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ピダハン - 「言語本能」を超える文化と世界観

以前 BOOK BAR で紹介されていて,それ以来積読になっていた「ピダハン」をようやく読みました.言語学者である著者がアマゾンの少数民族ピダハンと 30 年以上と一緒に生活し,その特徴的な文化や言語を紐解いています.

ピダハンの言語には「数」や「色」といった抽象的な概念がなく,さらにほとんどの言語に見られる再帰構文 (入れ子構造) もなく,とてもシンプルです.これは「直接体験の原理」という,直接体験していないことは話してはならないというピダハン文化の制約に基づいています.

この制約により,ピダハンは独特な価値観を数多く形成しています.例えばピダハンは宗教なども信じませんし,将来のことを想像したりもしません. そしてこのような価値観が,我々が抱くような「未来への恐れ」を取り除いているようで,結果としてとても幸せな生活を送っています.著者をはじめピダハンと交流した人々は,異口同音に「ピダハンは類を見ないほど幸せで充足した人々だ」と評価するようです.実際にピダハンは,鬱病や慢性疲労といった,我々の社会では日常的な疾患とは無縁のようです.

このような,我々から見ると一見劣っている文化や言語の中で生きるピダハンが我々よりも幸せに生きているというのは皮肉に感じると同時に,我々が当たり前のように考えている価値観も,実は文化の制約に縛られたものであるということを実感しました.

ちなみに BOOK BAR は毎週土曜に放送されていた,杏と大倉眞一郎が毎回 1 冊ずつ本を持ち寄り紹介するラジオ番組です.毎週楽しみに聴いていて,このラジオがきっかけで興味を持って読んだ本も多かったのですが,2 年程前に終了してしまいました.ラジオで紹介された本の中から厳選した 50 冊を取り上げた本も出ており,ピダハンも本書で取り上げられています.


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