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書記バートルビー/漂流船

"『もうしません』『それで、その理由は何だというんだね?』『あなたはその理由をご自分でおわかりにならないのですか』彼はボソッと答えました。"1856年発表の表題作含む本書は不可解な人物を通して社会に問いかける代表的中篇2作。

個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。

さて、そんな本書はビジネス街のど真ん中、ウォール街の法律事務所で雇われた寡黙な男にして、用事を言いつけると『そうしない方がいいと思います』と【一切を拒絶する】バートルビーの姿を描いた表題作、そして、南北戦争直前に発表された実際の奴隷船での反乱劇を下敷きに【多層的、ミステリアスな視点】で描かれた『漂流船(べニート・セレーノ)』の2作品が収録されているわけですが。

個人的には、著者の作品は代表作の『白鯨』しか読んでいなかったので、船員時代の体験が特に色濃い白鯨と違って全く反映されない表題作がまず新鮮で。バートルビーの何も行動していないようで【意志を貫く姿】に様々なことを考えたり。

また『漂流船』は多少まわりくどい感じもありますが、こちらも緊張感溢れる内容で。登場人物それぞれの立場で考えれば、また【様々な読み方ができる】のだろうな。と思いました。

再評価され、今やアメリカを代表する文学者の代表的中編として。また、しばしば引用される作品として表題作もオススメ。

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