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ほたるいしマジカルランド

"朝は白い。いつもそうだ。空だけでなく、目にうつるすべてのものが淡い。すれ違う人の顔も、遠くに見える建物も、すべての輪郭がぼやける"2021年文庫化の本書は大阪ほんま本大賞受賞、ひらかたパークをモデルにした従業員たちの人間模様。

個人的に大阪に縁がある事から手にとってみました。

さて、そんな本書は1度も取り壊されずに現存する遊園地では日本最古である『ひらかたパーク』に取材したうえで書かれた一冊で。架空の蛍石市にある『ほたるいしマジカルランド』という老舗遊園地を舞台に、月曜日から日曜日と、インフォメーションで働く『萩原紗英』から始まり(月曜日)大団円的にまとまる『すべての働くひと』(日曜日)まで、曜日ごとに様々な形で『ほたるいしマジカルランド』に関わる登場人物の内面や葛藤が描かれているのですが。

遊園地というハレの場を選びながら、エンタメ的な非日常の出来事が起こるわけでもなく、またいわゆる『お仕事小説』というわけでもなく。むしろ遊園地を後景に登場人物のそれぞれの生活を描いているのが新鮮でした。

あと、登場人物の中では一応、風間佑が遊園地の跡取り的な期待を背負ってる事や、ヒロイン?女優の木村幹との関係から主人公ぽいのですが。そこも深掘りせずにさらっと描写するのもかえって印象に残りました。

大阪、枚方パークに縁ある方はもちろん、短編的な人間模様小説としてオススメ。

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