牛の惑星(丑)

「よし、ここを牛の惑星と名付けよう」
黒い大地に降り立ち、自国旗を片手に船長は宣言した。
「はぁ、牛ですか」
「そうだとも。見るからに牛のようではないか」
そういって船長は空いている方の手を大きく振りかざす。
乳白色の海は轟轟と鳴り大きく波打っている。
点在する黒い岩板の島の一つに我々は着陸している。
「白と黒のカラーリングからそう名付けているのであれば、シマウマやパンダという線もございますが」
「わかっていないなぁ、君という奴は。さぁそろそろ離陸しよう。この星の火山はだいぶ活発な様だぞ」
調査を終え母船に帰投する探査機のモニターから、火山が噴火する様子を見ることができた。
大量に溢れ出るマグマは乳白色で、まるでミルクのようだ。
「ほれ見ろ、牛の惑星だろう?」
船長が得意げな顔をする。
「シマウマやパンダも乳で子育てをしますが」
「……君は面倒だなぁ!」
天の川銀河の端。母星は遥か彼方だ。

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