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キク科の自我

夏の終わりころになると、至る所に黄色い花畑があらわれます。
春の初々しい黄色とはまた違った眩しさがあります。

その中でも特に目立つのがオオハンゴンソウ。
外来の植物ですが、その強い繁殖力から年々増えている印象があります。

セイタカアワダチソウも勢力を広げている外来キク科植物の一種。

オオハンゴンソウもセイタカアワダチソウも、アレロパシーがその繁殖力の要因になっているようです。

アレロパシーとは:植物が自己の生存を有利に展開するために、化学物質を使って他の植物の成長を抑制または促進したり、あるいは動物や微生物を防いだり引き寄せたりする作用のこと。他感作用。

この作用によって周りの植物の成長を阻害もしますが、やがては自らの成長をも阻害してしまい、農作物では連作障害につながる特性でもあります。


〈『植学啓原 3巻』(京都大学附属図書館所蔵)部分〉

キク科は、多数の小さな花が一つにまとまった頭状花を付ける特徴があります。
一つ一つの小花が雄しべと雌しべを持つ両性花で、5裂の筒状花とうじょうかまたは5枚が1枚に融合した舌状花ぜつじょうかになっています。
外側の小花から開花し、順に内側へと続き開いていきます。

その構成は種によっても特徴が分かれます。
アザミやゴボウ、ベニバナ、オケラなどの、筒状花だけで構成されるもの。
筒状花の花弁は主に縦軸方向に開いていて、油脂や精油を産生するという、火のエレメントの強さが見られます。

また、タンポポやニガナ、チコリ、ブタナなどの、舌状花だけで構成されもの。
舌状花の花弁は水平方向に広がり、葉や茎で乳汁を作るという、水のエレメントが強い傾向が見られます。

そして、ヒマワリ、シュンギク、オオハンゴンソウ、キクイモ、ノコンギク、コスモス、エキナセアなどの、中央の筒状花を舌状花が囲む構成になっているものがあります。
この構成は、水と火、縦軸と横軸が調和した形でまとまっていて、たくさんの花が一つに統合されているキク科の中でもより高い次元に統合されているような印象があります。

キク科は、もっとも進化した草本とされるそうですが、この統合力に象徴的にあらわれているところだと思います。

そしてその統合力は、私たち人間の、高い視座から情報を統べる力、人生に与えられたものを統合し意味を生きるということ、“高い自我”に共鳴するのだと。

また、アントロポゾフィーでは、自我(=火エレメント)は糖代謝に大きく関わるとされ、糖は自我の栄養となるのだそうです。
自我が健全に働いていないことで糖尿病になると考えます。

キクイモは他の草花の背丈を悠々と追い抜き、秋の深まる頃にその天辺てっぺんで花を咲かせます。
高くなった秋空へとぐーんとまっすぐに向かう、その姿は強い自我を感じますが、そこにはのびのびとしたしなやかさを感じます。
キクイモの根には血糖改善作用があるのですからなるほど納得です。

オオハンゴンソウやセイタカアワダチソウの根から放たれる強いアレロパシー作用が周りの植物の成長を阻害し、さらには自らの成長も妨げる自家中毒を起こしてしまうというのは、高い自我の表れとは言い難いと感じます。

これらの植物が勢力を広げている背景には、高い自我、健全な自立、人生の意図への統合を、私たちがどれだけ生きられているのかどうか、問われているものがあるのではないかと思います。

一見厄介なものを単に排除しようとするのではなく、常に真ん中の愛に統合し、共に生きていける私でありますように。

秋になると、深みのある紫色の花も目立ってきます。
キク科シオン属のものがよく見られますが、シオン属はラテン名ではAster(アスター)と言い、星を意味します。

また、コスモスは葉も茎も細く、地上的な要素を離れどこか宇宙的。
その名も、Cosmos=“秩序整然とした統一体としての宇宙”です。

キク科の花は、高い自我の視座、そしてそれを超えた宇宙からの眼差しを、地上に表してくれているように思われます。

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