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私の嫌いな高浜町

高浜町生まれのわたしは高浜町が嫌いだ。

何がどう嫌いなのかと問われると「まあ、何となく…」なのだけど、あえて嫌いなところを挙げるとすれば

とにかく不便である
とにかく詮索される
とにかく車社会である

田舎社会特有のアレ、あの感じが嫌なのだ。
とは言っても、〇〇しなきゃ村八分に〜みたいな閉鎖的な陰湿さは無いし、お隣の家まで〇百メートル〜みたいなドのつく田舎でもない、中途半端なところがまたわたしをイラつかせるのだ。

かにちゃんはUターン組である。
10年以上の都会暮らしを経験したものの、紆余曲折あって地元へ戻る羽目になってしまった。出来る事ならこのまま都会に住んでいたい…逆ホームシックな気待ちを抱えながら久しぶりに電車で帰省した当時、実家最寄りの若狭高浜駅を一歩出て驚いた。

「えっ こんなに潮の香りしてたっけ!?」

海まで繋がる直線通りから、潮風が流れてきたのだ。海沿いの町に訪れたワクワク感と懐かしさが全身を包むこの何とも言えない心地よさ。
生まれてから30余年目の衝撃である。
翌日にはすっかり鼻が慣れ、潮の香りを町なかで意識する事はなくなってしまったけれど、この経験によって初めて、地元にいると当たり前すぎて気付かない"田舎なりの良さ"がある事にうっかり気付いてしまった。

…ちょっと、改めて、地元の良さについて考えてみようと思う。
高浜が嫌いな私からみた、高浜の良いところって何だろう?

まずは海。
若狭和田ビーチには白い砂浜が広がり浜茶屋が賑わい、春夏になるとエメラルドグリーンに輝く日本海は、ただ眺めているだけでもテンション爆上がりの写真映えネタである。
城山公園には明鏡洞がある。子供の頃はよく公園内の探検をして、岩場でウニの抜け殻を拾って宝物にした。
夏になると仕事帰りに「ちょっと一杯」みたいなノリで海水浴に行く事もある。人の少なくなった夕方の海でちょこっと泳いで帰れるのが近隣住民ならではの海の楽しみ方かもしれない。

そして山。
若狭側からだと三角錐に見えることから「若狭富士」の呼び名で知られる青葉山は、夕焼けとセットでの眺めが特に最高なのである。少し登ってハーバルビレッジから町を見渡せば、若狭湾の美しさがまたぐっと心をつかんでくれる。

欠かせないのが食。
とにかく魚が安くて新鮮。近所のスーパーには魚がずらりと並び、お店の人に声をかければ切り身や刺身にしてもらえる。おいしい。
甘味なら源六餅。茶色のやつがいちばんおいしい。冬場はでっちようかん。おいしい。

意外なところで言えば、交通面。
電車は1時間に1本、終電が21時台という田舎仕様だが、高浜町のお隣は京都府舞鶴市。なんとかして舞鶴まで行けば関西方面へのアクセス手段が広がる。
さらに若狭和田駅からは高速バスで大阪梅田・なんばまでストレートで行くことができる。往復6,000円程度の交通費で高浜〜大阪間の日帰り旅行も可能なのである。

海と山の魅力がコンパクトに揃う程よい田舎町、高浜…

もしかして…都会の人達からみたらこれって憧れのロケーションなんじゃないの?
くっそー、なんか悔しいな。嫌いなはずなのにな。

もしかしたらこの嫌悪感は、外から来た人の目線になれば解消できるのかもしれない。
もし都会の人に生まれ変わったら、観光客としてこの町を訪れてみたいなぁ…なんて考えたりしながら、今も嫌いな地元で暮らしている高浜町民のわたしなのである。

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