潜入！！驚異の部屋！！まぼろし博覧会！！！

いつも通りのある日のこと
君は突然立ち上がり言った。

伊豆のめちゃくちゃ怪しい博物館行かね？

やだよ

2月某日、私は友人達と伊豆旅行に出かけた。
美味い刺身丼を喰らい熱い温泉に浸かる。
素晴らしい。
繰り返す日常の中で膿の様に溜まっていく鬱屈した感情を霧散させるにこれ以上のリフレッシュ方法はあるまい。
伊豆旅行に胸躍らせ友人の車に乗り込み連れて行かれた先は、

まぼろし博覧会

完全に騙された。
なんだ。なんだここは。何が起きた。

パプリカの悪夢みたいな場所が眼前に広がる。俺が何をしたって言うんだ。まだ夢から覚めてないのだろうか？？？？

日本の風物詩
恐竜と桜。
古くは鎌倉時代の武士達も冬の寒さを乗り越え逞しく咲き誇る桜と大型肉食恐竜の見物を雅に楽しんだという。ちなみに自分は初めて見たしおそらくこれからも此処以外で見る事が無い。助けてくれ。

美少女神社の前を通り館内へと向かう。
御神体とはできるだけ目を合わせない様にした。既に心が折れかけている。
確かにこんなベッピン見たことないし見たくなかった。自分は美少女なのでここを出ていく頃にはさらに美少女へと磨きがかかっているのだと思う。
無事に此処から出られたの話だが。

そしてついに館内へと足を踏み入れる。

は？パプリカ（2度目）？

完全に夢が犯されている。

DCミニの着用を気付かない内にしてしまったのだろうか？
此処は一体誰の夢だ？？
給食室で歴史の教科書とマリファナ焚いた男子小学生の夢の中だろうか？？
とにかく聖徳太子がデカい。デカ過ぎる。
おかしいだろ。無論、展示物のミスマッチによる脳の情報処理能力のオーバーヒート及び視覚情報自体への拒絶反応もあるのだろうが聖徳太子のサイズ感がおかし過ぎて足を踏み入れて2秒で膝をついた。

聖徳太子に笑わされたのはギャグ漫画日和以来だ。

こればかりは写真では伝わらない。
実際に対峙してみて欲しい。
完全に気が触れる。既に俺の負けだ。

その後も延々と高熱を出したときに見る悪夢の様な空間が続いていく。

デートスポットとして最高なのはまず間違いない。

ちんちん激推しエリア

中でも自分が圧倒されたのが夥しい数の動物の剥製が積み重なり形成された『サーカス』だ。
かなりの数の希少種が、生物学的に重要な資料としてではなく無秩序に、それでいてまるで秩序を持っているかの様に配置されたその様はまるで骸の山である。屍のサーカス。

今までにも大量の剥製の展示を見てきたがこれほどおどろおどろしく、禍々しく、それでいて可愛らしい展示を、そして此処ほど無音の迫力に圧倒されたことはない。
まさかとは思うがシロイワヤギの剥製すらあった様な気がする…

純粋にして正規の博物館の様な施設ですらそう簡単には手に入らない動物達の剥製。
学術的展示とは程遠いこの場所だがこの展示を見た瞬間、自分の頭に閃いたものがあった。

驚異の部屋だ

驚異の部屋とは、『博物館の祖』とも言えるもので、大航海時代に金持ち達が世界中の珍奇なものを集めて展示した、言うなれば見世物小屋の様なものだ。
金持ちの道楽は次第に生物学、考古学へと分化していき今現在の博物館の原型となった。

そう、この溢れ返らんばかりの混沌は紛うことなき驚異の部屋。

理路整然と博物学が一辺倒に均される前の、未知が総て人間の手によって既知へと塗り替えられ、神が死に幻獣が絶える前の、人々の未知への好奇心が生み出した驚異の部屋に他ならない。

まぼろし博覧会、単なるB級スポットでは無い。博物館の祖たる源流を色濃く継ぐ現代の驚異の部屋であり狂気の庭である。

この施設自体が最早芸術品だ。　
様々な多種多様なジャンルから集められた蒐集物がコラージュの様に切り貼られ渾沌を催し狂気を迸らせる。
近代芸術という言葉では片付けたくない世界と世界の癒合と乖離を脳味噌に叩きつけて現実との境をどろどろに溶かす猛毒と言えよう。

この施設を後にして思う。
まぼろし博覧会こそこの世界の縮図であると。普段無為に浪費していく日常の中に果たしてしっかりと噛み合っているものが一体いくつあるだろうか？
様々なもの、価値観、人間が同一の空間に存在するこの歪な世界に自分達は慣れてしまっているから畏れを抱く事も感動する事もない。

多種多様なものが犇めき合い相反しながらも調和するまぼろし博覧会とまるで歪なコラージュの様な自分の世界も実は似たものであると考えると不愉快な日常に戻るのも心なしか胸が躍るではないか。

そう、明日という日が何だか楽しそうな気分になった。

まぼろし博覧会。
現代の驚異の部屋。
ありふれた日常に疲れ気が触れたくなった時にはこの場所を訪れ正気を失ってみてはいかがだろうか。

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