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洗顔 雨上がりの朝 春よりは一回り大きい自転車で 少年が走っていく 初めてのカーディガンを…
菫 鋭い歯の緑が重なり あいまから鋼色の茎が直立する 枯れた井戸の底 光が降り注ぐかぎり花…
ディーゼル モーニングサービスの忙しさも一服し、私は窓の外をみた。朝からの細い雨はまだ降…
脱走 春に一人暮らしの医師が亡くなった。 医師は庭で柚子と蝋梅と草花を…
透明な翅子供たちが、自分たちと同じく、あるいはそれ以上に、町を徘徊する老人の存在に気がつ…
路地 つぎはぎ舗装 の路地に水道 工事で新しい …
遠い鐘 ある冬の朝のこと。よく晴れて空気が澄んでいた。玄関横の狭い一角で育てている薔薇から花を切り取ろうとしていると、向こうから黒いコートをしっかりと手で押さえて歩いてくる小柄な老婦人の姿が目に入った。ご近所の鈴木さんである。少しうつむいて、一心に歩いておられる。剪定鋏を宙に止め鈴木さんが顔を上げられたらご挨拶を、と思った。 「こんにちは」 「あ どうも、お寒いことでございますねえ」 笑顔でなんども頷かれる。いつものゆっくりとしたとても丁寧な言葉づかいに、こちらの言葉と
朝の匂いのする手紙 その日は土曜日。私の仕事は休みで、父が旅行に出てから三日が過ぎ…
火花 朝顔 白い服の老女は…
こうつと、こうつと 1 暑い。とにかく暑い。 どうもこの家のものは、猫は暑さに強いと思…
目次月見草辻子 春の點 こうつと、こうつと 老眼鏡 火花 蝉の羽色 朝…