自然エネルギーを活用したZEB設計の基礎知識
はじめに
みなさん、こんにちは。プランテックの環境設計担当のY.Oです。
前回は「ZEBと自然エネルギー利用の基礎知識」というタイトルで、建築設計関係者以外の方にもわかりやすい内容をご紹介いたしましたが、今回は設計に関わる方に対するZEB設計の基礎知識のお話をさせて頂きます。
地球温暖化への対応として、建物のエネルギー消費量を削減し、再生可能エネルギーを活用する「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の設計がますます重要視されています。
ZEBとは、年間のエネルギー消費を最小限に抑え、必要なエネルギーを太陽光などの再生可能エネルギーで補う建物のことです。
本稿では、プランテックが設計したテラル本社棟におけるZEB設計の基礎知識と、自然エネルギーを活用した具体的な手法について、さらにわかりやすく解説します。
1. ZEB設計の基本概念
テラル株式会社の本社事務所棟は、創業100周年事業の一環として、再生可能エネルギーを最大限に活用し、ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を目指して設計しました。
この建物は、年間のエネルギー消費量を大幅に削減し、環境に配慮した持続可能な設計を特徴としています。
ZEBを実現するためには、まず建物の性能を高める「パッシブ手法」が重要です。
具体的には、外壁や屋根の断熱性能を向上させることで、冷暖房に必要なエネルギーを削減します。
次に、空調設備や照明のエネルギー効率を向上させる「アクティブ手法」を導入します。
これにより、建物全体のエネルギー消費を最小限に抑えることができます。
2. テラル本社棟で採用された具体的な手法
テラル本社棟では、パッシブ手法とアクティブ手法を組み合わせ、自然エネルギーを最大限に活用しています。具体的には、次のような技術が採用されています。
断熱強化: 南面と東面にアルミパネルと断熱材を組み合わせ、断熱性能を強化。
Low-E複層ガラス: 日射熱を効果的に反射し、室内の温度を一定に保つ。
井水熱と太陽熱を積極活用する設備計画 : 揚水井戸から地下水を汲み上げ「プレート式熱交換器」を介して熱源水と熱交換させ還水井戸に戻しています。熱源水は「水熱源ヒートポンプエアコン」、「天井放射空調パネル」、「アクティブチルドビーム」及び「マルチモードロータ空調機」で利用。
天井放射空調システム: 地下水熱を利用した熱源なしの冷房で、空気を介さずに室内を均一な温度に保つ。
染み出し空調システム: 床下から室内を冷暖房し、足元から快適な環境を提供。
マルチモードローター空調機: 夏はデシカントモードで除湿(太陽熱利用)、冬は全熱交換モードで熱交換を行う。
3. ZEB要素技術の効果と評価
これらの技術により、テラル本社棟では基準ビルと比較してエネルギー消費量を78%削減し、「Nearly ZEB」の基準を満たしています。この取り組みにより、建物のエネルギー効率が大幅に向上し、持続可能な運用が可能となっています。
4. 実運用でのさらなる省エネルギー効果
運用段階においても、リアルタイムでエネルギー消費を監視し、運転計画を柔軟に調整することで、さらなる省エネルギーを実現しています。冬季には太陽熱を利用して熱源水を温め、中間期には外気を積極的に取り入れることで空調機器の運転時間を短縮しました。その結果、エネルギー消費量は96.3%削減され、設計段階よりも高い省エネルギー効果が得られました。
5. 実績と今後の展望
この運用結果は、ZEBの可能性をさらに広げ、目標を超える省エネルギー効果を実現しています。
プランテックはみなさまと共に これからも持続可能な建築を実現し、効率的で快適な空間を提供するためZEB設計(新築も改修も)を進めてまいります。