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槇原敬之さんの楽曲はなぜ愛されるのか?その魅力・作曲を分析してみた・後

◇前半では、槇原敬之さんの初期の楽曲の分析をし、8分音符を駆使した作曲のスペシャリストということを分析していきました。

槇原敬之さんの楽曲はなぜ愛されるのか?その魅力・作曲を分析してみた・前

◆中編では、8分音符中心だった楽曲制作を16分音符中心に切り替え、軽やかにイメージチェンジし、よりメッセージ性を強く打ち出した楽曲であったことを分析していきました。

槇原敬之さんの楽曲はなぜ愛されるのか?その魅力・作曲を分析してみた・中

最後の後期では、2007年以降から現在までの楽曲を分析していきたいと思います。
2007年に、とある曲がスマッシュヒットを飛ばし、紅白歌合戦に16年ぶりに出演しました。
記憶に新しい方も多いのではないでしょうか?

槇原敬之さんの楽曲の魅力:メッセージ性を残しながら原点回帰

11)GREEN DAYS

グリーンデイズ教材

36thシングル。ドラマの主題歌として、オリコンチャート3位を記録しました。
売上:59,306枚

「人間はいくつになっても分からないことがたくさんあるけど、それをわからないと諦めるのではなく、ホントのことを探していこうよ。だからホントのことを探している間はみんな一緒だということを言いたい。」「青春とは青臭いものではなく、答えを探し続けること。」
ご自身でそのように語られている、メッセージ性の強い曲です。
初期を思わせるようなオール8分音符で作られた楽曲は、力強く丁寧に言葉が耳に残ります。
16分音符で伝えたい言葉が溢れんばかりに詰め込まれていた中期の楽曲から、原点回帰した感じが楽譜からも読み取れます。

下記の年表からも、その傾向を見ることが出来ます。

【シングル年表④】

●=8分音符 ★=16分音符
※サビの部分で多用されているリズムで分析します。

2007年~現在
●GREEN DAYS
●赤いマフラー
★Firefly~僕は生きていく
★WE LOVE YOU.
●ムゲンノカナタへ~To infinity and beyond~
●林檎の花
●恋する心達のために
(8/6)拍子四つ葉のクローバー
●Life Goes On~like nonstop music~
●Fall
●超えろ。
●理由
●記憶

中期に比べると、●の数(8分音符中心で書かれた曲)がグッと増えましたね。

近年では、ご自身の曲に加え、外部への楽曲提供も積極的に行い、「提供キング」と呼ばれるようになりました。
その提供曲の中にも、原点回帰を思わせる曲が多くなります。

12)超えろ。

超えろ。教材

46thシングル。関西テレビの社歌として書き下ろされた曲。

〝自分の限界を 昨日の努力を 誰かの予想を超えろ その力があると信じて〟
この歌が発売された2015年当時、僕はミュージカルの音楽制作でものすごいプレッシャーを感じながら仕事をしていたのですが、この歌詞には救われました。
長年、自分の限界を、誰かの予想を超えてきた人だからこそ、歌に説得力があるのだと思います。
超えろという歌詞の、音符の上行は日本語のニュアンスと合わせてあり、気持ちが昂ぶる工夫がなされています。
8分音符の曲でもスピードを上げることで、十分に疾走感、躍動感を演出出来るのだと感じました。

13)LUNCH TIME WARS

LUNCH TIME WARS教材

日テレ系列昼帯番組「ヒルナンデス!」オープニング曲。

半音階の羅列メロディが波のようにうねり、先へ先へと続く感じが、お昼からの「もうひと頑張り!」という雰囲気に合っていると思いませんか?
「昼」という単語でメロディをきっちり止めることにより、羅列メロディの中に言葉を浮き立たせてあります。
また、サビラストに番組タイトルを入れる遊び心もあり、そういったサービス精神が提供キングと呼ばれる所以なのかもしれないですね。
クライアントは大変に喜ぶと思います。
作曲をする者にはとっては見習いたい一面です。

上記を見ても、初期の頃のように、8分音符中心で作られていますね。
年齢を重ねた先で、ご自身の哲学、信念は揺らぐことなく、一周回って、穏やかに和やかに伝える術として、8分音符の曲を制作していかれたのだと思います。

ほんじつのまとめ

先日、覚醒剤所持の疑いで逮捕されてしまった槇原敬之さん。
類まれなる才能で、私たちに長い間音楽を届けてくれました。
今回紹介したものはほんの一部ですが、分析すれば試行錯誤の歴史が見えてきますし、作曲法としても、アーティストとしての活動としても、私たちが学ばせていただけるものが多々あります。

罪を犯されたのなら、それは償って当然です。
30周年という記念すべき節目の年に、ファンを裏切ったのも事実です。
ですが、この才能を過去のものとして葬り去ってしまっては、やはりもったいない。
今の現状のままでは、日本の芸事は衰退してしまいます。
時間はかかっても、いつか第一線に復活していただきたいと願っています。

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