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キャピタリズムをブッ壊す!? 次期大統領候補エリザベス・ウォーレンってどんな人?

アメリカでは2020年に大統領選挙が行われます。トランプ大統領再選か? 新大統領誕生ならそれは誰になるのか?  気になりますね。現在、野党民主党からの最有力候補と言われているエリザベス・ウォーレン。その人となりと政策について見てみましょう。

エコノミスト 2019年10月24日号
A plan for American capitalism(アメリカの資本主義に対する計画)より

エリザベス・ウォーレンは現在70歳。オクラホマ州の決して裕福とは言えない家庭の出身で、シングルマザーとしてキャリアを築き上げハーバード大学法科の高名な教授にまで登り詰めた、知的で卓越した人物です。こんな著書がありました。

ウォーレン氏は、アメリカ資本主義の変革を目指しています。(以下、引用はエコノミストの記事より。)

ウォーレン氏は、長年続く憂慮すべき事態に対処しようとしている。アメリカは他のどの富裕国よりも貧富の差が激しい。労働市場は活況を呈しているのに、賃金上昇率は不自然に抑制されている。産業の2/3を占める大企業が巨大化して異常なほど巨大な利益を次々に生み出し、そのくせ労働者にはその分け前をほんの少ししか渡さない。
氏は学者として、窮地に陥った人々にとって破産制度がいかに大きな痛手となるかについて専門的に研究した。氏の考えに力を与えているのは、大企業に食い物にされ、その大企業の金で潤うワシントンの政治家たちに裏切られて、不安定な状況に置かれている中間層の人々の思いだ。

エリザベス・ウォーレンは破産法の権威として有名です。破産制度って、借金を返さなくてよくなるから救済措置だと思っていたのですが決してそうではないようです。自己破産するとクレジットカードが作れなくなるという話は聞いたことがありますよね。クレジット、つまり信用を失うということは、今後一切借金ができないということ。となると起業などはまずできませんし、ローンで住宅を買うこともできません。一度破産すると経済のメインストリームには二度と復帰できないということですよね。破産した人に社会的チャンスが与えられないというのは、考えてみたら問題です。

共和党員やウォールストリートの批評家の中には、ウォーレン氏は社会主義者だと主張する者もいるが、そうではない。企業の国有化や、政治が金融をコントロールすることを支持しているわけではない。

社会主義者ではないにしても、富裕層や企業活動に対してさまざまな規制をすることを訴え、貿易などの対外政策については保護主義的な立場をとっています。具体的にどのような政策を掲げているか見てみましょう。

25万ドル以上の稼ぎがある者には15%の社会保障税を、5千万ドルを超える資産を保有している者には年に一度2%の富裕税を、そして10億ドルを超える資産には3%課税し、企業利益については7%の追加課税を行う。それと同時に、国は企業の所有者の支配力を弱めていく。大企業はすべて連邦政府の許可を受けなくてはならなくなり、従業員や顧客や地域社会の利益を顧みない行為がたびたびあれば、免許を剥奪されることになりかねない。そして重役の五分の二は労働者が選挙で選ぶことになる。
ウォーレン氏の計画がすべて実施されたら、アメリカの自由な経済システムは深刻な打撃を受けることになるだろう。

ウォーレン氏の資本主義改革政策は、ちょっと左寄りすぎる感がありますね。ウォーレン氏はどうやら、政治は善、ビジネスは悪、といった考えの持ち主のようです。でも政治だって巨大組織の例に盛れず腐敗しますし、ビジネスでお金を儲けること自体は悪ではなく必要なことだし、儲けすぎや格差などの弊害があると言っても、キャピタリズムそのものが悪いのではなく、キャピタリズムを動かしている人間やシステムが間違っているのかもしれませんよね。

この記事では、経済市場が持つ力について、簡潔な英文で書かれています。

氏は、中間層のアメリカ人を支える、市場の動的な力を低く見ている。市場の動的な力は、人々と企業の多様性や自発的な行動を見えざる手で導き、資本と労働力を廃れゆく産業から成長産業へと動かし、地位に甘んじている既存の企業を出し抜くことで革新を進める。経済市場でこのような生産的な破壊活動が行われないことには、政治活動を最大限に行ったとしても生活水準の長期的な向上は見込めない。
(原文:She underrates the dynamic power of markets to help middle-class Americans, invisibly guiding the diverse and spontaneous actions of people and firms, moving capital and labour from dying industries to growing ones and innovating at the expense of lazy incumbents. Without that creative destruciton, no amount of government action can raise long-term living standards.)

書かれている内容に対する意見はいろいろあると思いますが、エコノミストの英文は本当に洗練されていてレベルが高い。こういう英文が書けたら理想だなーとつくづく思います。

さて、保護主義が行き過ぎると経済活動はスムーズにいかなくなるし、消費者も被害を受けます。日本は、ウォーレン氏が言うところの保護主義的資本主義に近いですね。東京電力からしか電気を買えなかったころは、電気代が高くても乗り換えもできなかったですよね。それに、お米も高く買わされてますよね。主食のお米が一袋数千円もするなんて、外国の人が聞いたらびっくりする話です。今はカリフォルニア米なども日本のコメに劣らず美味しいので、保護主義やめればお米はもっと安くなるはずです。

話がそれましたが、ウォーレンさんの資本主義改革をそのまま押し進めたら、アメリカ経済はけっこう大変なことになるという記事でした。ウォーレンさんの主張は、実はトランプ大統領に勝つために話を盛ってるだけで、実際に大統領になったら現実的に中道に落ち着く? のだったらいいですけどね。何事も中道がいちばんです。右でも左でも、極端に寄りすぎるとおかしなことになります。

しかしどんな人であっても、トランプよりはましな気がするのは私だけ? ところが今のアメリカの選挙制度だと、有権者の多くがウォーレンさんに投票したとしても、システムが腐敗しきってるので(与党有利になるように選挙区を割り振るゲリマンダリングや、野党を支持する黒人やヒスパニックの人々に身分証提示を強制して選挙に行きにくくするなど)、対立候補は実際には60%以上の票をとらないと当選できないそうです。となるとトランプ再選? いやだァァァ~~~。

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