高知県梼原町の地域力

3月初旬に、過疎対策室らしい業務で、高知県梼原町に出張。
約10年ぶりに訪れた梼原町は変わらずに過疎の山間の賑やかな集落であった。
雲の上ホテル、雲の上図書館、まちの駅「ゆすはら」、梼原町役場など、
人口3200人ほどの町に、隈研吾の建築が5つもある。
隈研吾がバブル崩壊時に、都会でのプロジェクトが軒並みキャンセルになっていく中で、訪問した梼原の木造建築に感銘を受けたことが始まりらしいが、森林率90%を超える梼原に溶け込みつつ、都会的なデザインをもたらしている。
雲の上、というネーミングも面白い。標高1400mをこえ、南国土佐にありながら冬には雪が積もる。仙人が住んでいると言っても過言ではない。
そういえば、仲良くしている町の職員もまるで仙人のようだ。

今回の出張では、そのような梼原の雰囲気を感じながら、目的は、集落活動センター。そのうち、四万川地区の集落活動センターを訪問した。
四万川地区は、梼原町を構成する6つの区(旧村)のうちの一つで、13の集落で構成される。人口466人、高齢化率は56.2%、高齢化率の高い集落は高齢化率100%という厳しい状況。
最近の10年間で人口は100人減少しており、減少率は約2割。そんな状況下で、平成25年に、法改正による規制強化で、地域のガソリンスタンドが閉鎖されることになり、危機感を持ち、
「地域住民の暮らしを守る」という強い思いから、
「集落活動センター事業」の導入を決定し、設立委員17人でセンターを設置したとのこと。
驚くのはその後のスピードと資力で、翌年には、集落活動センターを母体として株式会社を設立し、県3,000万円、町3,000万円、さらに区として1,300万円を支出して、食料品販売機能も備えるガソリンスタンドをオープン。
地域住民から出資も募ったことなどにより、ガソリンスタンドの利用は、個人経営の時の約3倍になり、経営もなんとかなっているとのこと。
更には、地域で生産組合でおこなっていた「雉(キジ)」の生産が、高齢化により続けられないということになったため、それも集落活動センターが引き継ぐこととし、地元の建設業の社長などの力も得て、梼原町の特産品のキジの生産も担っている。
そして、単に生産を担うだけでなく、外貨を稼ぐため、県の産業補助に申請をし、合計で約1億円の資金を得て、鶏舎や加工施設を建設したとのこと。
もはや集落活動センターというよりは、地域スタートアップ。凄まじい活動。

大変成果もあり、素晴らしい活動であるが、その要点としては、
①地域の資源を活用し、それを守ろうとして活動している点
・ガソリンスタンドもキジも、元々地域にあった資源をみんなで守っていこうというスタンスであり、地域においても受け入れられている。
②県や町などの適切なサポート体制。
・県においては地域支援員という常駐の職員がさまざまなサポートをしており、何かあれば相談ができる体制ができていることが頼もしい。他の地域にはない支援。
・梼原町もガソリンスタンドの設置の際には県と同額の3,000万円の補助をし、集落支援員を活用することで人材のサポートもしており、地域の活動の強力なバックアップをおこなっている。
③地域で事業を担える人材がいること
・代表の方から非常に分かりやすいプレゼンを受けたが、(副町長のサポートはあったらしいが)資料は自分で作っているとのこと。バイタリティとプレゼン力の高さが際立っていた。ただ、それは特異な人がいたというよりは、活躍の場があったという方が合っているような気がする。多くの人が活躍できる環境があれば、地域の力が最大限に発揮されるのではないかと思う。

大変有意義な出張であり、自然と人材が育成されていく環境づくりの重要性を感じた。

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