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島猟師はるちゃん#1

10年前に大阪に来たての時、同居人3人と映画『Into the Wild』を見た
同居人3人、各々に重なる事があり話に夢中になった記憶がある
正直、わたしは主人公と20代の自分の考え方が重なり過ぎていてビックリした
ノンフィクションであった為、結末に対してゾッとした
20代の時にインドに行くか?アラスカに行くか?非常に迷った
アラスカに行くならグリズリー「羆」と対峙したいと考えていた
わたしはインドに行く事にした
この選択を後悔はしてない
ただ大きなターニングポイントだったと感じている
インドには縁があり2度行く事になった
あの時、アラスカを選択していたら
わたしの人生は全然違ったものになったんだと夢想する事が度々ある
インドを選択したからなのか、その後の人生は人で溢れた有意義な時間だった
2021年、長野で原始感覚美術祭に作家として参加した
千年の森と言う場所があり1週間程度、滞在制作した
作品は山の中にある中州で制作した
中州からメインキャンプに帰るのには15分程かかる
その時間を計算してキャンプ場に着く頃には、日が暮れると言う時間軸で動いていた
薄暗くなり始めて帰路に着こうと思ったが中州から出た瞬間、目の前に黒い大きな獣が迫ってきた
思わず川に戻り中州から何が起こったのか?考えた
「熊か」
心臓がドキドキしている
後15分で真っ暗になる
まず腰ベルトのナイフを手に持ち替えて
中州の1番高い所から様子をうかがった
まったく熊の存在が見えない
わたしは何度かその場所を通ろうと試みたが藪の中から「ファッファッファッ」と熊の威嚇音が聞こえる
近づけは近づくほど熊の威嚇音ははやくなった
これ以上、熊の間合いに入ったら飛びついて来そうだ
そんな荒々しい息遣いだった
これは流石にやばいかな、通れない
ナイフのリーチと熊のリーチだと危うい
ヘッドライトの照明をつけた
意外と冷静にこの状況を打破する方法を考えられた
だが時が無い
何度かチャレンジしたが、そこに熊が居て威嚇してくる
暗くなる
携帯を見たら電波が通っていた
流石に真っ暗になり一か八かで通るのもリスクが高い
わたしはメインキャンプ場の管理者に電話して応援を頼んだ
ロケット花火を打ちながら熊のスプレーを持参した、管理者のともさんが助けに来てくれた
熊はいなくなっていた
キャンプ場に着く間にともさんに「長くこの千年の森を管理しているが、熊に襲われたのは初だな」「はるきくんが熊を呼び込んだんだろう」「とりあえず、腹減ったろう?焼そば作ったから帰って食べよう」
わたしはまだそこで3日間、滞在制作しなければいけない
明日からどうしようか?そんな事を考えていた
朝5時半には山奥の中州を目指した
鍋を木の棒で叩きながら
作業を終えて、いつもより30分早めにメインキャンプ場に帰る
五感をトップギアに入れながら、武器はお手製の槍のみ
少々心細い
食物連鎖の頂点だと思っていたわたしは、残りの3日間で疲弊していた
「悔しい」
そんな気持ちだった

続く

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