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見ること と 存在すること。 ー「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」 @東京都現代美術館

 今年の展覧会の中でも特に楽しみにしていた展覧会がついにスタートしました。

 オラファー・エリアソン ときに川は橋となる @東京都現代美術館

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■ 「サステナブル」の軸でつながる作品群

 オラファー・エリアソンといえば… 私が真っ先にイメージしてしまうのは、光を使った数々の幻想的なインスタレーションだったのですが。

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《太陽の中心への探査》(2017)

 世界で送電網が整備されていない地域の⼈々にクリーンな照明を届ける《リトルサン》や 難民が金銭を得る補助となる《グリーンライト》のようなプロジェクトを行っていたり、今回の展示でも複数展示されていたアイスランドの氷河などの自然をモチーフにした作品に、さらには、スタジオでのレシピ本まで出していたり。

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《溶ける氷河のシリーズ》(2019)

 それに、今回の展示で初めて見た過去のプロジェクトでは、川を色素で緑色に変化させたり、街中に水を溢れさせたり、壮大ないたずらのような作品まで。

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スタジオ・オラファー・エリアソンでの多数のリサーチと実験を展示する《サステナビリティの研究室》

 今までも、それから展示を見た直後にも、多岐に渡っていてうまく繋がっていなかった活動が偏ることなく紹介されていくのを見ながら、徐々に「サステナブル」という1本のラインでつながって見えてくるような展示でした。なんとなく、サステナブルというとエネルギーや環境ばかりに気を向けてしまうけれど、「持続可能」というのは、それだけではないんだなと。

■ 定型のない作品から、"見る”と”存在する”を考える

 それでもやはり、今回の展覧会で展開された数々のインスタレーションは、どれもシンプルな素材と仕組みから驚きのある空間が作り出されていて、特に2フロア吹き抜けの展示室を使った新作の《ときに川は橋となる》は、ライトと水を使ったシンプルな仕組みかつモノクロの世界ながら圧巻でした。

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《ときに川は橋となる》 (2020)

 このほかにも、例えば、分光を利用して強烈な色の対比見せてくれる《人間を超えたレゾネーター》や、構造色をつかった透過光と反射光を利用して、光の3原色から様々な色の景色を作り出す《おそれてる?》など、色が光であることをシンプルかつ鮮やかに見せてくれるようです。

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《人間を超えたレゾネーター》(2019)

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《おそれてる?》(2004)

 そして、人がライトの前にたつことで複数の色の影が浮かび上がる《あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること》もまた、白色光が様々な色の光の集合でできていることをつかいながら、一方で、そこに人が存在しないと作品にならないのがユニークです。

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《あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること》 

 そこで 人と作品の関係に気持ちが向きます。人工的に虹を作る作品で、形も持たなければ、見る人によっても見る時間によっても同じものは見えない作品《ビューティ》の解説には、「光があなたの目に入らない限り虹はどこにもない」というオラファー・エリアソンの言葉が記述されていました。それは、ただ物理的な意味だけでなく、見る人がいて それを認識することで作品が存在する、といった関係を表しているようにも感じます。

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《ビューティ》(1993)

 そういえば、ほとんどの作品が 色=光の波長 という物理的な原理の作品のなか、《あなたのオレンジ色の残像が現れる》という作品だけは、色順応を利用して、視覚による作用で色を見せていました。展示で見た直後にはあまり印象的ではなかったのだけど、先ほどの言葉から考えていくと、見る主体がいなければ存在しない作品を、究極までシンプルに極めた作品のようにも感じられてきます。

 写真でも見られるけれど、生で見ることで さらに”見る”ことの意味を感じられたこれらのインスタレーション。見られることができて、本当に良かったと思える展示でした。

 2020年9月27日(日)までです。

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【展覧会概要】  オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

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会期:2020年6月9日(火)~9月27日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 地下2F
時間:10:00〜18:00
休館日:月曜日(ただし5月4日(月)は開館)、5月7日(木)
観覧料:一般 1,400円、大学生・専門学校生・65 歳以上 1,000円、中高生 500円、小学生以下 無料


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