見出し画像

縮小社会における自治の実現の一片

富山県南砺市利賀村(とがむら)に移住した友人から、「利賀地域でも小規模多機能自治に挑戦しているんだけど、なかなか進まないからちょっと手伝いに来て!」というヘルプ要請があり、「元気づくり部会」のワークショップでファシリテーションをすることになった。

10年間個人的に通っている村に、フリーだったころに学んでいた「小規模多機能自治」づくりを手伝いに行くことになるとは、本当にどこで縁がつながるのかわからないものだ。
小規模多機能自治とは(総務省ページ

5年ほど前から、当初から関わっている 川北 秀人さんにくっついて、小規模多機能自治発祥の地である島根県雲南市に行き、何度か現場を見て回った。
人口減とそれにともなう行政の縮小が進むまちで、地域をどう維持していくのか、今後の日本の最先端を垣間見ることができた。

その後、小規模多機能自治の取組みは全国に広がっていき、縁ある南砺市でも今年から取り組まれているのだが、自分には心配があった。

雲南市で、この取り組みを試行錯誤しながら実現してきた、行政や地域自主組織の方々の話を聞くことができたが、その背景や浸透するまでの過程が飛ばされて、形からこの概念が入ってきたとき、現場でちゃんと受容されるのだろうかと。

その心配はやはり当たってしまっていて、老若男女集まった20人くらいのメンバーと話していて、地域づくり協議会が立ち上がったことは知っているが、何をしていいかわからず、混乱している状態が見て取れた。

会合には、子育て世代から引退世代まで、多年代の人が集まっていた。今日が何の会合なのかわからず参加している人も多い。

始めに「小規模多機能自治」の説明をした後、3チームに分かれて、ワークショップを行った。

自分のチームには、若者が多い。アイデアがあっても実現できない背景として、担い手不足の現状や、若者の意見の反映の場がないといった課題が浮き彫りとなった。


「小規模多機能自治」の意義

本来、小規模多機能自治とは、人口も予算も縮小する地域において暮らしやすい地域社会を維持するために、公共機能を適正な形で実現していこうとするものだ。
この実現には、人口が多い時に合わせて設計されていた地域活動を見直し、本当に必要なことを住民自身が決定するという過程が必要不可欠になるが、それが実施されないまま、導入だけ始まってしまったように見受けられる。

利賀地域の住民の「小規模多機能自治」の受け止め方は、
・利賀地域から行政機能が撤退する
・新たに地域づくり協議会という組織ができたので、その活動をしなければならない
という、「負担の増加」と受け止められてしまっているため、本来の意義が理解されていない状況であった。

ワークショップでは、若者を中心に、既存の組織の役割が多く、時間が割けないこと、意思決定の場に参加できないことに対する不満が聞かれた。

小規模多機能自治の要諦は、住民自身の自主的な公共活動への参加なので、その貴重な担い手である若者の参加意欲を妨げている構造は問題がある。
利賀地域では、地域づくり協議会を既存の組織の集合体として運営しており、具体的な活動は今も既存の組織単位でなされている。
組織横断で、必要な活動と組織の見直しを行う必要がある。

利賀地域は、南砺市内でも特に人口減少が著しい地域である。そこでは、活動できる人、その人が持つ時間が最も貴重な資源でもある。人口が減っているので、必要な活動を維持するには、一人あたりの持ち時間を増やすしかない。
惰性で続けている活動に時間を割かれてしまうと、本当に必要なことに時間を割けない。そして何が必要かを住民自身で決めることが、小規模多機能自治の第一歩であると考える。

「何をやりたいか」を議論する前に、現状の見直しをする勇気を持ち、今一度本来の小規模多機能自治の導入を行う必要があると思った。

この元気づくり部会は、他の部会と違ってやる仕事がまだ固まっていない状態なので、逆にその状態を活かして、この部会から本来の小規模多機能自治を再スタートできればよいと思った。

微力ながら自分も関わっていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?