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【中編】PIVOTがつくる、クリエイターと組織の新しい関係

「コンテンツの力で、経済と人を動かす」をビジョンに掲げ、サービスを開発中の新会社PIVOT。

ここに集まるメンバーには、どんな思いがあるのか。

これから何を生み出そうとしているのか。

活字チームのメンバーが、新時代のクリエイターと組織について語った。

スピーカーは、PIVOT代表取締役CEO・佐々木紀彦、エグゼクティブ・ライターの宮本恵理子、エグゼクティブ・エディターの上田真緒。鼎談は9月上旬にオンラインで実施。文中敬称略。

人物インタビューが素晴らしい

上田 私が「NewsPicks」の連載で頼りにしていたプロフェッショナル・ライターの一人が宮本さんです。2015年からお仕事をご一緒しましたね。

宮本 そうでした。

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宮本恵理子/PIVOT エグゼクティブ・ライター
日経ホーム出版社(現・日経BP)で「日経WOMAN」などの編集記者、新雑誌開発を経て、フリーランスライターとして独立。筑波大学国際総合学類卒業 主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。インタビュー集『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』『新しい子育て』のほか、経営者の著作を中心にブックライティング実績多数。インタビュー&ライティング講座で講師を務め、2021年秋に書籍化予定。家族のための本づくり「家族製本」主宰。家では博多弁。

上田 宮本さんは人物ものを描くのがとにかくうまい。「うまい」なんて私が言うのは甚だ僭越なのですが、原稿をいただくたびに本当に実感します。

第一読者として、胸が熱くなったり、ほろりときたり、拳を握りしめたりと、感情を揺さぶられる。リズムや表現が心地よくて、ストーリーの展開が面白く、読み手を飽きさせない

しかも、原稿を書くスピードが超人的に速い。7話約1万4000字の原稿を1日~2日で執筆されると聞いてビックリしました。

宮本 一気に書かないと原稿のリズムが崩れちゃうんですよ。

本当はもう少しじっくりと一つの原稿に向き合いたいところですが、私は人に話を聞くのが好きなので日中はどうしてもインタビューや打ち合わせに多くの時間を費やすことになる。結果、執筆には集中して短時間で取り組むクセがついてしまいました。

上田 宮本さんは人柄も素晴らしい。インタビューの相手に対してフレンドリーに聞きながらもリスペクトしているのが伝わるのでしょうね。相手は安心して本音や取っておきのエピソードを話してくれます。

10月27日に宮本さんの新刊『行列のできるインタビュアーの聞く技術 相手の心をほぐすヒント88』が発売されますが、まさにタイトル通りです。取材相手からの信頼が絶大。

宮本 ありがとうございます。我流でやってきたことをまとめた本ですが、大それたタイトルになりまして、自分でも震えています(笑)。

2年前から続けているインタビュー講座にはライター以外に一般企業の広報担当者や「部下の話を聞けるようになりたい」という会社員の方の参加もあって、「聞く技術」へのニーズは高まっているなと感じていたので、皆さんのお役に立てたらうれしいなと。

上田さんをはじめとして、私に人物インタビューの仕事の機会を多くくださる方がいたからこそ、生まれた本です。

上田 私は宮本さんのインタビューを毎回横で見て、聞いて、楽しんでいるだけです。「丸投げしている」とも言いますが。

宮本 いえいえ、上田さんは常に冷静に俯瞰し、バランスを取る編集力がある。鳥の目も虫の目も持てる稀有な編集者ではないですか。絶対に完遂するプロフェッショナリズムが圧倒的。一方で、BTS沼にハマるなど普通のミーハー感覚があるのも魅力です。

上田 仕事に疲れたら、BTSの新しい動画をYouTubeで探して見るのが息抜きで……。

それはともかく、PIVOTの立ち上げにあたり佐々木さんのビジョンを聞いて、これは宮本さんの力が絶対に必要だなと思いました。

宮本さんには私にはない人当たりの良さがある、発信力、行動力、人脈力がある。取材相手とClubhouseで話したり、インタビュー講座を開いていたり、家族に取材してプライベートな本をつくる「家族製本」を主宰されていたりと、軽やかに多彩な活動をされています。

しかもハードワークのはずなのに、いつも余裕があるように見えます。

宮本 余裕は決してなく、迷惑をかけまくっているのが現実ですが、自分の人生の一部を懸けていいと思える仕事しかやっていないので、疲弊しないんだと思います。

上田 宮本さんは小学生のお子さんがいるワーキングマザーなので、時間の切り替えも上手ですよね。

以前、電車の中で偶然お見かけしたとき、席に座るやいなやノートパソコンを開いて、グッと集中して何か書かれていました。

宮本 目撃されていましたか(笑)。きっと締め切り間際だったんだと思います。

企画の方向性が似ていて腕もいい

上田 佐々木さんの宮本さん評はどうですか。

佐々木 私は宮本さんとお仕事をご一緒したことはほとんどないので、そういう肌感覚があるわけではないのですが、それでも宮本さんとぜひご一緒したいなと思ったのは、2つ理由があります。

宮本 はい。

佐々木 1つは誰よりもクオリティに厳しく、口が悪い上田さんが褒める方である、と。

上田 「口が悪い」は余計です。

佐々木 めちゃくちゃ厳しい上田さんが褒めるのであれば間違いない、というのが1つ。

もう1つは、私が面白いなと思った連載や、いいなと思ったインタビュー記事を見ると、宮本さんのお名前があることが非常に多かったんです。「これも宮本さん、あれも宮本さん」という感じで、宮本さんは何人いるんだろうと(笑)。一人の読者として宮本さんの作品のファンだったんです。

つまり、宮本さんと企画の方向性が似ていて、腕も本当にいい方だと。

この2つの理由で、宮本さんにぜひ来ていただきたいと思ったわけです。

宮本 ありがとうございます。

福岡出身である

佐々木 本質的じゃないところで3つ目を挙げると、宮本さんが私と同じ福岡出身であることが大きかったですね。

宮本 それ、おっしゃってましたね。すき焼きランチを食べながらお声かけいただいたときも。

佐々木 そうです。しかも、宮本さんの母校の修猷館高校は私の憧れだったんですよ。修猷館って自由じゃないですか。私が行っていた小倉高校は軍隊みたいな校風だったんです。

宮本 ああ、「九州あるある」ですね。

佐々木 福岡には修猷館という名門の公立で、すごく自由で素晴らしい高校があると憧れていたんです。

宮本 たしかに素晴らしい環境でした。黒田藩に由来する歴史、質実剛健、文武両道、自主性を重んじる校風で。進学校なのに異様に夏の運動会に情熱を注いで、それが理由で浪人する生徒が一定数いて、私もその一人でしたね(笑)。

あの時期にあの高校にいて良かったなと思います。

佐々木 修猷館出身の著名な方もたくさんいらっしゃって、私と相性の合う方が過去に多かった記憶もありました。人間は、高校時代のカルチャーにかなり影響を受けますからね。

やっぱり実力だけではなく、相性が大事じゃないですか。それもプラスに働いて、ぜひお仕事をお願いしたいなと思いました。

PIVOTは「大人のスタートアップ」

上田 宮本さんは佐々木さんをこれまでどのようにご覧になっていましたか。

宮本 佐々木さんは同世代の編集者で、活字を中心とした媒体を牽引している方の中で業界や社会の未来までを含めて視点を高く物事を考えている。結果としてご自身のキャリアをPIVOTしている方だなという印象はもともとありました。これは竹下さんもそうです。

佐々木さんと深くご一緒できるという展開は予想していませんでしたが、またとないチャンスをいただけたので、もうぜひ!という気持ちでした。

始めてみると、ほんとに「大人のスタートアップ」だなと感じます。

PIVOTには活字だけでなく、映像など各分野のプロフェッショナルが集まって、それぞれがそれぞれの場で経験を積んで「もっとこうしたい、こうあるべきだ」と思っていた使命感を持ち寄って、PIVOTというステージで新しいものをつくりあげようという熱が生まれている。そういう環境をつくれているところが素晴らしいと思います。

新しい働き方にチャレンジしたい

上田 宮本さんは数多くのメディアでお仕事をされていているので、これまでの活動も続けながら、PIVOTに参画するという働き方を選択されました。その思いを詳しく教えていただけますか。

宮本 私は自分の中に、湧き出る泉のように何かを持っているという自信は全くないんです。だから、常に外からインプットしていないとアウトプットできないんですね。そのアウトプット先はできるだけ多様であったほうがいい。

これまでも組織から誘いはあったのですが、自分を市場に完全に開いた状態でフリーランスとして活動をすることが一番の成長になると考えていたんです。

でもPIVOTにはそれを上回る環境があると直感しました。同時に、新しい働き方にもチャレンジしたい。

PIVOTの創業メンバーには元NewsPicksのパワー人材が多く、私が深めてきたネットワークとは重なっていない部分も多い。だからこその価値を出したいと思っています。

また、そのようなメンバー構成を決めた佐々木さんのビジョンに強く共感しました。

個人のクリエイターが中心の時代になる

上田 そんな宮本さんの新しい働き方を佐々木さんはどうとらえていますか。

佐々木 とてもいいと思います。これからは個人のクリエイターが中心の時代がやって来ます。クリエイター側が自分の持っている能力や時間をどこに配分するのかを、一番クリエイティビティを発揮できる形で決めればいい

ハリウッドと同じですよね。ハリウッドもプロデューサーは自分の50%をこの映画に使い、50%をほかの映画に使うというように、個人のクリエイターが基準になって配分を決めている。

今までのメディアやクリエイターは会社基準でしたが、それはもう古い。クリエイター基準でいろんな会社と付き合うのが新しい。

クリエイターが自分の能力や時間のポートフォリオを組むときに、より大きい割合を割いてもらえるように努力するのは会社側です。そうでないと、優秀なクリエイターほど会社を去っていってしまう。クリエイターの価値は、今後ますます上がりますから。

「クリエイターの方々にうまく会社を利用していただく」ぐらいの考え方でないと、クリエイティビティ・ファーストの会社になれないですね。

宮本 世の中の流れとしても、個人と組織との関係性が大きくPIVOTしようとしている。そんなときだからこそ、フリーランスの私がPIVOTでいい働きをしたら、いいモデルになれるんじゃないかと、自分で自分の今後のキャリアを実験のようにとらえています。

実際、フリーランスでありながらPIVOTに参画することを公表してから、周囲の方々が「その働き方いいね、新しいね」と好意的に見てくれています。

PIVOTは「令和のときわ荘」を目指す

佐々木 そうですよね。今回、宮本さんとPIVOTの「エグゼクティブ・ライター」という肩書についてもかなり議論しました。

フリーランス同様、ライターという職業の方々の価値が正当に認められているとは私も思っていません。正当に認められるには、象徴となる人が出てこなければいけない。そのためには、正当な対価を得られる形にしていきたいですね。

今のクリエイターに対する対価は、必ずしも市場価値で決まっているわけではありません。独占や寡占ができる有利な立場にいるところが強いという、過去から続く構造による影響が大きい。

たとえば、テレビ局は限られた電波を独占し、出版社は限られた流通を握っているからこそ、新規参入がしにくかった。だから強い立場で交渉ができたわけです。

ただし、その構図がデジタル化や、グローバル化によって変わろうとしています。

クリエイターと企業の関係をフェアな形に変えていくことが大事で、その流れを我々はつくりたい。その象徴の一つが宮本さんなんです。

宮本 対価以上に成長の実感が大切です。この数カ月間、「PIVOT」のリリース前の濃密な日々を皆さんと過ごしながら感じているのは、PIVOTに集まってきている方々は本当にプロフェッショナルで勉強熱心なので、そのポジティブな空気の中で自分が成長できるという気持ちが持てること。

佐々木 それはうれしいですね。最も大事なのは、クリエイティビティが発揮できてワクワクできる仕事ができるかどうか。その舞台を提供できる会社にならないといけない。そのうえで報酬も良ければ完璧ですよね。

宮本 完璧ですね。

佐々木 PIVOTにいると刺激を受けて、どんどん発想が湧き、人脈が広がっていく。そういう会社になれるかどうかが我々PIVOTの一番の勝負です。

宮本 個々のクリエイターが成長したら、会社としても稼げて、また個々のクリエイターにフィードバックがあるという好循環をつくれたら最高ですね。

佐々木 昔、漫画家がたくさん集まっていたアパートって何でしたっけ?

上田 ときわ荘です。

佐々木 これもたとえがいいかわからないですが。

宮本 また急に昭和感(笑)。PIVOTは「令和のときわ荘」になるんですね。

佐々木 まさに。経済コンテンツ版の「令和のときわ荘」を目指しましょう!


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