見出し画像

ワーク花きりん インタビュー その2

インタビュー その1に引き続き・・・
試行錯誤を経て、新しい製品を生み出したワーク花きりんさんにこれからの展望をお聞きしました!

チャレンジ!牛一頭の革看板!

ワーク花きりん 鶴岡さん:そういえば、新聞ってお送りしていましたっけ?

PIPPO 森井:新聞ですか?

ワーク花きりん 鶴岡さん:1月号に本革の看板をオーダーメイドで受注して作ったことを紹介しています。本革の看板なんて、井手がいなかったら無理でしたよ。いつもなら「利用者さんができるかな?、自分ができるかな?」をベースに考えて、難しいご依頼は躊躇していました。でも受注したものを「できる」という前提で考えて、「どうやったらできるか」という思考にできる井手。プロだな、凄いと感心しました。

PIPPO 森井:難しい注文は避けるという判断基準は、できないことを増やしますね。

ワーク花きりん 鶴岡さん:新聞には最近の活動の紹介があり、子供向けのワークショップの記事と、下の方に「MOFCA(モフカ)様に革看板を納品」と書いてある、この写真を見てください。

画像3

PIPPO 森井:すごい!大きい看板!!

ワーク花きりん 鶴岡さん:すごいですよね。以前はこういう仕事を頂戴しても、「これは難しいんじゃないですか?」「もうちょっと簡単な仕事持ってきてくださいよー。」って現場からの声が想像できてお断りしていました。営業としては、魅力的なプレゼンができないと残念に感じていた部分です。正直、この看板も無理と思いましたが、持ち帰ったときに井手はできないとは言わないんです。現場での打ち合わせでも積極的な提案を色々と出して、工程についても丁寧に先方とすり合わせてをして、納品時にも革の手入れ方法をお伝して・・・先方に大変ご満足いただきました。こちらも満足度の高い仕事ができた、と誇らしく思っています。

PIPPO 森井:井手さん的には、むちゃぶりだよと感じましたか?

ワーク花きりん 井手さん:思いましたよ~。毎回思ってます。(笑)

一同:(笑)

ワーク花きりん 井さん:革看板どう作ろう?って、ネット検索しても画像が出ないんですよ。

PIPPO 森井:見たことないですもんね。

ワーク花きりん 井さん:こんな大きなサイズの物、ないですよね。

PIPPO 森井:サイズは?牛半身分ぐらい?え、1頭分革丸々なんですね!!

ワーク花きりん 井さん:私の友人が百貨店の内装のディスプレイを担当しているので、吊り下げる物の補強方法とか諸々教えてもらいました。

PIPPO 中村:今はどんな感じで使われているんですか?

ワーク花きりん 鶴岡さん:MOFCA(モフカ)っていう千代田区指定のよろず相談所があるんです。ここは制度に関係なく相談できる場所で、ご飯が食べられないお子さんや、シングルマザーの方とか色々な方が集まります。定期的にジャズライブとかお茶の教室とかワークショップをされています。そこに、この特大看板がかかってるんです。千代田区の区報には、この革の看板の前で撮った写真が採用されています。

PIPPO 森井:すご~い。

支援と技術、2つの引き出し

PIPPO 中村:井手さんが来てくださったあとの仕事の広がり、すごいですね。

ワーク花きりん 鶴岡さん:そうですね。ただ、これはさすがに無茶ぶりでしたね。革看板は大きな実績として最大限に活用させてもらって、これからが営業の仕事です。現場を混乱させないように、大きすぎる仕事は持ってこないと皆さんと約束しました (笑)

PIPPO 中村:支援の目線からそれぞれの利用者さんがどうすれば関われるか、という見直しをされた。そこで生まれたアイデアが技術的な難易度に幅を持たせること。結果、難しい注文も受けられるし、多くの人が関われるし。これまでの課題がずいぶん解決されましたね。

ワーク花きりん 土屋さん:作り方の引き出しを持っている人と、支援の切り出しを持ってる人が一緒に取り組んだからこそ、ですね。

PIPPO 中村:なるほど!素晴らしいですね。

ワーク花きりん 鶴岡さん:本当、大切なことです。前任者は本当に苦労していました。利用者がうまく作れなかったものを夜な夜な時間外に直していました。デザインを作るところから、支援まで前任者は全て担っていたんですよ。相当な苦労だったと思います。今回、それを切り離せたのは大きいです。

PIPPO 中村:このトレイは、蔵前のKONCENT(コンセント)さんでしか販売されていないのですか?

ワーク花きりん 井手さん:今後は自社での販売許可がでています。そうなると販売方法も色々考えることができますし、利益的にも大きい。

PIPPO 中村:是非、PIPPOでも取り扱わせてくださいね!これまでの製品の価格帯を比べるとお値頃感がありますね。

ワーク花きりん 井手さん:はい。お求めやすいので気軽に購入いただいています。それに、イベントにも向いています。

PIPPO 中村:色もポップだし、素敵ですね。プレゼントにも向いています。

画像2

PIPPO 森井:そういえば、色味とか、井手さんになられてから、雰囲気が変わりましたね?

ワーク花きりん 鶴岡さん:これまでの製品は渋い色目でしたもんね。

PIPPO 中村:雰囲気を変えよう、という意図があったのですか?

ワーク花きりん 井手さん:特に考えてないですね。

PIPPO 中村:女性の視点が入ったことが影響しているのでしょうか?これまでの製品は、男性向けとか、ビジネスシーンかなっていう印象です。

ワーク花きりん 鶴岡さん:ええ、だいぶ変わりましたね。マーケティング戦略は引き続き考えていこうと思いますが、とにかく利用者さんが置いていかれないようにしないことが大切です。なにより、チームでつくるレザー製品じゃないと。

「革やりたいな~」その嬉しい声に応えます

PIPPO 森井:事業所内での評判はいかがですか?

ワーク花きりん 鶴岡さん:理事会でも革製品は人気で、今回の製品も本当よくなったと評価してくれています。ワーク花きりんの頑張りがついに認知されました。

PIPPO 森井:製品にも自信が現れていますよ。

ワーク花きりん 鶴岡さん:一昨年行った子供向けのワークショップでは、キーホルダーに刻印を打つだけでしたが、今回のブレスレットはもう全然違うでしょ。街のワークショップから、プロのワークショップに成長できたなあって。区の反応も違います。

ワーク花きりん 土屋さん:ブレスレットは編むので、体験時間が長くなるんですよ。滞在中の待ち時間に製品を見てくれるんです。良いでしょ。

一同:なるほど~。

PIPPO 中村:これ、ワークショップで作ったとは思わないですよ。製品として購入したのかなって誰もが思う。毎日身に付けたいと思うし、満足度も高い。

ワーク花きりん 鶴岡さん:僕も奥さんにプレゼントしました。

PIPPO 森井:優しい!相変わらず!

PIPPO 中村:これからの展望はありますか?

ワーク花きりん 土屋さん:技術レベルの維持ですね。利用者さんの入れ替わりに対応できるようにしないと。できる人がいなくなっても、同じ製品を製作し続けないといけない。そのためには、多くの分野の作業ができるように。

PIPPO 中村:なるほど!

ワーク花きりん 土屋さん:例えば、縫う作業が一人しかできなくても、縫う以外の複数の作業を他の人ができればとりあえず回せる。

ワーク花きりん 井さん:そうですね。一人に頼りすぎると、来られなくなった時に滞ります。

PIPPO 中村:個人の能力に頼りすぎない製品展開だったり、フレキシブルな分業体制を構築していくってところでしょうか。

ワーク花きりん 土屋さん:そうですね。それは必要かな。そして、「これは私しかできないぞ」とか、「私がいればこれができる」という、技術的なところで利用者さんが強みを持って欲しいとも思います。

PIPPO 中村:励みになりますよね。革製品を作る技術って、多くの人が持っているわけではありませんし。

PIPPO 森井:分業体制になって、利用者の方のモチベーションに変化はありましたか?

ワーク花きりん 土屋さん:喜んでる人が増えました。

ワーク花きりん 井さん:「革やりたいな~」と言ってくれる。そういう意味で、今回のプロジェクトはありがたいですよね。

PIPPO 森井:良い効果が生まれましたね。

PIPPO 中村:利用者さんができること、やれることに応じた分業体制が構築できているってことですよね。

デザインセンスが光る福祉に

PIPPO 森井:今後、こういう物を作っていきたいなっていうものはありますか?

ワーク花きりん 井さん:私は以前製造をやっていたので、プロには勝てないと思っています。一方、福祉事業だからこそできる仕事があると思ってて。それが、こういうワークショップとかなのかなと、最近、手探りながら少し見えてきている感じです。

PIPPO 中村:いいですよね!ワークショップ。別のご施設では、コーヒー豆のピッキングの体験ワークショップをされています。体験では、商品が人の目にもつくし、仮にそこで爆発的に売れなくても、あぁいうことを通年やっているんだと周知されますよね。福祉ならではで、すごく良いと思います。

ワーク花きりん 井さん:ワークショップを通じて、誰でもできるんだって認識して、裾野が広がっていきますね。あと、気になるのはデザイン。
ポスター一枚でも、日本はデザインの多様性が低いです。
スウェーデンでは、福祉とデザインの関係がかなり密で、福祉の事業所の車がおしゃれとか、こだわりがある。日本ではありませんよね。

PIPPO 中村:そうですね、まだデザイン性の高さを感じることまだ少ないです。

ワーク花きりん 井さん:福祉事業にデザインの力が加わると、ぐんとおしゃれになってステータスが上がる。そういった付加価値をつけたいと考えています。具体的にどうするかはこれからです。

PIPPO 中村:でも、このブレスレットやお財布の端々にデザインセンスの高さが出ていますよ(新作のお財布を観ながら)。福祉だから購入したい、関わりたいという人は多いですが、それで良いのかという見方はあります。

ワーク花きりん 井さん:本当に好きで買ってるのかな、同情票なのかなと考えさせられる。実は私、福祉の製品で欲しいと思った物がなくて。そういうところを変えたい。

ワーク花きりん 土屋さん:買ってあげようかなじゃなくてね。

ワーク花きりん 井さん:欲しいと思って買ってほしい。一番の目標ですね。

ワーク花きりん 土屋さん:簡単に作れそうだけど、売ってない革製品。例えば、コンセントのカバーが革できてたらおしゃれじゃん。ちょっとした物で、これ革だったらいいなとか、そういう視点を持つようになりました。

PIPPO 森井:ここの空間でも、ティッシュボックスまで革!全部革にしてるんだ!って感激しました。革は、実は汎用性が高いですよね。強い布と考えればよいんですよね。

PIPPO 中村:今後の展望をまとめると、ワークショップの更なる展開と、デザイン性を高めた商品の開発、でしょうか。

ワーク花きりん 井さん:そうですね。方向性としては。

PIPPO 中村:随分、大きな方向転換ですよね。去年、一昨年と比べると。

ワーク花きりん 鶴岡さん:井出からの話は本当に嬉しくなる内容です。ダサい福祉を変えたい人は点在はしているので、うちが突破口となりたい。そういう福祉施設だったら通ってみたい人も必ずいると思うんですよ。井出の話、僕は良いと思います。

PIPPO 中村:お、新しい芽吹きを感じますよ~。

ワーク花きりん 鶴岡さん:そうですね。今後の展開に期待いただければ嬉しいです。

追記

ワーク花きりんさんはすごく活気があります。
「こんにちは~!」
と声をかけると皆さんが挨拶を返してくださり、和気あいあいと作業されています。いつ行っても元気!
皆さんの元気な裏には、様々な苦労が・・・
困難をチームワークで乗り越え、できた新商品がたくさんの方々の手に届きますように!
PIPPO 森井

Special Thanks:このインタビューページはボランティアの方々のご協力で制作されています。ご協力くださりありがとうございました。:T.Iさん、ytさん、 ysさん

PIPPOに興味を持ってくださりありがとうございます。PIPPOの運営費に使わせていただきます。