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第244号『ナプキンにサイン出来ますか?』

先日あるテレビ番組の企画で“どこまで怒らずに温厚にファンに接することが出来るか?”というものをやってまして。

もちろんドッキリ企画なのですが芸人さんに対してカフェで店員さんが「サインもらってもいいですか!?」って言ってきて紙ナプキンを差し出された時にどういう態度を取るかという内容でした。

このテレビ番組を見た人と雑談してて

「松山さんだったらどうします?」

って聞かれて

「え、喜んでサインしますよ、ナプキンに」

と即答しました。

「なんなら過去にありますよ、ナプキンにサインしたこと」

と更に言ったら驚かれていました。

「ええ!?絶対にブチ切れるタイプだと思ってました」

って言われましたが全然そんなこと無いです。

そりゃもちろん色紙を持って来られるのが一番普通で嬉しいですがそんなの持ち歩いてる人まずいませんからね。

大学ノートにサインすることは普通に多いですし、レシートの裏にサインしたことだってありますし、Tシャツだろうとニンテンドー3DSだろうと下敷きだろうと帽子だろうとリュックだろうと何にだってサインさせていただいてきました。

(あ、いやニンテンドー3DS本体にサインしてくれって言われた時は「ええーウチはニンテンドー3DS用のゲームソフト作ったこと無いのに!?」とは思いました、が、その時も「ご本人がそれでいいのなら」と喜んでサインを入れさせていただきました。任天堂さん、なんかごめんなさい)

なんでしょう?

テレビ番組でも私にこの話を振ってきた人も「キミいくらなんでもナプキンは失礼だろう!?」って怒ってくることを期待されていたのかもしれませんが。

私にはあまりその感情は無いですね。

要望をいただいて喜んでいただけるのであればどんな物にもサインさせていただきますね。

プライド云々ということよりもシンプルに私自身が“売れない時代”のことを忘れていないからですね。

具体的に言うとサイバーコネクトが出来て5年間くらいの『テイルコンチェルト』『サイレントボマー』『.hack』などのゲームソフトを手掛けていた時期のことです。

当たり前ですが誰もサイバーコネクトのことも私のことも知りませんし認識もされていないのでサインどころか作ってるゲームタイトルだって誰も知りませんでした。

当時は当時なりに私自身も行動して努力して知っていただく為に動き回っていましたが全く広がることも手応えも無かったですね。

サイバーコネクトツーという会社名と松山洋という名前や顔を認識していただけるようになったのは『.hack』がヒットした後で『NARUTO-ナルト-』や『ジョジョの奇妙な冒険』を手掛けて露出するようになってからです。

私はそうなる前の全くの無名だった時代のことを忘れることが出来ません。

恐らく一生忘れないです。

誰も自分たちに興味が無い。

一生懸命声を大きく出しても誰も少しも振り向いてくれない。

それは自分たちがそれだけ魅力的な作品を生み出せていなかったこととそれを伝える努力を根本的に怠っていたことが原因です。

『.hack』『NARUTO-ナルト-』『ジョジョの奇妙な冒険』がヒットしたことで一気に露出が広がって社名も顔も名前も覚えていただけるようになって初めて声をかけられるようになって「サインください」と言っていただけるようになりました。

「俺のサインなんか貰って嬉しい人っているのか?」

こう考えた時期も一瞬ありましたがすぐに

「違う、声をかけてサインして喜んでいただけるファンがいるのならそれに全力で応えよう、一切に手抜きはしない」

と、そう考えるようになりました。

イベント会場を歩く時は常にサイン用のマジックをポケットに入れて行くようになりました。

自分自身にとっては毎回のことかもしれませんがお客様によっては二度と会えない方かもしれません。

そう思うとその時に出来る最大限のことをやれるようにしよう、と心に固く誓いました。

カフェに紙ナプキンしか無い時は店員さんに「メモ用紙いただけますか?」って尋ねますし、近くにコンビニが無いかを確認してもしあった時には私がノートを買いに走ってそれにサインを入れさせていただいています。

もちろん本当にコンビニも無くてカフェにメモ用紙も無い場合にはナプキンにだってサインを喜んでさせていただきます。

誰だってそうかもしれませんが。

人から喜んでいただけるということは本当に嬉しいことです。

まさに有難き幸せというやつです。

その気持ちをずっと忘れずに生きていきたいですね。

というか、私はナプキンとかでブチ切れたりなんかしませんよ?

もっと他のことでは怒ったりすることもありますが、求めていただけることに勝る喜びは無いですね。

*****

さて後半部分は業界関係者に向けた【サインに関する基礎知識と注意点】をお届けしようと思います。

私自身この業界で仕事するようになるまではまるで知らなかったこともたくさんありますので業界関係者に向けてお話ししたいと思います。

興味がある方はぜひご覧ください。

業界におけるサインに関する基礎知識と注意点

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