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別れ

別れとは、悲しいものである。だけど本当に辛いのは、別れを“苦しい”と感じた時。

人は生きていく中で、付き合う人は変わってゆく。
子供の時、毎日毎日暗くなるまでサッカーを一緒にしていたあの子も
学生時代、一緒に図書館に篭ってひぃひぃ言いながら机に齧り付いたあの子も
朝まで飲んだくれて、カラオケにも行って、喉をガラガラにしたあの子も、あの子も
自分という本の中に、二度と現れないであろうことはもうわかっている。よほど縁がなければ、いくらページをめくっても、顔を見ることも声を聴くことももはやないだろう。完全に、自分の過去となったということだ。
だからこそ、別れの時が来た時は今までありがとうと肩を抱き合い、未来への不安と憂いを思い出の涙で清めるのだ。そうすることで、人は前を向ける。自分を奮い立たせることができる。
思い出をきちんと思い出として、仕舞うべきところに仕舞うことができなければならない。
これなら、別れは悲しいもので済む。

本当に辛いのは、別れを苦しく思うこと。
キラキラしていた過去にしがみつこうとし、今と向き合うことを諦めたくなってしまうことが1番恐ろしい。思い出を思い出として整理できておらず、いつまでも胸に抱えて部屋の隅で丸くなっている。
過去に依存し、今の自分を見ることができず、未来を歩くのを恐れている。

過去はきちんと整理しなければならない。増えれば増えるほど空間はごちゃごちゃと散らかってわけがわからなくなってしまう。
だから、時々片付けてあげるのだ。片っ端から捨てるのではない。大事なものだけ少しずつ、いつでも引き出してこれるように、心の中にそっと仕舞い込む。それが“別れ”というやつだ。
そして、新しい仲間を求めて歩いていく。その仲間ともいつかは別れがくるかもしれないが、そうしたらまた新しい仲間を探す。
そうやって、人は人との関わり方を覚えて、本当に離したくない人に出会って、最終的には本当に本当に両手で抱えていたい人達と一緒に生きる。そんなものだろうと思う。

・・・

僕はというと、どちらかと言えば後者だ。これが間違いだったのかなと思う。
恐れずに新しい仲間を探しに行くべきだった。過去を思い出としてきちんと整理することができなかった。まだまだ続いていくものだと思ってしまった。
僕がしがみつこうとしていたもの達は、とっくに前を向いていた。僕だけが、きちんと別れることができていなかった。
僕は今、関わっていく人はどんどんと移り変わっていくものだということをヒシヒシと実感している。そして、それが全然悪いものではないことを知った。
むしろそうすることで、少しずつ整理してきた過去の関わりの中で、絶対に捨ててはいけないもの、時々引き出してこないといけないもの、まだまだ続いてくれているものが、より鮮明に見えるようになった気さえしてくる。

今ある繋がりを大切に。
過去を大切に。

僕はこれからも出会いと別れを繰り返すだろう。今これを読んでくれているあなたも、脱皮するかの如く繰り返すだろう。
無数にある人の道の中で、たまたま道が交わる奇跡をこれからも肌で感じながら、歩いてみたい。そしていずれくる別れの時に感謝を述べられるように。

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