見出し画像

アルゴナウティカ

 煙の晴れぬロンドンから離れオックスフォード近郊。日が昇れど霧が晴れず林は仄かに暗い。その中を少女というより尚幼い子が歩いている。たった一人このような場所に。黒一色のワンピースに亜麻色のガウンという豊かさを感じさせる格好も痛み汚れ、特に靴は酷く汚れていた。一つ目の黒猫が目を光らせて彼女の足元を照らす。この童女、愛猫トトだけを共にロンドンから歩いてきている。

「見えた…」

 彼女の前には廃屋があった。この館に住むものは絶えて久しく荒れ切っている。トトが倒壊した壁の隙間から廃屋に入り、ドロシーはそれを追う。入った先、書斎だったらしい部屋の原形を留めない家具を見回す。赤毛の老人の肖像画だけが奇麗に残されていてドロシーはそこに祖父の影を見た。彼女はここで何が待っているかを知らない。それでも昔祖父から聞いた言い伝えしか今の彼女には頼れるものはなかったのだ。既に部屋にトトの姿はなく、彼を追い廊下に出る。

【続く】

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

あなたのお金で生きています

心が軽くなります。
2
次のステージへ向かう。 連絡はdiscordにて

こちらでもピックアップされています

逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集
逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集
  • 1858本

「逆噴射小説大賞」とは、ダイハードテイルズ出版局が主催し、社会派コラムニストの逆噴射聡一郎先生が審査員に加わる、コンテンポラリーで由緒あるパルプ小説大賞です。今回の本文文字制限は400文字以内です。しかしこれは「400文字以内で物語を完結すること」という意味ではなく「小説の冒頭部400文字で応募する」という意味です。つまり「この続きを読みたいと思わせる、最もエキサイティングなパルプ小説の冒頭400文字」を表現した作品が大賞を受賞し、その応募者は大賞の栄誉とともにCORONAビール1カートン(24本入り)を獲得できます。 応募要項:https://diehardtales.com/n/nfce422e0faef

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。