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アットコスメ流の生活者分析

アットコスメと言えば、もはや知らない人は
いるまい。
1,300万人ものユーザーを抱える、化粧品の口コミ
サイトである。
20代~30代の女性の過半数が、月に一度は必ず
見ているサイトだという。

そのアットコスメを運営しているアイスタイルと
いう会社を若くして立ち上げた、吉松徹郎氏の
講演を聴く機会に恵まれた。
昨日から明日までの3日間、幕張メッセで開催中
の「化粧品開発展」に訪れたのである。

講演のテーマは、
「アットコスメがみる生活者のいま」。

いま現在の生活者に選ばれているモノ・コトを
読み解いた際の5つのトレンドを紹介してくれた。
順を追って紹介する。

トレンド1 主役は肌
その年の売れ筋、流行を「ベストコスメ」として
表彰するのが業界慣習として定着している。
よく「ベスコス」と略されるが、その顔ぶれから
ポイントメイクがグッと減り、ベースメイクや
スキンケアに振れている傾向があるという。

トレンド2 トーンアップ&濡れ艶
加工アプリで「盛る」のが、若い子たちには
常識、「映え」文化もすっかり定着している。
そうした背景で、肌をトーンアップして見せたり
濡れたような艶っぽさが出るようにしたり、と
いうのがトレンドだとのこと。
また、今年は「動画映え」を求める動きがより
加速するのでは?との観測も述べていた。

トレンド3 完璧でなくてよい
「抜け感」、「素肌感」、「オーガニック」が
キーワード。
頑張って完璧目指してます!みたいなノリが
かえってカッコ悪いという空気があるらしい。

トレンド4 らくちん&時短
「さぼり」たくはない。
しっかり効果は欲しいが、出来れば楽をしたい。
だってやることがいっぱいあって忙しいのよ、
私たちは! というニュアンスである。

トレンド5 ミニサイズ・トライアルサイズ
「#底見えコスメ」というハッシュタグが
流行っているらしいのだが、これは彼女らに
「きっちり使い切りたい」というインサイトが
あることを示唆している。
「SDG's ネイティブ」とでも言おうか。
ミニやトライアルを使い切って、気に入ったら
通常サイズへ、という律儀な行動をとる傾向
があるそうだ。


これらトレンドの背景にあるのが、以下の
4つのキモチだという。

キモチ1 頑張りすぎってかわいくない
「完璧でなくてよい」というトレンドのところ
で述べた通り。

キモチ2 ムダなものは持ちたくない
買ってダメならとっととメルカリで売る、
そんな消費行動が普通に行われているのは
周知のとおり。
こんまりさんの影響もあるのかしら。

キモチ3 アプリの中の私になりたい
アプリで盛るのが当たり前になると、
盛るビフォーとアフターを比較したときに
当然ビフォーを見て萎えることになる。
アフターの自分、アプリで加工した自分が
ずっと続くといいな、という気持ちになる
のも致し方ない。

キモチ4 選べない
今の時代、選択肢があまりに多すぎる。
もう、何を選んだら良いのか分からない!
意思決定というのは、実は相当な認知能力を
使うから、面倒になって「もうどうにでもなれ!」
となってしまう気持ちはよく分かる。
だから、AIに最適なものを選んでもらうような
レコメンドサービスが出て来て話題になったり
するのだ。


多数のユーザーによる口コミを日々リアルに
収集し、生活者のいまを鮮やかに切り取って
いるだけあって、大変参考になった。

最後に吉松さんが、いまの時代の
「ヒットのカギ」として挙げたのは、
「明確なペインを取り除く」ことである。

「ステキ」、「最高」でなくてよい。
「ペイン」を解決してくれる、
「自分を分かってくれている」と感じられる
ものが、消費者の態度を変えてくれる。

「モノ」を売る時代 が従来だとすると、
「ヒト」に売る時代 が今後。

化粧品というカテゴリーは、従来から
「夢を売る商売」
「希望を売る商売」
と言われてきた。

おおよそ共通した「理想のスタイル」が
存在し、それに合わせて商品が設計され、
みんながそれを買い求めた

しかし、時代は変遷する。
個々人が持つ、異なる「理想のスタイル」
に寄り添うことがより一層強く求められる。

そういう時代に、我々は生きているのだと
しみじみ思わされた講演であった。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。