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めちゃくちゃ危険なアメリカのスラム街に迷い込んだ話 【アメリカ放浪の思い出 #06】

この記事は、逃げるように会社を飛び出した24才の男が病んだあげく、エネルギーを持て余して3ヶ月間アメリカを西から東に放浪し、警察に捕まったり死にかけたりする思い出話です。
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何の計画もなくいきなりアメリカに来て6日目の朝。

私はアメリカ西海岸の「YEAHーーー!USA!USA!」みたいな雰囲気に心底嫌気が差していた。

なので、もう西海岸を離れて、アメリカのちょうどド真ん中になる「デンバー」という大都市にバスで向かうことにした。

んでもよく調べてみると、ロサンゼルス→デンバーの間には「ラスベガス」なる大都市があるじゃありませんか。

ラスベガス。

散々「USA!イェェー!」みたいな空気を嫌ってここ数日間不機嫌な日本人として過ごしてきたのに、また「THE キラキラ観光地 in USA」な場所に行っって大丈夫だろうか不安だ。

んー。

でも、まぁせっかくアメリカに来たんだから、いちおう「The USA」な都市はひととおり回ってみた方が後悔がなくていいよね。多分。

というわけで、ロサンゼルス→ラスベガス→デンバーと、砂漠の真ん中にあるらしいギャンブルの街を経由することにした。

スラムでマジで襲われる5秒前。

調べてみると、ラスベガスへ行くバスは「グレイハウンド」という高速バスで、ロサンゼルスのダウンタウンのはずれにターミナルがあるらしい。

ので、サンタモニカから適当にその辺のバスに乗ってとりあえずロスのダウンタウンまで頑張って行った。

人間慣れるもんですな。ちゃんと目的地に着けるくらいには成長するんだから。

さて、ダウンタウンに到着した私は、「地球の歩き方」に乗ってる地図を頼りにダウンタウンはずれの「グレイハウンド バスターミナル」を目指して歩き出した。


んだけれど、

んだけれでも、、、

やばい。

ここはやばい。


道路を挟んだ反対側で喧嘩してる黒人たち。

なんでか知らんけど燃えて黒コゲになった家と車。

よくない薬を現在進行形でやってますって表情でこちらを凝視する白人たち(道のサイドにたくさん並んでる)。

1ブロック横の通りで20人くらいで群がって騒いでる黒人たち。


聞こえてくる音声は何かを壊す音とか怒鳴る声とか、「平和」からは程遠いサウンドばかり。

体の中から「ここは絶対日本人が1人で来ちゃいけない場所ー!ワーニング!ワーニーーング!!!」

って警報が鳴ってる。

緊張で吐き気がしてきた。


もうね、道のサイドにボーと立ってる人たちが、みんなこっちをジーーーっと見てくるんですよ。

ほんと怖いよ。泣く。

こっちは20代、童顔、日本人、50kg台、バックパッカーという、

襲ってくれ!って言っているかのような子羊っぷりだよ。

焼肉食べ放題でテーブルに運ばれてきたカルビの気分だよ。


危険地帯を通過するために生み出した奥義

でもここで「えへへ。ぼく日本人の旅行者なんです。なにも分かりませーん☆」みたいな感じでいると、マジでやばいと思ったわけです。

なんたってもう1秒後にもちょっかい出してきそうな限界ギリギリの空気なんですから。

そこで、ですね。

限界まで張り詰めたデンジャラスな緊張感と吐き気の中で、生命を追い込まれた私は生み出しましたよ。

ここから生還するための奥義を。


それはね、

こっちもやばいやつのフリをする

という技です。

いやマジに。


こっちが「あのぉ、旅行者です・・・」みたいな空気を漂わせてると、「・・・獲物だね・・どうする?いく?もういく?いっちゃう?」的な雰囲気になっちゃうんですよ。

狩る側と狩られる側みたいな。

だからね、こっちもクスリやってて頭おかしくなってる顔で「ウ~・・アワァァァ・・・」みたいな感じで歩くと、

「え?なにこいつ?こっち側?こっち側のやつ?誰かの知り合い??」みたいになって、

「獲物」から「なんだかよくわかんないやつ」へとクラスタが変わるわけです。


私はこの技でアメリカのさまざまな危険地を乗り切りました。

マジで使える最終奥義です。

でも同じことして逆に襲われても俺は知らんからな!マネするなら自己責任で使えよ!

「頭いってる変なやつ」になるのが重要なので、決して睨んだりしてはいけない。


良い子のみんな!地球の歩き方は目を通そう!

そんなわけでなんとか2、3kmくらいあっただろうかというスラム街を無事に通過することが出来て、心からホッとした。

マジで身包みはがされると思った。

なんと形容したらよいのでしょう、あの1秒後にはなにかされそうな空気は。

塾帰りのメガネの中学生が暴走族100人の集会のド真ん中に迷い込んだら似たような空気を感じれるんじゃないでしょうか。


なお、後日暇つぶしに「地球の歩き方」を読んでたら、

「ロサンゼルスのダウンタウンにあるグレイハウンド バスターミナルへの道はアメリカの中でも容赦なく危険なスラム街の1つです。バスターミナルへ行く際は絶対に徒歩では行かずタクシーを使ってください。」

ということが書いてあった。

おい!

マジかよ!!

やっぱり地球の歩き方大事~!歩き方が分からないと地球は歩けない~~!!


2019年の今でも危険なのかは知らんけど、普通のダウンタウンから1ブロック道を外れたらいきなりスラム街になるので要注意です。

たぶん、Skid rowという場所だと思う。


またこの女かよ!!

というわけで無事にバスターミナルに到着。

何時間かターミナルで待って、いざバスに乗って出発すると、そのままラスベガス方面に行くのかと思ったらハリウッドのバス停に停まりおった。

なんやねんだったらわざわざあんな危険なスラム街を通ってダウンタウンまでこなくてよかったわ~。

って思ってたら、

なんか見たことある白人の若い女たちが乗ってくる。


ゲ!!!!

こいつ昨日ユースホステルで「なんでこんなアジアの猿と同じベッドで寝なきゃいけないのよ!」って怒ってたやつだ!


(うわっ~・・・)って内心思ってると、

私を見つけたその白人女も

(うわ~、マジかよ・・・)って顔をした。


結局その白人女子高生たち(4人)は、1人で2人席を陣取って座っていた。しかも昨日同じベッドになった(うわ・・・)の女は私の前の席。

まぁ別に実害もないので放っておいた。


が、

こいつら。


バスが他の停留所に着く度に、2席を陣取ったままタヌキ寝入りを始めだす。

そのせいで他の席は満席なのにこいつらだけが2席を使うことになっている。

おばあちゃんが「ここ空いてますか?」みたいなこと聞いてもガン無視。まじガン無視。

そして停留所を過ぎたら何事もなかったかのように起きて騒ぎだす。


もうね、

これはね、

アジアの荒ぶる猿として、こいつらには天誅を与えてやらなければいかんですよ。


といってもね、当時私は50kg台のガリガリ男子でね。

ケンカしてもたくましい白人女性には勝てそうにないですからね。

ラスベガスまでのバスでの長時間、「足で前の席のリクライニングを固定して、絶対にイスを斜めに出来ない」という刑に処することにしましたよ。


もうね、8時間くらい席ピーン!ですよ。

足の骨で固定してるからどんなに相手が体重かけてきてもピクリとも動かんわけですよ。

もう直角ですよ。背もたれ直角。

バスが走ってから5時間くらいそのまま保ってたら、夜中に前の白人女が発狂したみたいにイスにバフンバフン体当たりしていた。


砂漠を抜けると、もうすぐラスベガスです。

(つづく)


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