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数学者vsサッカー選手 | ナビエ・ストークス方程式の解の滑らかさ

 「ナビエ・ストークス方程式の解の滑らかさ」なんて聞くと、「なんだか難しそう!」と思う方も多いかもしれません。
 というか、実際に難しいことは間違いのない事実です。多額の懸賞金がかかっている未解決問題なのですから。

 この記事では、数学的なことは書きません。「書きません」というより「書けません」。だから、ここに書くことは、問題の核心についてではなく、周辺的なことを書きます。
 


(1) 答えがわからなくても、答えがあるのかどうかが分かるだけでも進歩。


 ナビエ・ストークス方程式に書く前に、「方程式の解の公式」についてお話します。

 中学生の頃、義務教育において、方程式を学びますね。中学生では「1次方程式」と「2次方程式」を学びます。

 1次方程式では、「等式の性質」を使って、移項しながら解を導くことを学びます。
 2次方程式では、最初に「完全平方式」や「因数分解」を利用して解を導く方法を学びます。そのあとで、「解の公式」を暗記して答えを導くことを学びます。

 解の公式を暗記して、与えられた二次方程式の係数を公式に機械的に代入すれば(ぶちこめば)、どんな二次方程式でも解を導くことが出来ます。

 高校までには暗記させられることはありませんが、「3次方程式」にも「4次方程式」にも「解の公式」があります。数字を当てはめれば、どんな3次方程式でも4次方程式でも(因数分解が出来なかったとしても)解くことが出来ます。

 2次、3次、4次方程式の「解の公式」が発見されたならば、その次は自然な流れとして、「5次方程式の解の公式探し」に奔走したくなります。実際に5次方程式の解の公式を発見して、名声を勝ち得ることを夢見た数学者がいました。

 ところがガロアアーベルという数学者が確立した「群論」によって、5次方程式以上の高次方程式には「(代数的な)解の公式は存在しない」ということが数学的に証明されました。

 数学というと、答えを求めることがその本質だと考えがちですが、「そもそも答えがない!!」ことを教えてくれるのもまた数学です。
 群論により、「5次方程式以上の高次方程式には解の公式がない!」と分かったことは、大きな前進でした。


(2) サッカー選手は知っている!


 サッカーの試合を見ていると、「無回転シュート」をたまに見かけます。
 無回転シュートは、その軌道を予測しがたいので、どんな一流のキーパーでさえ、ボールをキャッチすることが出来ないことがあります。

 ボールの蹴る角度、スピードなどを工夫すれば、無回転になることはわかっています。言い換えれば、無回転になる蹴り方の解があることはわかっていると言えます。

 数学的に言えば、無回転になる方程式には、解があるということはわかっているのですが、その方程式の解き方がわかっていません。それが「ナビエ・ストークス方程式の解の滑らかさ」という問題です。

 方程式はわかっているので、数値を当てはめれば、「近似値」は求められますが、そのものズバリの解を得る方法が見つかっていません。

 無回転シュートを放つことが出来るサッカー選手は、おそらくナビエ・ストークス方程式のことは知らないでしょう。けれども、実践においてどういうふうに蹴ればよいのか、という答えを知っていると言えます。

 それに対して、数学者は答えがあることはわかっても、サッカー選手のようにちゃんとした答えを知るにはいたっていません。

 数学者とサッカー選手。どちらが深くナビエ・ストークス方程式を理解しているのでしょうね😄。


結び


 数学の存在価値を実用的な側面から「役に立つ」「役に立たない」と判断する人もいることでしょう。

 実際に数学の歴史を振り返ってみると、測量術(代数幾何学)が発展したのは、エジプト文明において、ナイル川の氾濫によって誰がどれくらい土地を所有していることがわからなくなり、租税の徴収を的確におこなう必要に迫られてのことだったと聞いたことがあります。

 もちろん数学には、測量や建造物の構造計算のように、実用的な必要性があります。
 しかし、数学には「わからないことはわからない」と教えてくれる役割があり、また、実用的な応用・使い途はすぐにはわからないとしても、それ自体の美意識に支えられる美しさというものもあります。

 すぐには役に立たなくても、否、永遠に使い途がなかったとしても、真理を探求する心が人間にある限り、これからも数学は発展していくことでしょう。
 世俗的なしがらみから離れて、1人沈思黙考する楽しみが数学にはあります。それも数学の役割の1つかな、なんて思ったりします。

 わからないなら、わからないなりの楽しみ方ってあると思うのです。






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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします