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場から未来を描き出す

ケルビー・バードという名前を聞いて
真っ先に思い出したのは、
往年のNBAのスーパースターである
ラリー・バードだった。
バスケットボールの世界ではレジェンド
として知られ、1992年のバルセロナ五輪
にプロ解禁となってアメリカが結成した
初代ドリームチームの一員でもある。

単に「バード」という名字が共通して
いるだけなのだが、このケルビーさん、
世界的に著名な「スクライブ」である。
Scribe:直訳すると「書記」であるが、
彼女の著書では
「生成的なスクライビングの実践者」
のことをそう呼んでいる。

「生成的なスクライビング」
(Generative Scribing)
この言葉を聞いてピンとくる人は
なかなか少ないだろう。
「生成的って何?」
「そもそもスクライビングって?」
などの疑問が湧きあがってくることと
思うが、本書を読めばその答えは
書いてある。

まず、スクライビングとは何かを
引用しておこう。
日本語版序文にあるように、
スクライビングとは、

人々が話をしている間に、
リアルタイムに絵や言葉を使って
その話を見える化する手法

である。
「グラフィック・レコーディング」
「グラフィック・ファシリテーション」
の言葉の方がより知られていると思わ
れるが、これらもスクライビングの
一種だと本書で知った。

この本の監訳者であり、日本における
グラフィック・ファシリテーションの
第一人者である、山田夏子さんと幸運
にも知己を得て、彼女の「グラファシ」
を実際にオンライン越しながら見る
機会があり、こんな世界があるのか!
と魅せられた。
そんな彼女が監訳した本が出る、と
いうことで、一も二もなくアマゾンの
ボタンをポチっと押したのだった。

この本の装丁が、個人的にはとても
気に入っている。
黒板に、ケルビーさん自身が実際に
スクライビングした「作品」が、
表紙に使われている。
各章の扉や、付録として収められて
いる彼女の他の作品たち、使われて
いるフォントやゆったり目の行間、
ページを繰るたびに感じる紙の質に
至るまで、
「紙の本ってやっぱりいいな」
と思える仕上がり感なのだ。

とはいえ、この本は読む人を選ぶよう
に思われる。
書いてある内容や、使われる言葉自体は、
決して難解というほどではない。
しかし、これまでの「常識」で凝り
固まっている頭にすんなり入ってくる
表現とは言い難い。
この本が、ビジネス実用書的な内容
を志向しつつ、かなり「アート」な
側面、あるいは「右脳的」とでも
呼ぶべき側面をも重視しているから
だと個人的に感じている次第。

目次を見ることで、私の言わんとする
ことが多少は伝わるかもしれない。
章立てとしては以下の6つである。

1 実践モデル
2 在る
3 融合する
4 捉える
5 知る
6 描く

そして、各章にある個別の項目立て
からいくつか印象的なものをピック
アップすると、
・場(フィールド)
・源(ソース)
・領域(ゾーン)
・柔らかくなる
といった言葉が躍る。

このように、抽象的、概念的であり
かつ「女性的」な表現が多く、
ロジカルで左脳優位、具体性をつい
求めたくなる「男性的」な人にとって
は、かなり分かりにくい内容なのでは
ないか?という印象を持ったのだ。

最近では、できるビジネスマンは
瞑想とかヨガをやっている、など
という記事もよく見かけるように
なり、右脳と左脳のバランスを
取るべく、MBAよりもアートを
学びに行け、なんて話も出る位に
世の中の受け止め方が変わって
きた実感がある。
そのような文脈からすれば、
本書のアート的なアプローチが、
私が危惧するよりもずっともっと
幅広く、好意的に受け取られる
可能性も十分にあるだろう。

肝心の中身をもう少し紹介したい
のだが、少し長くなってきたので
明日また続けたい。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。