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ワーク花きりん インタビュー その1

ワーク花きりんのレザークラフト班が、プロのデザイナーと新しいプロジェクトを始動させたとのこと。早速、お話を伺いました!

ニュープロジェクト始動!Withアッシュコンセプト*

PIPPO森井:新しいプロジェクトを立ち上げたと伺い、早速参上しました。
本日は、よろしくお願いいたします。

PIPPO 森井:このトレイは、機械でガシャンて上からプレスされるのですか?

ワーク花きりん 土屋さん:貼り合わせは手作業なんですよ。革なので反っちゃうんですけど、反りを抑えるように、中に芯を入れて強度を増して固くしています。

PIPPO 森井:芯に貼り合わせているのですね!

ワーク花きりん 土屋さん:そうですね。一枚に芯を貼って、その上にボンドをつけて裏を張る。だから、三枚構造になっています。

ワーク花きりん 井手さん:貼り合わせから1日位置いて、それで形を整えてから最後に磨いて仕上げます。

PIPPO 森井:なるほど。機械でプシュっとプレスされていると思っていました。貼りを完成させるだけでもかなり時間がかかるのですね。

ワーク花きりん 井手さん:見た目以上にめちゃくちゃ難しいですよ。最初に綺麗に平らに貼り合わせないと、あとあと支障が出る。

PIPPO 森井:後から端を削ったりはしないのですか?

ワーク花きりん 井手さん:削り取るのが一般的ですが、今回、*アッシュコンセプトのデザイナーさんが敢えて「カクカクしたものを作りたい」というお話でしたので、あまり磨かないです。ですので、綺麗に貼り合わせないと。実は、貼り合わせを綺麗にできる人が1人しかいないので、来られた時には、貼って貼って!!となります。まだ課題はありますが、売り上げが出てきているので嬉しいですね。

*アッシュコンセプトは、自社ブランドの企画・販売や、モノづくりをする企業・産地のデザインコンサルティングを手掛ける会社。
  https://h-concept.jp/

ワーク花きりん 土屋さん:注文数がかなり多いんですよ~。

PIPPO 森井:納品は追いついていますか?

ワーク花きりん 井手さん:アッシュコンセプトさんと密に連絡を取りあっています。在庫の状況を逐一ご連絡して、在庫分の範囲内で受注して頂いております。この前、ガッと受注があったので、今は在庫がほとんどなくなっています。

PIPPO 中村:購入者さんはどのような方ですか?一般の方?

ワーク花きりん 井手さん:一般の方ですね。KONCENT(コンセント)っていう蔵前にあるショップに置かせていただいているので、基本は一般の方になります。

ワーク花きりん 鶴岡さん:カフェや雑貨屋さんとか、いろんなところに置かれていると聞いています。

ワーク花きりん 土屋さん:お店のお釣りを返すトレイとかに使っていただいています。

PIPPO 中村:なるほど~。

ワーク花きりん 井手さん:他には、ペンを置いたり、眼鏡を置いたり、アクセサリーを置いたりして、アッシュコンセプトさんのHPに飾らせていただいています。


作業所がOne teamでできるモノづくりの仕組みを考えてみた

PIPPO 森井:これまでレザークラフトブランド【フォリオロッソ】独自で始められて、ポーチやIDケースなどを作成されていました。

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新しいプロジェクトを立ち上げたきっかけを教えていただけますか?
これまでの製品の製造などになにか困難があったのですか?

ワーク花きりん 井手さん:一年位前から前任者と話していたことですが、利用者さんの中には縫うことが苦手な方がいらっしゃいました。
縫い・漉きなど初心者には難易度高めの作業があり、レザー作りに参加できる人数が限られてしまっていました。
そうすると制作ができる人とできない人に分かれてしまうという課題がありました。
何とか皆で一緒に物作りができればと考え、今、土屋と一緒に試しているのが制作工程の二極化です。

PIPPO 森井:作業工程の二極化?

ワーク花きりん 井手さん:はい。個々の利用者さんができる作業に応じて、制作過程や作る製品を2つに分けるという意味です。
少しマニアックな話ですが、革は表皮と床革(とこがわ)に分けられます。一般的に製品になるのは表皮です。床革は強度がなく、通常は破棄されます。ですが、床革は強度がない分、手縫いが上手くできない人でも扱いやすいという利点があります。製品によっては、表が綺麗に縫えていれば成り立つものがありますので、床革を商品の裏に使用することで、手縫いが苦手な方も商品制作に参画できるという訳です。例えば、コースターが該当します。

PIPPO 森井:その方法だと手縫いがちょっと苦手という方も、一緒にモノづくりができますね。

ワーク花きりん 井手さん:そうです。他に、このような編みのブレスレットは、強い力が使えないけど磨きはできるという方は作れます。

PIPPO 森井:拝見してもいいですか?

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ワーク花きりん 井手さん:ブレスレットは、以前、子供向けのワークショップで取り上げていて、商品に広げた形です。
一方、長い間縫いを経験して、高い技術を持たれている利用者さんには、財布やバックに軽く入れるようなものを任せている状況です。
このように試行錯誤していた中で、アッシュコンセプトさんとコラボ革製品を作成しようというお話があり、トレイの制作に至っています。


PIPPO 中村:今回の製品のトレイも求められる制作技術の難易度がとても高いと感じたのですが、いかがですか?

ワーク花きりん 井手さん:私は、福祉の業界に入る前は、革製品を制作する仕事をしていました。専門にやっている者からみれば、正直、あまり高い技術が求められているとは感じていませんね。

PIPPO 中村:なるほど。凄く凝った作りではなくシンプルな製品ではありますね。

ワーク花きりん 井手さん:いわゆる標準的な革の製品の作り方なので、超高いレベルが求められるというわけではありません。
前任者が取り扱う製品をうまくバランスをとって選択したなと感心します。利用者さんができる範囲で、且つ、一般的な製品を。
例えばポーチは袋縫いなので、ひっくり返すと縫い目が見えないですからね。

PIPPO 中村:見えませんね。

ワーク花きりん 井手さん:ここに来たときには袋縫いの製品が多くて驚きましたが、作る人のことを考えて前任者が提案したんですよね。

PIPPO 中村:なるほど。ということは、今回の製品は、元々作られている製品と難易度が違うのではなく、組み合わせる工程や使う素材を工夫することで、制作に必要な技術の難易度の幅を広げ、より多くの方が1つの製品のモノづくりに関われるような仕組みを作ったという感じですか?

ワーク花きりん 井手さん:そのような考え方ですね。

ワーク花きりん 土屋さん:一人の人が完成まで作り上げるのではなく、多くの人が携わった流れ作業ができるんです。例えば、ボンドを塗るだけの人、貼り合わせるだけの人、と別々になります。

PIPPO 中村:そうですね。

ワーク花きりん 土屋さん:もし、一人の人が完成まで作るとなると、在庫がないですよってなると1人が頑張らなきゃいけない。一人の負担が大きくなります。

ワーク花きりん 井手さん:そこが大きいですよね~。

PIPPO 中村:精神的な負担が大きいですよね。一人にどすんと。

ワーク花きりん 土屋さん:分業の利点は大きいです。例えば、今日は、井手さんがいないから、利用者さんにはこれだけやっといてもらおうとか柔軟な対応ができる。

PIPPO 中村:なるほど。その時々の状況に応じて、着手できる所から進めることができますね。ところで、新しいプロジェクトが始まりましたが、元々のラインの製造は継続されるんですか?

ワーク花きりん 井手さん:はい、継続します。

ワーク花きりん 鶴岡さん:無くそうかと考えたんですが、最初に携わった二人の愛着が凄くて、せっかくここまでやったのでもったいないということで残すことになりました。

PIPPO 中村:とうことは、今回お伺いした分業体制を導入したことで、元々の製品の生産が継続でき、なおかつ、これまで製品づくりに参加できなかった利用者さんは新しい製品づくりでは活躍できるということですね。

ワーク花きりん 鶴岡さん:そうなります。

PIPPO 中村:元々のライン、終わっちゃうのかと思いましたー。良かったー(笑)

ワーク花きりん 鶴岡さん:すみません(笑)

この難しさ、次へのステップと考えて


ワーク花きりん 土屋さん:注文スピードが少し緩くなればいいかな・・。最初57というすごい数の注文が来たので。

PIPPO 中村:どの製品ですか?

ワーク花きりん 土屋さん:トレイです。ごそっとなくなっちゃう。

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PIPPO 中村:すごいですね。

ワーク花きりん 鶴岡さん: 11月に出したばっかりなんですよ。ですが、これから注文スピードが落ちて、注文が止まる状況があり得ると思うんです。新しい企画のお声がかかるか、かからないかは、まさに今の頑張り次第です。現状では、嬉しいことに予想を上回る注文をいただて、次の企画のお話も期待できそうです。その点は素直に嬉しい。製作面の感想でいうと、当初は皆が制作に携われるような、簡単で見栄えが良い製品って考えていましたが・・。

PIPPO 中村:ちょっと違いましたね。

ワーク花きりん 鶴岡さん:そうそう。実は現場では試行錯誤です。デザイナーさんと何回もやりとりをしてやっとできた形です。本当はもう少し簡単にできないかなと。

PIPPO 中村:ぐっと技術難易度を下げたものと伺っていましたが(笑)

ワーク花きりん 鶴岡さん:そうです。ぴたりと正確に綺麗に革を貼り合わせる必要がある、って把握できてなくて。

PIPPO 中村:確かに、デザイナーさんが意図している直線的で角を残したフォルムはカッコよくて素敵だなと思うんですけど、実現するのは大変ですね。

ワーク花きりん 鶴岡さん:意外と難しかったですね。

PIPPO 中村:でも、それに見合っただけの売り上げや人気はあるっていうことですよね!

ワーク花きりん 鶴岡さん:もう少しですね。頑張っていただければと思います。

ワーク花きりん 土屋さん:営業の方が、売れるものは売りますよと言ってくれるので頼もしいです。

ワーク花きりん 井手さん:すごい親身になって話を聞いてくれますし。

ワーク花きりん 土屋さん:置いてあるだけだったら売れないもんね。

ワーク花きりん 井手さん:説明会やお店の展示会に出向いたときも、しっかり話を聞いてくれます。利用者さんが実際いかれたときも、自分が作った物がどんな風に販売されているのかのご本人の目で見れて、担当の方から話を聞けたと言っていました。本当にありがたいですね。

PIPPO 森井:こちらの施設で作っていると伝えて販売されていますか?

ワーク花きりん 鶴岡さん:はい。オープンです。

ワーク花きりん 井手さん:元々、アッシュコンセプトさんは福祉事業所とデザインの力を融合させるというテーマを持たれているので。パッケージの裏にワーク花きりんという名前が入っています。

ワーク花きりん 鶴岡さん:ブランディング戦略コンサルタントを提供されていて、障害者の低工賃問題の解決がコンセプトの一つです。

PIPPO 中村:この明確なコンセプトによって、営業さんが力を入れて活動してくださっているという面もあるのでしょうか。

ワーク花きりん 鶴岡さん:森井さんはequalto(イクォルト)*ご存じですよね。

* equalto(イクォルト)は、アクセンチュア株式会社、アッシュコンセプト株式会社、NPO法人が立ち上げた障がい者のものづくりを応援する社会貢献活動から生まれたブランド。
https://www.equalto.or.jp/

PIPPO 森井:はい。存じています。他の作業所さんも一緒にお仕事をされたと伺いましたが、要求される技術力が高くて、ついていくのが難しかったそうです。

ワーク花きりん 鶴岡さん:そうなんですね。

PIPPO 森井:利用者の方の負担が大きくなっちゃって、という話されていました。ワーク花きりんさんは、皆さんの連携プレーで体制を維持できるような環境を構築されたのですね!

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続きは、インタビューその2で!


Special Thanks:このインタビューページはボランティアの方々のご協力で制作されています。ご協力くださりありがとうございました。:T.Iさん、ytさん、 ysさん

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