中国の属国と化すロシア ~ロシア・中国・アメリカの三角関係のゆくえ~

エコノミスト 2019年7月20日号
Brothers in arms

<記事内容紹介>
いまはロシア大統領のウラジーミル・プーチンと、中国国家主席の習近平ががっちり手を組んでいる。アメリカは仲間外れだが、そのツケを払わされているのはアメリカではなくむしろロシアだ。欧米による支配を嫌い、欧米の秩序を破壊してでもロシアの力を強めようとするプーチン大統領の思惑は、みごとに中国の罠にはめられた。そのパートナーシップは対等ではなく、あらゆる面を中国が牛耳って、ロシアは強大な中国経済に依存する属国に成り下がっているのだ。

とはいえ、最新鋭の軍事力を持つロシアを中国の属国呼ばわりするのは少々手厳しい見方かもしれない。先日、中国とロシアの戦闘機が竹島上空で初の合同巡回飛行を行い、韓国の領空を侵犯するという出来事があった。まるで日米韓の軍事同盟を挑発するかのような行動だ。

しかしロシアは、中国経済にあまりにも大きく依存しすぎている。ロシア国営の石油会社ロズネフトは、資金面を中国からの融資に頼り、その石油の多くを中国に回しているありさまだ。ロシアの外貨準備高も、ドルのシェアが半分に落ちた一方で、中国元の占める割合は上昇している。また中国は、ロシアが人民を支配するために必要としているネットやセキュリティの技術を持っている。中国の大手通信会社ファーウェイの5Gの技術は、先日アメリカから締め出しを食らったが、ロシアはファーウェイと手を組んで5G技術を活用しようとしている。これで世界のインターネットの「スプリンターネット」化(アメリカと中国など、国によってインターネットが分断されること)がますます進むかもしれない。

中国にとっては、1969年の中ソ国境戦争以来不安定な状態が続く北方の国境を守るためにも、ロシアとの友好関係が続いたほうが好都合だ。それに欧米の民主主義や国際的な人権といった概念を否定する中国政府のキャンペーンを積極的に支持してくれるロシアと手を組んだほうが、自由を求める人民のデモや民主革命を抑止できると中国政府は考えている。

プーチン大統領は、大いなる経済発展を遂げた中国の「国家資本主義」を見習いたがっているようだが、ロシア版国家資本主義は、プーチン大統領とその取り巻きだけが豊かになるためのシステムだ。ロシア国家の財源は完全に私物化されている。こうしてロシア経済が弱体化し、ロシアと中国の力関係が逆転したことによって、中ロ国境にあたる中央アジアの緊張が高まっている。いまや中国の人民解放軍が、ロシアに断りもなくタジキスタンに駐留して軍事演習を行っている。

しかしロシア政府の思惑とは異なり、ロシア国民の多くは欧米のような自由や人権を求めている。独裁的なロシア政府が、いつまでも中国寄りの政策をとれば国民の怒りを招くだろう。ロシア憲法の規定通りに2024年にプーチンが退任し、そのとき後任の大統領が欧米路線に戻ろうとしても、このままでは中国に圧力をかけられて欧米路線に戻れない事態が起きるかもしれない。

人権意識の薄いアメリカのトランプ政権は、中ロがこのような危うい関係になっていても知らん顔である。ロシアでは今、反政府指導者のアレクセイ・ナワリヌイが力を持ちつつあるが、プーチンの後に彼のような人物が大統領になれば、民主化への道を進むべく再び西側諸国に目を向けることになるだろう。そのときは誰がホワイトハウスにいるかわからないが、ぜひともモスクワに飛んでもらいたいものだ。

<comment>
エコノミストのこの記事に添えられているのは、ジャイアントパンダがクマを小脇に抱えているかわいいイラストです。ロシアは、動物ならよくクマに例えられます。

冷戦時代はアメリカとソ連の2つの国が対立し、核戦争の危機があるともいわれていましたね。そのころ中国は貧しくて力もありませんでしたが、30年前にベルリンの壁が崩壊して冷戦が終結し、その後中国が経済大国になったことで世界情勢も大きく変わりました。

ロシアのプーチン政権はかなり独裁的です。ロシア版国家資本主義は、自分の身内の企業を優遇し、しかも高い税金をとって、その税金で私腹を肥やす泥棒国家。こんなことでは、ロシア経済はどんどん衰退して当然です。あれ、日本も似たようなことになっている気がするのは私だけでしょうか……? 

ロシアと中国がどんなにラブラブの関係になったとしても、ロシア国民も中国国民も、ほんとうは西欧的な民主化と自由を求めています。今起きている香港の大規模な民衆デモが、まさにその表れです。モスクワでも、プーチン独裁に反対して連日民衆のデモが起きているそうです。

香港では、貧しい人々だけでなく、中産階級も富裕層も自らリスクを取って自由と民主化のために戦っていて、ほんとうに偉いと思います。自由と民主主義は「国民の不断の努力」によって守られるというのは、日本国憲法にも書いてあります。私たち日本人はいつから、自由や民主主義のために戦うことを忘れ、選挙に行くことさえせず、ボーーーーっとして、漢字も読めないアホな政治家の言いなりになるようになってしまったのでしょうか。

それはともかく、ロシアで徐々に力を持ちつつある反政府野党指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏は、何度も投獄されていますし、先日は毒を盛られて入院までしたそうですが、プーチン独裁をストップするためにも、彼のような民主化路線の人に指導者になってほしいものですね。

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