図_成長

「マネジメントする力」を育てる

先日、新しく自分の配下になったプロジェクトチームのリーダーと面談を行った。
下半期の個人の目標設定を行う時期なのだが、彼が作った目標の下書きを見たところ、いかにもやっつけで設定していたような内容になっていたので、「ひょっとして目標設定の意味がわかっていないのでは?」と思って尋ねてみたらやっぱりわかっていなかった。
そこで表題のような図を書いて、目標設定をする意味、つまり、単に業務をやり切ればよいだけじゃなく、そこには「個人としての成長」が必要であることを説明した。
説明しながら、「そもそも『成長』って何だろう?」「何をもって『成長した』と言えるのか?」、説明を受けたことはなかったな、と思った。
では、なぜ自分は今説明しているのか?何をもって「成長するということ」と定義しているのか?

これを機に、この1~2年学んだきたこと、考えたことを少しまとめてみることにした。


「マネジメントができる」とはどういう状態か?

自分が所属している部署は、アウトソーシング事業本部といって、企業や行政からまるっと仕事を請け負い、業務を効率的に運用することでコストカットし、利ざやを稼ぐというモデルのビジネスで生業を立てている。
この事業は拡大分野で、特に行政の業務がどんどんアウトソースされるようになってきており、プロジェクトを運営できる人材の募集と育成が急務になっている。
このような背景もあり、今年度から、これまで業務の一スタッフとして働いていた人をどんどんプロジェクトリーダーに登用しようとしているが、人の成長が経営意向のスピードに合わせて早くなるわけではない。
また、表面上のリーダー業務ができるのと、働く人のケアまで含めた本当のリーダー業務ができるのとは大きな違いがあるが、多くの企業がそうであるようにマネジメントなんてしたこともない人にマネジメントができるようにするノウハウなんて持ち合わせていないわけで、完全に現場任せになった。

自分は、これはチャンスとばかりに、この1~2年学んできたマネジメント能力を上げる手法が、自分だけではなく人が身に着けられる普遍的な手法になり得るかを実践することとした。

「マネジメントができる」とは、いったいどういう状態だろうか?

自分は、マネジメントの目的を、「自律して動くチームを運営すること」とおいた。

では、「自律して動くチーム」には何の要素が必要だろうか?

これは、研究の結果、
○「外的コントロールを用いない」という前提のもと、
①チームが理念に基づいて運営されていること
②構成メンバー個人が自律していること
の2つの要素が不可欠であることがわかった。

○外的コントロールを用いない

人を動かす方法には2種類ある。
外発的に(本人の意思に関わらず)指示をして動いてもらう方法と、本人が内発的動機で動く環境をつくる方法だ。
日本の組織の多くはまだ外発的な指示系統によって運営されていることが多いし、一般企業ならばそれで形上は運営できる。
一般企業では「その分の給与を払っているのだから会社の指示に従え」という理屈も成り立つが、自分は小さな非営利組織の運営に携わってきて、それが通じない世界を経験した。報酬で十分に支払えない分、共感と内発的動機で動いてもらう他ない。
現在自分は民間企業に籍を置いているが、公共事業運営の部門のため、非営利組織の運営と同じで、指示ではなく依頼が業務遂行の基本となる。
とはいえ、どんなに注意深く避けていても、仕事を実行しようとすると、外的コントロールで人を動かそうとしてしまいがちだ。その方が、その場で出したい結果を出すには圧倒的に早い。
しかし、この方法は、出している結果と同じくらいかそれ以上に、組織の雰囲気や相手の判断経験の侵害という点でマイナス面をはらんでおり、自分はこの方法を用いないという前提で組織運営をすることと決めた。

では、どうやってそれを実現していくか。


「自律したチームと個人」はどうやったら育つのか?

「自律したチーム」を目指している職場は多いと思う。ほとんどの組織は自律していることを目指していると思うが、なかなか実現しない。
実現が難しいのは、作ろうとしても、「自律した状態」を他律的につくることはできないからだ。あくまでその組織の構成メンバーが自発的に目指さない限りその状態にはならない。

自分は昨年度、全国各地の「人を活かす組織」を取材する機会に恵まれたが、そこで訪問した組織は、社員一人ひとりが自律していた。
そして、各個人はそれぞれの思いに基づいて行動しているにも関わらず、彼らの判断基準には共通する芯のようなものが確かに見てとれた。
この芯が理念だ。

自律する組織には、「理念の運用」と「メンバー個人が自律していること」の2つの条件が必須となる。

ここで言う「理念の運用」とは、経営理念を掲げたり暗記したりすることではなく、判断基準のチェックリストとして運用することに意味がある。
自分が運営するチームでは、プロジェクトのミッションとは別に、チーム運営のための理念をつくり、何か課題があったときの判断の基準として用いている。

また、「個人の自律」は、内発的な意欲によって活動していることと、チームや自分に発生する障害(Problem)を自分で取り扱えるようになることと定義した。

この2つを実現する手段として、自分が運営するチームでは、メンタリング(mentoring)という手法を使って、気づきを体験し、自己改善していく仕組みを導入した。

次回は、この実践の様子を紹介していきたいと思う。




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