で開催中の「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」展。現代アーティスト・鴻池朋子さんの個展です。

鴻池さんの描く絵は、色に溢れていて 優しいタッチである一方、そのモチーフは”可愛らしい動物”ばかりではなく、美しいけれどグロテスクさもあり 見ていると気持ちがざわざわしてしまいます。

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特に今回驚いたのは、天井からたくさんの毛皮が吊るされた“森の小径”に入った時。そこを通り抜けようと、顔に触りそうなほどに近づいた時、遠くから見たときとは全く違う「生き物だったもの」を感じて少しぞわっとするような感覚に襲われました。

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人に”害獣”として処分されるこれらの動物たちは 自分とは”遠くにある自然”という距離感を感じつつ、その一方で、入り口付近に描かれたたくさんの竜巻のドローイングは 人がどうすることもできない 身近に起こりうる自然災害を想起させるようで。自然と人の双方向の支配・被支配の構造と、距離感を考えてしまいます。

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それに対して、鴻池さん自身が雪に埋まる映像や、山や池を自画像に見立てた作品など、鴻池さん自身はそれらの自然ととても近い位置にいて、それらとの”共存”のような可能性も示唆されているようにも感じました。

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それにしても、展示室の中心にある円形の大襖絵ではスロープを登りながら、風景のようなインスタレーション作品を見ていき、頂上から滑り台で降りてはぐるりと自分を取り囲む襖絵を眺めたりと…スケールの大きな展示です。

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そういえば今回の展示は、"石橋財団コレクションと現代美術家の共演”がテーマの「ジャム・セッション」というシリーズ展示の第一回ながら、”鴻池さん自身が何度見てもコレクションから作品を選べなくて、キュレーターさんが3枚を選んだ” というエピソードもなんだか良いなと思いました。
(会場では、クールベやシスレーの作品など、コレクション作品3点も展示されています。)

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アーティゾン美術館では、現在、「鴻池朋子 ちゅうがえり」展「ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示帰国展」、それからコレクション展の「新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」「印象派の女性画家たち」と、趣の異なる4つの展示をたっぷり見ることができます。
日時指定予約制なので 並ばず入ってゆったり見られるのも贅沢。(しかも4展示合わせて入館料は1,100円です。)ぜひ、ゆったりと時間をとって行ってみてください。

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【展覧会概要】ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり

石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり

会場:アーティゾン美術館
会期:2020年6月23日[火] - 10月25日[日]
時間 : 10:00 - 18:00
休館日 : 月曜日 (8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
入館料 ウェブ予約チケット:一般1,100円、大学生・専門学校生・高校生 無料 要予約


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