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世界観を一緒に作る「D2C」

【概要】

主にリテール業界でトレンドとなっている「D2C」。本書内でも口酸っぱく言われているのは"唯の中抜きではない"ということ。ざっくりまとめると、「①直接顧客と繋がりながら、②一緒にブランドを構築すること」とする。

⓪大前提

全てのモノがコモディティ化する現代において、プロダクトの性能だけで市場をリードすることは難しい。プロダクトに違いがないからこそ、Amazonなどのプラットフォーマーが「欲しい商品を簡単に」手に入れることが出来る仕組みを作って天下を取っている。そんな中D2Cは、プロダクトによる差別化ではなく、世界観・ストーリーによる差別化を図るようになってきているという。分かりやすい例がiphoneで、機能面で言えばもはや他のデバイスと大差なくなってきている中でも独自性を維持できているのは、ジョブスが描いた「世界観」であり、これがブランドとなっている。

①直接顧客と繋がる

プラットフォーマーや代理店を挟まない理由は、単に"中抜き"ではなく、顧客と直接繋がることを目的としているからで、SNSなど情報発信メディアが容易に用意できるからこそ"挟む必要がなくなった"とも言える。ここで重要なのが「顧客との距離を縮める」ことが目的であって、挟まないのはその目的達成のために都合が良いからに過ぎない。D2Cは結果であって、直販すればなんでもOKというわけではない(「D2C」という題名が誤解を与える気がする…)。直接つながる理由は「近い距離で顧客と一緒に世界観を作り上げるため」。顧客の可視化・即時フィードバックがデジタルにより可能になったからこそ、顧客一人一人に自身の言葉で自身の世界観を直接語りかけ、プロダクトの良し悪しを即座に判断・改善出来る。D2Cはテック企業であると語る理由はここで、各顧客データを活用したデザイン思考的な事業展開が重要である。

②一緒にブランドを構築する

「コモディティ化・透明性の向上・ブランドへの不信感」とった背景から、ピラミッド型のビジネスは時代遅れになりつつある。本書で「顧客を社員化する」と表現しているように、企業が掲げる世界観に共感した顧客から口コミが拡散され、プロダクトの改善につながるフィードバックももらう(顧客とSlackで繋がっていつでも会話可能、みたいな企業もあるそう)。今まで芸能人が担ってきた広告塔が、ユーザー一人一人にシフトしてきている。こうした「社員化顧客」を作るために大切な要素がいくつか語られていたが、まとめると「優しいデジタル」と言える。売って終わりのビジネスではなく、売ってから利用してもらって社員化してもらうまでをゴールとした場合、継続的な接触が必要になる。その接点・分析としてデジタルを活用し、ユーザーにとって快適な体験を提供する優しさが求められる。言うなれば企業はまさに「法"人"」となり、買ってくれた"人"に優しくする。そうしてその"人"を好きになってもらう、という文字にしてみると当たり前の行為を、デジタルを活用して実践することが、顧客の社員化に繋がるわけだ。

【まとめ】

①や②といった、今までのビジネスの考え方のアップデートが必要なため、ファネル的フレームワークやカスタマージャーニーマップも円形に更新する必要があったりと、まだ語れそうな要素はあるが、何より一番大切なことは「世界観」である。

世界観を売るとはつまり経験であり、モノ消費からコト消費へのシフトと言われてきた事象のひとつの着地点であると思う。個々人・芸能・政治など、全ての事柄において「距離感」が近くなってきているからこそ、企業と個人の距離感も近くなったからこそ、「こいつの目指す世界、いいね!」と思ってもらえる世界観を描けるかが、何より大切になってきているのだろう。

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