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『「鬼滅の刃」で学ぶ はじめての仏教』誕生秘話

5月22日発売の『「鬼滅の刃」で学ぶ はじめての仏教』は、 仏教界のインフルエンサーが、人気マンガを題材に、仏教のエッセンスを紹介。発刊経緯を担当編集者が語ります。

 慌ただしく会社へ行く用意をしていた、ある日の朝――。
 NHKのニュースで"お寺の掲示板をバズらせている和尚"として北九州市・永明寺の松﨑住職が紹介されている映像に目が止まりました。
「衆生は不安よな。阿弥陀、動きます」(松本人志氏のツイート「後輩芸人達は不安よな。松本 動きます」をアレンジ)
「ぴえんもご縁、超えてご恩」
 など、流行りの言葉を採り入れた法語をSNSにアップしたり、数々のパロディや企画を発信されており、調べれば調べるほど「松﨑住職から語られる仏教について知りたい」という興味が湧きました。なぜなら、仏教は私にとって多少興味はあるものの、"道徳的なきれいごと""ありがたいお説教"という表面的なイメージしかもっておらず、 身近なようでいて敷居の高いものだったからです。

 そんな仏教・超初心者の私にも入り込みやすい、身近な仏教の世界をカジュアルに表現していただけるのではないかと、「仏教入門書」のご執筆のお願いをしたのが始まりでした。
 しかし、すでに他社から1冊出版されることが決まっており、新たな斬り口をご相談していくなかで、松﨑住職がYouTuberにアップされていた「【鬼滅の刃】お坊さんはこう読む」を書籍としてまとめていただくことになったのです。
 このときすでにアップされていた3本の動画は、「鬼=煩悩」であること、お釈迦さまのモデルを継国縁壱(つぎくによりいち)と見ることなど、『鬼滅の刃』と仏教の共通点を挙げながら、仏教の教えである「四諦(したい)」や「対機説法」について解説されており、"鬼滅愛"がほとばしるなか、非常にわかりやすく仏教のエッセンスを知ることができる内容でした。

 ここからさらに新たな内容を大幅に盛り込み、ご執筆いただいたのが本書です。念仏をつねに唱えているキャラクター、悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)の羽織に刻まれる文字の謎や、眠り鬼・魘夢(えんむ)が見せた夢の正体について仏教の「唯識(ゆいしき)」を手がかりに解明していくなど、普通に読んでいたら気づくことができない、お坊さんならではの視点で『鬼滅の刃』を読み解いていきます。

 本書のなかに、

『鬼滅の刃』は「苦」から始まります。
 そして、仏教もまた、この世界を「苦」であると認識することから始まります。そのため、どうしても仏教には暗いイメージがつきまといますが、仏教のありがたいところは、そんな苦しい世界において、それを解決していく方法があることを示してくれることです。
 世界はこんなに苦しいけれど、解決していく道はきっとある。月並みな言葉ではありますが、仏の教えというのは、この苦しい世界での希望なのです。

 という文章があります。

『鬼滅の刃』を入り口に仏教の教えを知ることで、新たなものの見方に気がついたり、世界をほんの少し広く感じていただけたら、幸いです。

         PHPエディターズ・グループ  編集制作部 伊藤香子

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