先日、下町の銭湯に行く機会がありました。
スーパー銭湯だと入店を拒否されるような、背中に大きな刺青をしているおじさんがいました。おそらく、50歳は過ぎているでしょう。地元の人に挨拶をしたり、若者に話しかけたりしていました。威圧感がありつつも、良い人なのだろうという雰囲気です。
刺青おじさんには、子供が二人いるようです。一人は中学校1,2年ぐらいで、もう一人は小学校の3,4年といった感じ。刺青おじさんの子供たちは身体をお大きいし、根性のある顔相をしています。
ジャグジー機能をついたところを上の子供が独占しているのに気づいた刺青おじさんは、子供に恐喝や地上げするような言葉で凄むものの、子供は言うことを聞きません。「慣れってすごいものだな」と、呑気に思える不思議な空気が流れていました。
下の子供は、浴槽から出て涼んでいました。少し遠い目をしています。この子にはお母さんはいるんだろうか、など勝手に私は妄想をしていました。なんとなく母親のいない、そんなにヤクザの世界で出世できなかったおじさんとその子供二人という、そういうイメージが湧いたのです。
「おい、○○。お前のモチベーションで、俺の背中を洗え!」
下の子供は、やる気なさそうにゴシゴシ、刺青おじさんの背中を洗っていました。上の子供は相変わらず、父親の恫喝を無視して、ジャグジーを占拠し続けています。
モチベーションという言葉を、刺青おじさんはどこで知ったのでしょうか。
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