秋風の夜

 雨が打ち付け窓が揺れる。今夜は野分が私の家のあたりに来ていた。

 野分は嫌いだ、休校は大歓迎だが災害は必ず誰かを傷つける。今夜は寝付け無さそうだ、そう思い寝所を出て1階の台所を目指した。

 階段を下りるたび軋む音は雨音で祖母に聞こえないだろうけど、なるべく起こしてあげたくない。台所に着くと冷蔵庫を開け適当に飲み物を取り出す。

 1階を放浪しているとふとチェストに目が留まる。祖母が嫁入りの際に持って来た年代物だがまだまだ現役で、防虫剤か何かの匂いと木の匂いが混ざった匂いがする。私の一番落ち着く匂いだ。

 少し気持ちが落ち着いたので玄関を見に行くと扉の隙間から浸水していた。詰める新聞紙を取りに戻ろうとした時、外が稲妻により激しく照らされ、雷鳴と地鳴りが全身に響いた。

「ひぃっ!!」

 情けない声を出し、耳を押さえて床に座り込む。これだから野分は嫌だ…
硬直し暫く震えていると、外からドサッっと物が倒れる音がした。

【続く】

あなたのお金で生きています