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権威を創る

「ギネス」記録。
「ミシュラン」と共に、一企業の
マーケティング活動がとてつもない
「権威」として扱われるようになった、
偉大なるサクセス・ストーリーである。

ギネスというのは、ご承知の通り、
イギリスのビールのブランド。
黒く、濃いこの液体は、
クリーミーな泡と独特のコクで、
多くのファンの喉の渇きを
今も潤している。
機会は少ないが、パブに行ってロゴを
見ると、私自身もつい飲みたくなって
しまう。

「ギネスブック」は、元々パブで
飲まれていたギネスビールの消費量を
増やすために発行されるようになった
ものだ。
ただビールを飲むよりも、
何か面白いネタについて話しながら、
それを肴に盛り上がった方が、
当然ビールを飲む量が増える。
そういう意図でもって、
世界一をひたすら集めた書籍を作り、
大人気を博したというわけ。

ミシュランも同様のストーリーだ
というのは、多くの人が知るところ。
タイヤの消費量を増やす
=車に多く乗ってもらう
のを目的に、美味しいレストランの
ガイドを作り続けていたら、その
レベルの高さゆえに固定ファンが
多くつき、今や美食の権威である
ことは誰もが認めるところだ。

今は「ギネスブック」という言葉は
あまり使わず、「ギネス世界記録」
という言葉を使っているようである。
ギネスワールドレコーズ社の
公式サイト
には、彼らの活動に
関する様々な情報が載っている。

この、ギネスワールドレコーズ社
日本法人で、つい最近まで代表を
務めていらした、小川エリカ氏の
話を聞く機会に恵まれた。

彼女の波乱万丈な人生の軌跡と、
ギネスワールドレコーズにおける
成果の数々が、非常に興味深く、
僅か1時間強の講演ではあったが
グイグイと引き込まれ、時間の
経つのを忘れるほど。

その中で特に興味深かったポイントを
一つ挙げるならば、イギリス企業の
ギネスワールドレコーズを
日本法人が事実上救った話。

元々、同社のビジネスモデルは
書籍の販売がメインの収益源。
しかし、書籍の出版はあれよあれよ
と右肩下がりを続けており、新しい
モデルの構築が求められていた。
そんな折に、日本が先導する形で
事例を積み上げてきた「新事業」を
他国にロールアウトする形で展開、
見事世界全体の事業革新が成し遂げ
られて、同社は今もしっかりと
生き残っている。

その「新事業」というのは、
「法人向けコンサルティング」
「PRプロモーション」
「イベント」
といった具体的な手段を伴う
「コンテンツマーケティング」
であった。

要は、
「ギネス世界記録という優良な
 コンテンツを作るお手伝い」
を持ち掛け、どんな記録なら実現
可能かつ有意義か、どういう風に
メディアで取り上げてもらうか、
どんなイベントを催すと目的が
達成できるか、といったことを
アドバイスするのである。

町おこしをしたい市町村に、
その土地の隠れた魅力を一緒に
考え、どんな世界記録なら狙える
のかを決めて、実際に記録を残す
まで伴走する。

技術力をアピールしたい企業に、
どんな「世界一」を作り上げれば
その企業にとって最も有効な
アピールになるかを考え、
アドバイスする。

マーケティングの世界では、
新しいカテゴリーやセグメントを
自分に有利に作ってしまうという
のが良い戦略として語られるが、
そんなセオリー通りの仕掛けを、
意図的に実施して大成功を収めた
好事例なのであった。

「自分を動物にたとえると?」
との質問に
「ライオン」
と答える肉食系?美女の小川さん、
ジャパンの代表を退任した今後、
どのように活躍の幅を広げていく
のか、非常に興味深い。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。