青い鳥と幸福の王子(酉)

青い鳥は疲れ果てた様子で幸福の王子の肩にとまりました。
「やぁ鳥さん。今日はどうしたんだい」
「王子様、私はとにかく疲れたのです。もうほんの少しも働きたくありません」
「そんな青い鳥さんらしくもない。沢山の人に言葉や呟きを届けるんだって、あんなに毎日頑張っていたのに」
「ええ、そうです。私は毎日多くの言葉を多くの人に届けました。そうする事によって多くの幸福が生まれると信じていたからです。しかし、現実は違いました。偽り、虚飾、誇張。或いは言葉がただ事実を述べていたとしても受け取り方は千差万別で、更なる争いを生むこともありました。言葉と呟きで人同士が繋がる喜びよりも、それによって起きる悲しみに私は疲れ果ててしまったのです」
そういって青い鳥は動かなくなりました。
幸福の王子は思いました。
自分の身体から人に分け与えた宝石や金箔にいかに価値があってたとしても、果たしてそれは本当に人を救うのでしょうか。

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