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倒錯のロンド

"小説のタイトルだけは、すでに決まっていた。『幻の女』いい名前だろう。ウィリアム・アイリッシュに同名の有名なサスペンス小説があるが、ぼくも当然この古典的作品を意識している。"1989年発刊の本書は、"叙述トリックの名手"と呼ばれた著者による盗作を巡る駆け引きを描いたミステリ。

個人的には叙述ミステリにはまっている事からオススメされて手にとりました。

さて、そんな本書は"受賞まちがいなし"と自負した推理小説新人賞応募作が盗まれた!?と山本安雄が驚くところから始まり、日記形式風に山本安雄、そして作品を盗んだと思われる白鳥翔との"原作者"と"盗作者"との駆け引きが描かれていくわけですが。

率直に言って、登場する人物たちについては山本安雄の親友の城戸明以外はあまり魅力的ではなく、また仮に"受賞まちがいなし"としても、いざ【実際に受賞する前から】作品賞金の1000万円を手に出来ることを前提にして、殺人を含む様々な思惑が動いていくのは些か乱暴ではないかと思いました。

ただ一方で、そもそも人物ありき。というよりプロットありきの様に感じる本書。幾重にも【仕掛けられた叙述トリックに関しては流石】というか、やっぱりあっさり引っかかるわけで。最後に著者自身の名前へつなげる終わり方も含めて、人によってはハマる、好き嫌いが分かれる作品ではないかとも思いました。

とにかく叙述トリック好きな方へ。また優れたプロットの作品が好きな人にもオススメ。

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